Rival


「くっそ〜!!!また負けたぁ〜っ!!!」

「まぁ当然の結果だよね。僕はおじいちゃんの名に恥じぬよう日々勉強してるんだから。
ただがむしゃらに生きている君とは訳が違うんだよ、4番目のサァ〜トシくん?」

「なっ!!!その呼び方やめろって言ってるだろ!!!」

「せっかく君にピッタリのあだ名を考えてあげたのに…嬉しくないのかい?」

「ぜんっぜん、嬉しくない!!!」




いつもそうだった。
お前はいつだってオレの目の前に立って背中を向けて歩いてた。



Rival


時々振り返ってはオレを四番扱いして笑って、また視線を前に向けて歩きだして


オレだっていつかお前を追い越してやるんだ!!

そう思って臨んだシロガネ大会。
オレはやっとあいつに、シゲルに勝ったんだ。
大きな大会でオレは遂にシゲルを追い越したんだ!!

その時はただ嬉しかった。
嬉しくて体が震えた。
客席の歓声とアナウンスを聞きながら力一杯飛び上がって喜んだ。

こんなに熱いバトルでお互い一歩も譲らず、最後の一体まで全力で戦ったんだ!!!

カスミやタケシ、ピカチュウもオレの周りに集まって喜んでくれた。
フィールドの向こうを見るとシゲルが笑みを浮かべながら振り返り、出口に向か
って退場して行くのが見えた。

シゲルが退場した後も尚。興奮した体の震えは止まらなかった。


その後、シゲルが研究者としての道を選ぶ事を初めてオレは知った。

半球になったモンスターボールの片割れも渡され、半分だったモノが一つになっ
てオレの手元に残った。

手渡した時のアイツの目は、まっすぐ次の目標に向かっていた。
(何か…胸がスカスカする、何でだ?)

その理由が何なのか分からないまま、ジムリーダーとしてハナダに帰る事になっ
たカスミや、家の用事でニビに帰る事にしたタケシと別れた。
2人との別れはある意味以外すぎて、少し弱気になってしまった。

何処かシゲルと別れた時と似たような気持ちだったけど、何となく違う気がした

(2人と違って何かシゲルのはモヤモヤ残るんだよな、いや、むしろ隙間が空く感
じか…?)

途中、ロケット団の罠にハマりながらも何とか無事マサラに着いた。
(やっと帰ってきた…久しぶりにママの料理が食べれるかな)

家の前で少し気を抜いていたが、シゲルが旅立った事を聞き、無意識に慌てて道
を逆戻りした。
マサラまでの帰り道より足に力を入れて、精一杯山を駆け登った。
体はもう疲れきっているはずなのに…!!!

マサラが見渡せる位置まで登って来た時、ようやく紫色のシルエットが見えた。

「…ッシゲル!!!」
叫んだ。聞こえないかもしれないと思ったけど…

「サトシ…!?」

届いた。

シゲルがゆっくりこっちを振り返った。
追いついてようやく足を止め、疲れがあまり目立たないように大きく深呼吸して
から言葉を繋げた。

「もう行くのか?」
少し話して、何となく引っかかっていた代物をリュックから取り出し、半分に割
ってシゲルに差し出した。

「シゲル、コレ。」

(ずっと変な感じがするのはきっとコレのせいなんだ。)

「いいのかい?」
「ああ。これはお前が持っててくれよ!!」
「じゃあ有り難く貰っておくよ。」
シゲルは、オレから受け取った半球を握りしめながら言った。

(何でだ?渡したはずなのにまだ胸がスカスカする。)


「サトシ。」
急に名前を呼ばれて顔を上げると、オレの肩をしっかりと手で固定したシゲルが
真剣な顔つきでオレを見ていた。

「これから僕たちはそれぞれ別の道に行く。だけど、それ以前に僕たちはライバ
ルだ。これからも君には負けない!!!」
ー…絶対に。

話終えたシゲルは、肩に置いていた手をそのまま背中に回してオレを抱きしめた


「……………ッ!!」

今、空いた隙間が…埋まった気がした。

「あ…当たり前だ!!!オレだってお前には負けない!!」

急な事に驚いて顔が赤くなって…、一拍遅れたけど力強くオレは返事した。
側にいたピカチュウも少し顔が赤くなっていたようだが、目に力を入れて(勿論!!)
と主張していた。

シゲルはオレからそっと手を離して再び向かい合った。

「ありがとな、シゲル」

「何がだい?」

「お前って何かとオレの思ってる事分かるんだよな、だから…さ」

思っていた事をそのまま口にすると、シゲルは少し笑いながらこっちを見た。

「いつも見ていたからね。」
「…?何を??」
「いや、何でもない。じゃあそろそろ僕は行くとするよ」
「ああ、そうだったな」

シゲルが言った事が少し気になったけど、あえて追求はしない事にした。

「引き止めて悪かったな。」
「別に構わないさ。」

シゲルは肩に掛けたリュックを再び持ち直して後ろを向いた。

「じゃあな、シゲル!!」
「ああ、またな。」

後ろ姿のまま腕を上げて別れの挨拶をして去って行くシゲルの背中をしばらく見
つめていた。

姿が見えなくなってからピカチュウと一緒に側にあった木に登った。
登った木からは生まれ育ったマサラの土地と、旅立ちの日に見たポケモン、ホウ
オウが空高く飛び、まだ知らぬホウエン地方へと向かう所を見た。

アイツと次に会うのはいつになるんだろうか。
そう思いながら、オレは新しい土地。ホウエン地方への冒険に期待を膨らませた。




ー…この時のオレはまだ知らない。

次にアイツと出会えるのが、再びこの土地、マサラである事も。
新しい旅立ち、シンオウ地方に向かう事を決めるきっかけが、シゲルの一言だって事も。

追い越したはずの背中にまた追いこされて…
オレは結局、またアイツを追いかけるんだ。

どこまでも、

どこまでも。



ーENDー


あとがき...
Fc2ブログでUPしたこの話、探して探して…ようやく発見出来ました(涙)
この話はPromiseに続いて書いたシゲサト(?)第二弾目のお話デシタ。
金銀編のお話ほとんどウロ覚え状態で書きましたので多少…誤った点があると思いますがスルーしてやって下さい(汗)

サトシは無意識にシゲルを必要としていたらいいと思います。←






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -