小説 | ナノ



*鼻歌BGMのIF設定のような、そうでもないような










「なまえー!トリックオアトリートなんだぜ!」

「私も!」

「マロもお菓子が欲しい…」

「ぼっ、僕も!」



私の居る台所にいっせいに駆けてくるタロ、マロ、ベス、コリンの4人組。
おー、来たな。ちみっこ達よ。お前達が来ることは既に想定済みなのさ!!



「4人ともハッピーハロウィン!」



そう言って私はハロウィンにちなんだかぼちゃ系のお菓子が詰まった箱を4人に手渡す。
この日のために1週間ほど前からお菓子を準備していた私に死角はなかった。



「おぉ!スゲー!!」

「素敵ー!」



さっそく中身をみたタロとベスが声を上げる。
そりゃ、驚いてくれないと困る。せっかくかぼちゃのクッキーを数種類とパウンドケーキまで入れたんだからね!
ちなみに。
お菓子はこれだけじゃない。



「そうそう、君らの両親にはこの箱を届けてね。」



そういってマロとベスとコリンにお菓子詰め合わせの箱よりも大きな箱を渡す。



「これはなに?」

「皆さんのご家族用のケーキですっ!」



箱の中にはかぼちゃのシフォンケーキ(大きめ)が入っている。
ちみっこ達に家族全員のお菓子をあげても親まで行かないことが考えられるからその予防線として別に用意したのだ。
彼等は直接渡しても遠慮してしまうだろうから、断れないように子供を通して。
やっぱり何事も素直が一番だよね。



お菓子をさっそく食べたり眺めたりしているこの4人組を見ながら、私もだいぶ馴染んできたなぁ、とか少しずれたことを考える。

事の始まりは少し前。だいたい1ヶ月くらい前に遡る。
どうやら私は、異世界トリップをいうものを経験してしまったらしい。
その辺の詳しい話は省略します。
で、まぁ色々あって現在はトアル村の村長さんであるボウさんとイリアのお家で、ご厚意に甘えさせてもらって家政婦ということで生活させてもらっています。

え?省略しすぎ?
あの辺は思い出すのも恥ずかしいんだよ!!!
ヒントは私の第一発見者が憧れてやまなかったリンクということ。
誰だって会いたくて会いたくて仕方がなかった人物が目の前にいたらねぇ…?
おかげであの初対面時以外彼とは話をしていない。
すみません、チキンな私が勝手に逃げてるだけです。だって黒歴史が友人にばれたときくらいに恥ずかしいんですもの…っ!!

あ、話を戻しますね。
いつもお世話になっている村の人達になにか恩返しが出来ないかと考えて、今月の終わりがハロウィンだったのでそれに便乗してみたって事なんです。
ハイラルの人はハロウィンなんて知らないからその辺の概念を理解してもらうのに時間が掛かったのは言うまでもない。

しかし、お菓子を作るのは予想以上に大変だった。
かぼちゃを裏ごしする機械とか泡立て器なんてものがないから、思ったよりも力仕事だったし。
早めに色々と準備しておいて正解だった。



「良い香りね。」

「イリア姉ちゃん!」



甘い匂いに誘われてか、イリアが帰ってきた。



「はい、イリアにも。ハッピーハロウィン!」

「わっ、ありがとう!」



彼女に子ども達と同じ箱を渡す。イリアは喜びを笑顔で表現してくれた。可愛いなぁ。
ちなみに日頃お世話になっているこの家のためにコレとはまた別に特別仕様のお菓子とケーキは準備してある。
その辺はぬかりない。



「あら?もう1つ箱があるみたいだけど…、」



ぎくり、

イリアはその辺良い意味で目聡い。



「それはリンクの分だろう?」



再びぎくり、

声の聞こえた方に目をやるとそこにはクッキーを持ったマロが。
さっきの言葉を聞いていたようだ。
タロやベスはお菓子に夢中で見向きもしないのに、この子も鋭い。



「なるほど。そうなのね?」

「う、あ、…そっ、その、ち、違わないというか、あの、」



イリアにいきなり話を振られてしまいテンパる。

い、一応彼の分のつもりなんだ、その、一応。
でも、なんだか渡すのが恥ずかしくて。
別にバレンタインでもなんでもないのに、会ってこれを渡すとか考えただけでも羞恥で爆発しそうになるし。
初対面でやらかしちゃったからもう会えない気がしてるんだ…。



「じゃ、さっそくリンクに渡しに行きましょうよ!」



そんな私の心を知らずにイリアが提案をする。

無理無理無理無理!ぜーーーーったいに無理!!!

その意を込めて私は全身全霊で首と手を横に振る。



「あら?嫌なの?」

「えっと、別に嫌ってわけじゃないんだけど…、」



会いづらいなぁー…、って私が勝手に思っているだけだから。



「ねぇ、イリア。お願いがあるんだけど、」

「嫌よ。」

「ええっ!?」



即答ですか!?まだ何も言ってないのに!?



「これを渡してきてほしいとか、そんな感じなんでしょう?」

「うっ、」



当たりです。



「せっかくあなたが作ったんだから、自分の手で渡してきなさい。」



そ れ な ん て 無 理 ゲ ー 。

イリアに内緒で子ども達にお願いしようかな、と頭の隅で考えてたけど、イリアがちみっこに言い聞かせてるからそれも無理っぽい。

これはいよいよ死亡フラグか!?次回を待て!!





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