シゲサト
サトシ視点です。
†††
さくらんぼ
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「はぁ・・・」
オレは溜息を吐くと思い詰めたように机に突っ伏している。
もうすぐシゲルの誕生日だというのにオレは何一つ準備をしていない。
何とかなる!・・・いつもはそう思っていたけれど、シゲルと付き合い始めてから微かな不安と緊張が交差してばかり。
――こんな気持ちじゃシゲルに顔も合わせられないじゃんか!!
シゲルの誕生日が近いのに今更何をあげようか悩むなんて・・・・・・
オレは立ち上がるとベッドの隣にある窓を開けると空気を入れ換えた。
肌触りの良い空気が心を癒してくれるような気がする。
窓の向こうから見える山が視界に入る。
色鮮やかな景色に心が奪われそうだ。
オレは後ろを振り向くと、さっきから不安気にこっちを見ているピカチュウに声を掛けた。
「ピカチュウ、元気がないぞ?」
「ピカピ―・・・・・・」
ピカチュウはオレが何となく元気がないことを察しているのかも知れない。
元気、っていうか・・ただ悩んでいるだけかな・・・
「大丈夫だよ!!気にするなって!ピカチュウはオレのことを心配してくれてるんだよな・・・」
「ピカ!!」
「ありがとうピカチュウ。そんなに心配する程じゃないからさ」
ピカチュウの頭を撫でてやると、嬉しそうに微笑んでくれた。
オレはそんなピカチュウに勇気付けられると自然に顔が綻んだ。
気分転換にピカチュウと外で遊びに行こうと思いながら着替えを手に取った。
ガチャ・・・
扉の開く合図とともに部屋に誰かが訪れた。
「カスミ!?な、何しにきたんだよ!?!?」
「久しぶり♪サトシも相変わらず元気そうね!!」
マリルリを抱き締めながらカスミはオレの部屋に入ってきた。
水ポケモンが大好きなカスミ。
ケンジから貰ったマリルリを大事にしているカスミは幸せそうだ。
オレは長袖を脱ぐと机の上に置いてあった帽子を被る。
「オレはいつだって元気元気!!カスミは何しに来たんだ?」
それよりも、何故カスミが家に訪れたのかが気になる・・・・・
家に訪れてまでオレに用があるのだろうか?
「そうそう、今から山の方に散策しない?良い場所見つけたの!!」
「新種のポケモン!?」
「あんたはそれしか考えられないの〜?」
カスミはクスクスと笑うとマリルリをピカチュウの側に降ろす。
――ポケモン大好きで悪かったな!!
「そんなことよりも早く行こうぜ!!」
「そうね!」
リュックを担ぐとピカチュウたちを連れて早速家を出た。
***
「サトシ・・・そういえば明日じゃなかった?シゲルの誕生日」
「そうなんだよな〜。何あげたら良いと思う?」
カスミは思い出したかのようにシゲルの話題に触れるとオレ聞いてきた。
プレゼントを選ぶのは女の子の方が得意だしな。
自分で考えるよりは相談した方が早いかも・・・
「私だったらやっぱり愛かなぁ。あ、でも手作りもいいかも!!」
女の子って愛をプレゼントにしたがるよなー。
オレは男だし・・・・男・・男が男にプレゼント・・・・・わかんねー!!
余計選ぶのが難しいじゃんか!!
愛って言っても何を基準に愛なのかも分からないし・・・
手作りは今から作れないしなぁ・・・・
「オレには無理なものばっかりじゃん!!」
「愛を捧げるなら『オレをた べ て vV』に限るわね!!」
「勝手に話を進めるなー!!」
何言ってんだよカスミ!?
