novel


▼ 残り10%(フリリク企画/瑠璃様へ捧げもの)

「あー…ごほん、突然ではあるがシード諸君。
君達には明日から休暇が与えられた、時間をどう使うかは君達次第だ。
だが、サッカーは禁止。万が一約束を破ったものがいた場合には厳しい罰を与える。
以上!!!本日はこれにて解散!!」

全身ピンクコーデの牙山が背を向け軽い足取りでその場を立ち去る姿を見届けたアンリミテッドシャイニングのメンバーは、一体何事かと目線を泳がせた。

「なんでまた突然…急すぎじゃないか?それに、一体いつまで休むんだ?」
「確かに!明日からって事だけしかあれじゃわからないよ!」

蛇野が第一声となり、がやがやと色々な意見が飛び交う。

「ってか何!?厳しい罰って何!!!オレ達何のためにココにいると思ってるの?
はぁ…オレ、気が付いたらボール蹴ってそうで怖いんだけど」
「あはは!確かに!帆田って無意識にボール持って歩いてそうだよね!!」

お腹をかかえて笑う新田を見た帆田はカッと顔を赤くした。

「新田てめぇーー!そこまで笑うヤツがあるかっ!!」
「お、怒らないでよぉーー!!あ!ねぇ、青銅はどう思う?」
「うーん。何か考えがあっての事だろうと思うけど…
ダメだ、何も思いつかない!白竜はどう思う?」
「さぁな、オレにも分からん。ただ、教官命令なのだから仕方あるまい。
とりあえず牙山教官から新たな指示があるまで、各々(おのおの)有意義に時間を過ごすように!オレは今から自室に戻る」

そう言ってチームメンバーに背を向けた所で白竜は早々に青銅に肩を掴まれた。

「…白竜、」

「む、何だ?」

「とりあえず、今にも蹴り出しそうなそのサッカーボールはオレが預かろうか?」

「……すまん」

「ほら見ろ、オレだけじゃないだろ?」
「うん、ごめんね帆田」

青銅の後ろにいた二人の和解を耳にしながら、先程の帆田とは別の意味で白竜は顔を赤くした。


◇◇◇


ゴッドエデンの自室に帰った白竜は、シャワーと着替えを簡単に済ませベッドに転がった。

「サッカーは禁止、か」

真っ白な天井を見つめて明日からどう過ごそうかと思考を巡らせる。

サッカー以外でやりたい事。
サッカー以外で有意義な事。
サッカー以外で、サッカー以外で…

「ダメだ、サッカー以外でと考えれば余計にサッカーの事ばかり考えてしまう!」

白竜は眼を充血させ、冷や汗を顔からタラタラ流し始めた。
これはもはやサッカー中毒である。

とにかく何か他の事を考えようと体を起こすと、コンコンと言うノック音が響いた。

「誰だ?」

「僕だよ」

「シュウ??何の用だ?」

「ちょっと…その、話があって…」

「話??」

「そう、今時間空いてる?」

「ああ、丁度ヒマになった所だ。
開いてるから勝手に入ってくれ」

扉越しにしていた会話が一時中断し、それと入れ替わりに失礼しまーすとシュウが遠慮がちに室内に入ってきた。

「もしや、エンシャントダークも明日から休暇か?」
「うん、サッカーは今日からしばらくの間禁止」
「ふむ……で、用件は?」
「わー…。いきなりだね、出来ればもっと順序よく話したいんだけど」
「ああ、悪い。しかし、そうしないとオレは究極にサッカーの事ばかり考えてしまうのだ」
「うん、そうだね。君の脳内は90%究極とサッカーという文字で埋め尽くされてるもんね」
「分かってるならさっさと用件を言ってくれ」
「はぁ…。実はさ、そのサッカー禁止令って…僕のせいなんだ」
「何?一体どういう事だ?」
「僕の…その、身体的問題で…」
「身体的??」

体調でも悪くしたのかと白竜はシュウの体を見渡したが特にコレと言って大きな変化は見られない。
顔色は良く、ケガをしている様子もなさそうだ。

「シュウ、一体どういう事なんだ?」

「…つまり、こういう事」
「なっななな、何だ!!?」

いきなり手首を掴まれ、引き寄せられた白竜はそのままシュウの胸元に倒れこんだ。
だが、白竜が思った程倒れた衝撃は少ない。
むしろ…

(…や、柔らかい??)

