小説 のコピー | ナノ
口対称的な性格
明るい空に通り雨がきたのは午後のことだった。
湿った空気がきらいで、吐き出す息も空中の湿気をひろってじわじわ重たくなる。
「あれ、三玉髪はねてる」
つい、と触られたえりあしに後ろを睨むと真崎雄大がいた。
そこに神経など通っていないのに触られてると思うと付近から熱を帯びて、顔まで熱くなる。触らないで。そう言って手をはねのけるとムッとして髪をぐしゃぐしゃに掻き乱された。信じられないやつだほんと、いつもこう。つっぱねると、構って、一瞬でどこかに行ってしまう。
いまだってそう、髪を爆発させるだけさせたら、すぐ自分の席へと戻っていく。
「直していけよ…ばか」
湿気の多い日は髪がまとまらない。
ひとに触られることを余計に嫌悪してしまうじぶんにしては、めずらしい言葉だった。
「和巳」
おいでと手招きする鳳様は、真崎雄大に何か言われたようで、はやくと急かす。
しぶしぶ髪を押さえながら近づくと真崎雄大が近くの椅子をひいてきて、「座りなさい」と先生みたいに言って自分の目の前に設置する。なに、なんで真崎雄大の目の前に座らなきゃいけないわけ。
「雄大がワックスつけてあげるんだと」
「……はあ?」
「俺学校にもってきてないから、せーやのだけど」
「俺も結構湿気に弱いからな」
「なに勝手に……ちょっと!なんであんたがするの!」
鳳様のワックスなら鳳様がすればいいじゃん!
なんて言う間もなく、したいからですけど。なんてえりあしを軽くつままれる。やっぱりどこかくすぐったくて、神経がぜんぶそっちに集中してしまう。熱い。
「あれ…三玉静かだね」
ひょいと横から覗きこまれて、視線がかちりとぶつかる。
全然なんとも思ってないような顔をみると、じぶんの頬の熱が異常なんだと実感して羞恥心にかられた。
ての平を力いっぱい握りしめて、殴りそうなのを我慢する。恥ずかしい、今すぐ離れたい、真崎雄大って人との距離感が絶対おかしい。
「三玉の髪綺麗だな」
「そういうのは、自分の攻めに言えよ!このばか!」
「え」
(三玉はひとに触られるのが苦手)(真崎はすぐひとを構う)
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