カスミは何を考えてんだか・・・・
歩きながら地面に転がっている石を蹴る。
コロコロと奥に進んでいく石を見ると楽しくて仕方がない。
「冗談だって!!(笑)・・・あ、あれよ!」
カスミの指指す方向に目を向けると大きな木が一本立っていた。
歩く速さにスピードを入れるとどこからか水の流れる音が聞こえる。
緩やかな水の流れが心地良い。
広がった草木を見渡すと視界一杯に緑が見える。
「カスミ、こんな良い所いつ見つけたんだよ!?」
「秘密♪それよりも見て!!さくらんぼが実ってるから一緒に摘もうと思ってたんだ〜」
そう言うとさくらんぼを一つ取った。
オレも一つ取るとさくらんぼを口に運んだ。
甘い味が口の中に広がりほんわかな感触が堪らない。
「うめぇ++」
「でしょ?私いつもお姉ちゃんたちに分けてあげてるの」
そっか・・カスミは姉思いだもんな!!
あ!!このさくらんぼ・・・シゲルに食べてもらいたいな・・・・・・
きっと
喜んでくれるかもしれない!!
「なぁ、このさくらんぼ・・・シゲルは喜んで食べてくれるかな?」
「ナイスアイディアじゃない!!シゲルの分、ちゃんと摘まなきゃね!」
「おぅ!!」
オレはリュックから木箱を取り出し、ピンクに染まったさくらんぼを木箱に詰めた。
***
カスミと別れた後、オレはオーキド研究所を訪れた。
ドアをノックするとオーキド博士が出迎えてくれて、ピカチュウを預けた。
オレはシゲルがいることを確認して、研究所の中に足を踏み入れる。
「シゲルの邪魔にならなければいいんだけど・・・・」
不安に思いながら木箱を抱えながらシゲルの部屋のドアをノックする。
返事はないみたいだ・・・
きっと寝てるのかな?
もう一度ドアをノックするとそっと扉を開いた。
「シゲ・・・・あれ?いないじゃん!!」
中に入るとあちこち見渡したがシゲルのいる気配がない。
仕方なくオーキド博士に聞こうと部屋を出ようとしたら両手で目を隠された。
「!?だ、誰だ!?」
「さーとし君、僕に会いに来たのかい??」
「・・・・シゲル!?え、いたの?」
さっきまでいなかった筈なのにいつの間に戻ってきたのだろうか。
口をパクパクしながら笑っているシゲルを見る。
「びっくりさせるなよ〜驚いたじゃんか!!」
「ごめんごめん;一生懸命にサトシが僕を探していたことに感動しちゃってね・・・からかいたくなったんだよvV」
シゲルの奴〜〜〜!!
「オレ、遊ばれたのかよー!!」
「そんなところかな(笑)サトシはこんな時間にどうしたんだい?」
すっかり忘れてた;
シゲルにさくらんぼを渡さなきゃ・・・・・
オレは手に持っていたさくらんぼをシゲルに見せるとシゲルは驚いたようにオレを見つめている。
「サトシ・・・これ、僕にくれるの?」
「う、うん//」
今更ながら照れ臭くなり顔を伏せるとさくらんぼが入った木箱をシゲルに渡した。
シゲルは嬉しそうに木箱を受け取るとさくらんぼを一つ口に運んだ
「美味しい・・・口の中に広がる感触が良いんだよね〜」
「そ、そう!!さくらんぼ美味いよな!!」
幸せ浸りな彼の様子に自分まで和んでしまう。
好きな人が幸せだと自分まで幸せな気分になる・・・・・・
不思議だよな・・・・
「サトシも!」
「?・・・・Σんっ!?」
シゲルが近付いて来たと思った途端、不意に唇が重なった。
甘い味がキスを通して自分の口の中に広がる。
さくらんぼを口移ししながらお互いキスをする。
舌を使いながらシゲルはオレの口の中を動き回る。
そんな感覚が麻痺してきて、いつの間にかオレは酔っていた。
シゲルの巧みなキスに・・・
「サトシ・・・今までにない最高なプレゼントだ・・・・」
「そう言われると恥ずかしいじゃんか!!///」
甘ったるいようなさくらんぼな味が忘れられない。
そんな夏の日だった・・・・。
Fin.
†††
Dark†Witchを運営される紅月亜璃娜様から4444Hitキリ番として頂きました!!!
メラ最高デスvvv
2人の甘い雰囲気がお見事!!
今度さくらんぼ見たら興奮しそうです(笑)
亜璃娜様、ありがとうございました!!!(土下座)