顔面を何かに埋め、シュウに掴まれた左手はがっしりとその何かを触っていた。
無意識に確かめようと左手に掴んだ弾力のあるソレを2度3度揉むと、シュウの低い声が白竜の耳に届いた。

「はぁ…確かに触らせようとしたけどさ。
ここまでサービスする予定はなかったんだよ、白竜?」

「サービスって…は??」

「天然?それとも無意識なの?でも、それが通じるほど僕は優しくないよ?」
「ちょっ、待て!シュウ、一体何を!!!」
「ブラックアッシュ!!!!!」
「―ッ――――――あーーーーーー〜!!」

サッカーボールなしの状態でシュウが蹴り上げたのは、白竜の大事なアソコだった。


◇◇◇

「…で、ここからが本題なんだけど」
「っくぅ…お前、オレに何か言う事ないのか?」
「ないよ。白竜こそ、僕に何か言う事ないの?」

「「・・・・・・」」

「おに、悪魔!!!」
「チカン、変態!!!」

「だってまさかお前が女だなんて知らなかったから!」
「はぁ!!?僕は男だよ失礼だな!!!」
「まさかオカマか!?」
「違うよっ!!!」
「じゃあ何でそんな程よい大きさの柔らかい胸があるんだぁ!!!」
「だからそれを今から説明しようとしたんじゃないかぁ!!!」


「「はぁ…はぁ…はぁ…」」

「と、とりあえず…事情を聞かせてくれ」
「う、うん…えっと。どこから話そうかなぁ…」

ベッドの上で向かい合い正座しながらシュウはポツリポツリと話始めた。

「昨日、チームのみんなでいつもよりも深い森の奥で練習してたんだ。
そしたら、僕も見たことない珍しい果物を見つけてね、それで」
「食べたのか?」
「まさか。どんな食べ物か調べてみたかったから持って帰ろうと思ってさ、いくつか拾ったんだよ。
で、その途中林音教官に会ってね?その果物と私の持っているドリンクを交換してくれないかって言われてさ」
「…交換、したのか?」
「うん、果物の情報は後で教えてくれるって言われてさ。
みんな練習後で喉乾いてたし丁度いいかなって」

「・・・・・・・・」

「はぁ…この時気付くべきだったんだよね。
普段教官達は用事がない限り森には立ち入らないし、しかも女性教官一人であんなに沢山のドリンクを意味なく持ち歩いてる方がおかしいし」

「まさか…エンシャントダーク全員…」

「そ、今朝起きたらこの有様さ。
そりゃ木屋とかカイ…芦矢も可愛く見れなくもないけど…
後のメンバーは直視できないよ…」

「しかし分からん、教官達は何故こんな事をしたんだ?」

「んー…牙山教官曰く、ホルモンを活性化する事でどういった変化が体に現れるか知りたかったらしい。だけど、実際強く働いたのが女性ホルモンだったみたいで教官達が期待した物とは全く違う結果を招いたみたいだけど」
「…つまり、その女性ホルモンが減少しない限りエンシャントダークはまともにサッカーの練習が出来ない=アンリミテッドシャイニングとのプラスとマイナスの調和バランスが崩れる=両チームの休暇(サッカー禁止)という事か?」

「流石白竜、察しがいいね」

「だが、サッカーが禁止になったというのはお前のせいではないだろう?」

「うーん…でも、チームのリーダーとしてはやっぱり気付くべきだったかなぁって。
問いただして、事実を知った上で教官達に協力出来れば…こんな風にモヤモヤせすにすんだんじゃないかなって…僕は…」

「…シュウ?」

「…僕はもう、騙(だま)すのも、騙されるのも、嫌なんだ」

深い所に沈んでいる何かを見据えるようにシュウは目を細めた。

「ふふっ、ごめんね。何かしんみりしちゃった。
はい!これで僕の懺悔(ざんげ)終了!!
聞いてくれてありがとう!おやすみっ!!」

早口で言うだけ言って部屋を去ろうとするシュウの手首を掴み、今度は白竜が自身に向かって引き寄せた。

「なっ!は、はくりゅう!?」

訳が分からないまま、シュウは白竜の胸に収まった。

「お前が…チームを大事にしているのはオレがよく知っている。
だから、あまり自分を追い詰めるな」
「〜っ!!白竜……うん、ありがとう」

「それと、もう一つ…」
「??」

何か覚悟を決めたように数秒の間を置いて白竜は口を開いた。

「オレは、その…可愛いと、思うぞ?」
「へ??」
「今まで女など…弱々しくてつまらないし、究極を目指すオレの目には全く留まらなかったのだが…。
ほ、他のメンバーはともかく、シュウ…今のお前は、目に、留まらなくもない」
「きみ、それって…まさか…」

抱きしめられた状態から一度体を反らして正面から見た白竜の頬は次第に赤く染まっていき、そんな白竜につられてシュウも顔を赤らめた。


「白竜、一応言っておくけど…僕、男だからね?今は違うけど」
「なっ、オ、オレだってそれくらいは分かっている!!
た、ただお前はサッカーの実力においても文句はないし、
元々性格も顔立ちも中性的だし…
は、初めて出会ったあの時から!究極のオレの隣にいる者として相応(ふさわ)しい相手だと今までずっと思っていたのだ!!」

若干声を裏返しながら後半を早口で言い終えた白竜の息は上がっていた。

「…ねぇ白竜、それってさぁ…
僕に一目惚れしてました、今までずっと思ってました、今日その思いが確かであることを再確認しました…って解釈してもいいの?」
「え?なっ、そんなはずは…っ!!!」

