小説 | ナノ
…はぁ、なぜ神様はこの生き物を作ったのだろう。
きっと私をキュン死させるためだと思うのよね。そうに違いない。
「どうして君たちはそんなに可愛いんだい?」
私がそう問い掛けると皆頭にクエスチョンマークを出すがごとく、首を傾げた。
ぐはぁ、可愛いっ!!
仕草まで可愛いとか反則でしょう!!!
…そういえば首ってあるの?
「大丈夫キュー?」
いきなり地面にひれ伏した私を心配してか、目の形が一番可愛らしい(少なくとも私はそう考えている)マチャーが声をかけてくれた。
ちらり、と周りを見ると他の皆もおろおろしてるのが伺えた。あー、もう、本当可愛い!!
「まだ生きれる。」
そう言って親指をぐっ、と天に向かって出すのが今の私の精一杯だった。
竜巻に呑まれて雲の下に落ちてしまったゼルダを探すため、リンクがこそこそと空に出ていくのは知っていた。
あの日はいつもよりちょっと暇で。ちょうどよく見つけたリンクが何処に行くのか気になったから、たまたまの思い付きで尾行しただけだった。
しかし運悪く、積乱雲から発生したと思われるそこそこ立派な竜巻に巻き込まれてしまい、これまた運悪く私の落下地点にいたリンクを巻き込んで大地に落ちたのが全ての始まり。
ちなみにこの可愛くて可愛くて仕方がないキュイ族に出会えたのがあの竜巻のせいだと思うと、運悪くと言ってきたが奇跡的に、と置き変わる。人間って現金ね。怖いわー。
で、話を戻すと、大地と呼ばれる場所に落ちた私はそれほど驚かなかった。
ゼルダから雲の下の話は少しだけ聞いていたからってのがあったからかもしれない。
そんな大地があったということよりも衝撃を受けたのは、こんなに可愛らしい生き物が存在していたという事実。こっちの方がかーなーり、重要!
彼らを一目見て、私の中に埋もれていた気持ちが一気に覚醒した。
今思うと、なんとなくだけどそんな感じはしてたんだ。同年代の男子より私のロフトバードの方がよっぽど男前だと思ってたし(それは今でも変わらない)
そう、私はケモナーだったのだ。
本当キュイ族可愛いです。
今なら燃え尽きて真っ白な灰になっても後悔はない。
しあわせ。
「見つけた。」
そんな私とキュイ族達との楽園を踏み荒らす声が聞こえた。
ゼルダを探して三千里中、全身緑のリンクである。
ちっ、お邪魔虫め。
「マチャーかムギーかコブーかセブリーにでも用があるの?」
よいしょっ、と地面にひれ伏してキュイ族の可愛さに打ち拉がれていた体を起こす。
おそらく私に用があるんだろうがどうせいつもと同じ内容だろう。
一応きちんと対応はしているが、心の中は早く出て行ってくれないかなぁ、という思考でいっぱいだ。
早くキュイ族とイチャイチャしたい。
「なまえ、いい加減空に戻らないか?」
「やだ。」
ほら、やっぱりこの話。
リンクは危険がたくさんのこんな所に私がいるのが気に食わないらしく、よくここへ来る。
いくら説得をされても、彼らと会えない生活など今となっては考え付かないくらいなのに。
「この森は今、危険なんだ。」
「知ってる。でもここは食べ物も不自由しないし、何より魔物だって入ってこれないから安全って、長老様が言ってたもん。」
それにキュイ族達といられるなら多少の危険は厭わない!!
私は鉄の意志を持って反論した。
だが、この日は少しこの後が変わっていた。
「……クイナさんが君のことを心配してたよ。」
「えっ…、クイナ姉さんが……?」
巷でバード兄弟と呼ばれる2人と私は家が近いからかとても仲が良く、特にクイナ姉さんは本当の姉のように慕っている。
そんな大好きな姉さんが心配してるとあっては……、
動かざること山の如しのはずの、鉄の意志がぐらぐらと揺れる。
「もちろんパウロさんだって心配してたよ。」
「うぐっ、」
今までそんなこと一切話題にしてこなかったくせに……!
くっ、リンクも考えたな。
今や私の意志はペラペラの紙同様。
風が吹けばすぐ様変わりしてしまいそう。
「なまえ姉さん、お空に帰っちゃうキュー?」
そんな時、私の横から可愛らしい声が聞こえた。
コブーだ。
「それは嫌だキュ!」
さっきまでいきなり現れたリンクに驚いて草に擬態してたムギーも声を上げる。
その動作も可愛い。
「もっとお姉さんと一緒にいたいキュ!」
あげくセブリーまで。
「なまえお姉さんは僕たちと一緒にいるのが嫌キュー…?」
とどめに目がうるうるとしてる(ように私には見えた)マチャーにこんなことを言われてしまっては、
「リンク、私、ここに骨を埋めるわ。」
この選択肢以外ありえなかった。
よちよちと背中のコブを揺らしながら私に寄ってくる可愛いキュイ族達をぎゅっ、と抱き締めた。
もう皆本当に健気!
可愛すぎる!
クイナ姉さん達には手紙でも書こう。
私のことは心配しないで、楽しく過ごしてるよ、って。
ここにいる緑のポストマンにでも頼んでさ!
(もちろん長老様も大好きだよ!)
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