□ずっと一緒



「おれ、おっきくなったらシゲルとけっこんする!」



「…は?」

クスクスと笑みを零しながらシゲルが二人分のコーヒーを持って俺の待つ部屋に入ってきた。
多分俺のは、俺が飲める位に甘くしてあるんだろうな…ってそんなこと言ってる場合じゃない!!
なんだよ今のセリフは!!

「ちょ、シゲル…なんだよそれ…」

「あれ?サートシくんは物覚えが悪いね。自分の言ったことも忘れたんだ?」

「いつ俺がそんな恥ずかしいこと言ったんだよ!?」

「えー…と…あれは…」






たしか、あれは僕たちがまだ4、5歳の時だよ。


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「サトシ!早く起きなさい!」

「うーん…ママぁ?」

「寝ぼけてないで早く着替えてらっしゃい。」

サトシはママの用意した服を着ようとしたが、着なれてない服だったので苦戦を強いられた。
10分くらい服と格闘し、結局はママを呼んで着せてもらった。

「で、こんな服きてどこいくの?」

「昨日話したでしょ?ママの知り合いの人が結婚式を挙げるから行くんだって。」

「あ…そっか。」

まだ寝ぼけてるらしく、サトシは目をこすりながら朝食を食べた。
その時サトシは頭の片隅で"結婚って何だろう…?"と思っていた。

「ほら、行くわよ。」

「はぁい。」

そしてママと手を繋ぎ、着いたところは色とりどりの花で飾られた小さな教会。
オーキド博士とシゲルは先に来ていたらしく、サトシ達の方にやってきた。

「おはようサートシくん。」

「おう!おはようシゲル!」

「おはようママさん。サトシは相変わらず元気じゃな。」

「おはようございます博士。うちの子は元気が取柄ですから。」

博士とママはそのまま世間話に花を咲かせ始めた。
取り残された二人はしかたないので教会の敷地内を散策し始める。
綺麗なかっこした人が多いとか、ある人が連れてたポケモンが可愛いとか、いろいろ見て回った。

「君たち、サトシ君とシゲル君かな?」

「はい…そうですけど…」

「おねーさん誰?」

「お姉さんね、今日ここで結婚式あげるのよ。」

二人の前に現れたのはメイクを終わらせ、ウェディングドレスを着た今日の主役だった。
あまりにも綺麗だったので、二人は思わず息をのんだ。

「ドレス素敵ですね。とても似合っています。」

「まぁ、有難うシゲル君。」

「ねぇねぇおねーさん!」

「何かなサトシ君?」

「"けっこん"って何??」

サトシがそう言うと、シゲルはそんなことも知らないのかとでも言いたげに笑いだす。
吹き出すように笑うシゲルにムッとしていると、

「結婚式っていうのはね、世界で一番大切な人と一生を共にします、っていう儀式なのよ。
つまり、結婚っていうのは一番大切な人とずっと一緒にいるってこと。」

親切に教えてくれた。

「ふぅん…そうなんだ…じゃぁおねーさんは一番たいせつな人とけっこんするんだな!」

「そうよ。」

「これでわかったかな?サートシ君?」

「わかったよ!バカにすんな!」

ムキになってシゲルに突っ掛かっていると、花嫁になるお姉さんが微笑しながら訊いてきた。

「サトシ君は大きくなったら結婚したい人、もういるのかな?」

「…え?」

サトシはそう訊かれて、盛大に悩みだした。
詳しく聞くと、いくら大切でも家族とは結婚できないことがわかった。
ママは家族だから駄目だもんな。
じゃあ自分はだれと結婚するのだろう…
オーキド博士は大切だけど、ずっと一緒にいようと思わないし…
ずっと一緒にいたいと思えて、一番大切な人…そんなの…一人しかいない。

「おれ、おっきくなったらシゲルとけっこんする!」



「…思い出した…」

「やっと?まったく…あのあと僕、すごく恥かしかったよ。なんたって皆の前で結婚宣言だからね。」

「う、うるさい!もう忘れろよ!」

なんでシゲルはこんなこと覚えてるんだよ!恥かしいだろ!
でも、あの時は純粋にシゲルと一緒にいたいと思ったんだ。
俺は照れ隠しに冷めきったコーヒーを飲んだ。

「で、サトシ。」

「な、なんだよ…」

「"今"はどうなんだ?」

「なにが?」

「結婚する、って言ってくれないのか?」

「…はぁぁぁぁぁあ!?」

馬鹿馬鹿しい、そんなこと言う訳ないだろ。
全く、シゲルは何考えてんだよ…

「僕は、サトシと結婚したいな。」

「え?」

にっこりと笑うと俺に近づき、するりと手を持つとちゅ、と手の甲にキスをした。

キスを…した?

「なっなにしてんだよお前!!」

「僕はこの先もずっと君の傍にいて、幸せにすると誓うよ。」

「…」

カァァァと顔が赤くなるのが分かる。
突然のことに驚いてしまって体が動かない。
それをいいことにシゲルは口唇にまでキスしてきた。

「っ!」

「僕たちは、結婚なんかできないもんな。」

「そ、そりゃ…」

「だからさ、僕は一緒にいられる"今"を大切にしたいよ。」

「シゲル…」

そんなこと言うなよシゲル。俺は今だけじゃなく、ずっと一緒にいたいよ。
自分の気持ちを言えず俯いた俺はふと、あの後の花嫁さんのセリフを思い出した。

「君たちは男の子同士だから結婚は無理かもしれないけど、相手とずっと一緒にいたいという気持ちはとても大切なことよ。シゲル君と、ずっと一緒にいられるといいわね。」

そのセリフを言った花嫁さんはとても幸せそうな顔をしていて…
俺もこんな風に幸せそうに笑ってみたかったんだ。
そう思うとふ、と自然に微笑むことができた。
あぁ、こんなとこで意地張ってても無駄だ。気持ちをちゃんと伝えないと。

「シゲル、俺、ずっと一緒にいたい。」

「サトシ、」

「たしかに俺達は結婚できないけど、傍にいること位できるだろ?俺はシゲルのこと大切だし大好きだから、傍にいたい。」

「…僕もだよサトシ。」






"だから、ずっと一緒にいような"





そう、たとえ周りが反対しても、


いつもいつまでも一緒にいたい傍にいたい。






おわり


・・・・・・・・・・
ぼーだーらいんを運営されている北條美紗様より相互記念として頂きましたvv
さすが北條様の作品は素晴らしいvvv
北條さまの小説に一目ぼれしたあの頃の自分が懐かしい…(遠い目)

まさか自分がこんな素晴らしい物を頂ける日が来るなんて思ってもいませんでした。(じ〜ん…)
シゲサト最高ですvv

北條様!!ありがとうございましたvv




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