「動揺して慌てたいのは僕のほうなのに」と内心思うシュウの目の前で、普段冷静沈着な白竜の顔は見事に百面相を繰り返していた。

「いやいや、まさかそんな事は…オレが言いたかったのはそういう事ではなく、シュウが男であろうが女であろうがオレは関係ないという事を思っただけで、そう、良きライバルとして…!ずっと共にありたいと!!」

一人頭を抱えてダラダラと言い訳を語り出した白竜にシュウは肩を落とした。
この調子では答えなど一向に出てこないだろう。

(用件はとりあえず済んだし、帰ろっかな)

自身の思いに決着が付かない白竜を置いて今度こそ部屋を立ち去ろうとしたシュウの体は、またもや白竜に手によって引き戻された。

「なっ!!今度はなに!?」

「…らしてくれ」
「…何?聞こえなかった」

「体を触らせてくれ」
「…は??」

シュウの思考は一時停止した。
先程とは違い、引き寄せられたシュウの体は白竜のベッドの上に倒れこんでいる。
その上から何かを悟った様子の白竜が影を落とす。

「思い出した、確か何かの本で読んだのだ。
ヒトは、惚れた相手の体に触れると胸が高鳴ったり無意識に緊張したり…普段とは違った体の変化が現れるものだと」

「だ、だから?」

嫌な予感がする。
シュウは危険信号を感じ取りながら体をねじらせ脱出を図った。
だが、蛇に睨まれたカエルのようにシュウは委縮して身動きが取れない。

「お前の体に触れればきっと何か分かるはずなのだ。
オレはこんな曖昧な感情でダラダラ一日を過ごしたくない。
そう、オレはこの休暇を有意義に使うと決めたのだ!
だから、ここでお前との関係をオレはこれからどうしたいのかをはっきりさせたい!」

「触るって…さっき散々触ってたじゃないか!!」
「あれはお前がいきなりやった事だから考える時間がなかったのだ!」
「ふ、ふざけないでよ!どんだけサービスしたと思ってるの!?」
「サービスとは人に奉仕する事だ!あんな激痛が後に走るサービスがサービスであってたまるものか!!男のお前ならアソコの痛さがどれだけのものか分かるだろう!!?」

文句は言わせないという白竜の威圧に負けてシュウは声をつまらせた。
確かに男でないと分からない痛さではある。
羞恥心はあったものの確かにあそこまでするのは可愛そうだったかなとシュウは抵抗の力を少し弱めた。
その隙に白竜はシュウの胸に両手を忍ばせた。

「ちょっ!まだ触っていいとは言ってないでしょ!?
っていうか触るなら胸じゃなくてもいいんじゃないの!?」
「それもそうだが…〜すぐ終わらせる!謎が解明出来るまで待ってくれ!」

暴れるシュウの両手を片手で払いのけながら白竜はもう片方の手を動かした。

「…っあ!ちょっ!!!」

柔らかなソレを揉むとシュウはいつもより高い声を出した。

「女の体はやはり柔らかいな」

だが、これといって白竜の体に変化は感じられない。
数回揉んで納得したのか白竜の手はそこから離れた。
終わったかと安堵したシュウだったが、次の白竜の行動にまたもや声を上げた。

「なっ、なにしてるの!!」
「いや、服を脱がそうと」
「何で脱ぐ必要あるのさ!」
「やはりひと肌は直に触れないと正しい答えが出ないんじゃないかと思ってな」
「君なに!本気で天然で無自覚バカなの!?」
「失礼な!オレは究極に熱心な勉強家なのだ!」

問答する最中も白竜の手は動き、シュウの上着ボタンを外していった。

その後も白竜のセクハラ…もとい謎解明は続き、気付けばシュウの体は全て白竜の手によって制覇されていた。

「うむ、やはり素肌の方が気持ちよく感じられる。
ずっと触っていたいな。
うむ。なるほど、そういう事か」

遠慮なく両手で胸を揉む白竜。
感触を楽しむようにその目は閉じられている。
触られている当人のシュウといえば、白竜に散々好き勝手にされて今では抵抗を諦め力尽きている。

「信じられない…僕、もうお婿に行けない」

シュウはもうすでに死んでいるのだから関係ない話だが、そうでも言わないと気持ちが収まらないという感情はひしひしと伝わってくる光景だった。

「何を言う、お前はオレの嫁になるのだから行かなくて当然の事だ」

「はいはい…」

(お前との関係をオレはこれからどうしたいのかをはっきりさせたい!)


謎は解明したものの、結果的にシュウの疲労感は激く残り白竜の手は相変わらずシュウの体を離さないままだった。




(シュウ…)
(…何?)
(好きだ、愛してる)
(はいはい…)





―END―

あとがき…
瑠璃様に捧ぎます。遅くなってスミマセン。てかリクにあまり答えられなくてスミマセン(汗)
シュウ君の気持ち行方不明な感じの白シュウ話でした。
でもきっと両想いです(笑)



←/→


← top



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -