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 教室

「名前、プリント集めとけよー」
「はい」

この一言が

私を彼に導いた



「ま、松岡くん」
「あ?」
「プ、プリントを、その、提出しないと、いけなくて…」
「ああ、ほら」
「あ、ありがと」

彼からプリントを受け取ろうとした

「……なあ、何で下ばっか見てんだ?」
「へ?」
「お前、いつも俺と目合わせねーよな」

き、気づいてたの!?

「俺、怖いか?」
「ち、ちが」
「んじゃ、嫌いなのか?」
「違う!」
「…やっと俺を見たな」

赤い瞳が綺麗だった

また私は顔を背けてしまった


「理由を言え」
「そ、その…、緊張して…」
「は?」
「だから、緊張して…」

「ブハッ、緊張とかウケんだけど」

「なっ!?」
「つか、なんで緊張すんだよ?」
「松岡くんが好きだからじゃん!」
「……」
「……あ、」

言っちゃった

「……」

どーしたらいいだろうか
この空気


「わりぃな、笑って」
「いや、……うん」
「おい、こっち向け」

向けと言いながら無理やり向けられる



「俺も好きだわ」



「……え?は?」


なんだと?

「名前のこと好きだっつてんだよ!」
「……ほんと?」


何これ?ドッキリ?


「お前の笑顔に一目惚れしたんだよ」
「いつ?」
「誰が教えるかバーカ」
「…凛くんって呼んでいい?」
「ああ」
「へへ、凛くん好きだよ」



何気ない日が特別な日になった



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