小説 | ナノ



リンクが謎解きに悩む顔が好き。魔物と対峙する時に見せるキッとした顔や余裕綽々な顔も好き。時折見られる微笑も目蓋が伏せめがちな横顔も好き。でも一番好きな表情は無邪気な笑顔かな。太陽よりもきらきらと光る金髪だって、どんな空よりも澄んだ青い目だって、あの緑色の洋服(赤いのも青いのも素敵)だって、私の鼓膜を揺する心地よいその声だって、貴方を構成する全てのものが愛しいの。
もちろん貴方の性格だって好きよ。ハイパーが付くくらいお人好しで困ってる人は見捨てられない所なんて、呆れちゃうけど私はそこにこそ貴方の良さが出てるって感じるの。私以外の女の子と仲が良いのは少し妬いちゃうけど。実はちょっと抜けてる所だって笑っちゃったり呆れたりするけど、たまらなく好きなの。
貴方の仕草や行動の1つ1つに胸が高鳴って、貴方のことを考えると胸がきゅーっと苦しくなるの。貴方のためなら例え火の中水の中草の中森の中土の中雲の中あの子のスカートの中、この体はどうなったって構わないわ。



「つまり、私はリンクが好きなの。リンクも私のこと好きよね?じゃないとここから飛び降りるから。」

「待て待て。なまえ、とりあえず落ち着こう?なっ?」



私は至って冷静よ。それよりも貴方からの返事、それだけが欲しいの。
足元には深い谷、その下にはゴウゴウと流れる川がある。流れが速く、落ちた人は誰も戻ってきていないらしいとか。ここはゲルドの砦の手前。橋はなぜか壊されていて向こう岸に渡る方法は無いように思える。私はその壊れた橋の手前に立っているのだ。
だってリンクが私を置いて行こうとするから。リンクは私の全てなのに。貴方がいないと私はダメなのに。
近くの看板には確か、死んで花実が咲くものかって書いてあったけど、私リンクに振られたら生きていけない。死んだほうがマシ。だから置いていかれるくらいなら告白してやる。



「Hey!なまえ、橋を越えるのはロングフック以外に方法があるはずだヨ!」



慌てた様子のナビィちゃんが話す。聡い彼女には私の心中などお見通しのようだ。対してリンクは「なんで今、橋のことが話題に?」って顔をしている。そんな天然でにぶい所も好きなんだけどね。
ナビィちゃんがリンクにアタックしてる。軽い彼女がそんなことをしても意外にしっかりと筋肉がついた彼には意味がないのに。



「うーん、なんでいきなり君がそんなこと言いだしたのかよくわからないけど、俺はなまえのことが好きだよ。」



恥ずかしいのか左手で頬をかきながら優しい微笑をしたリンクが告白に返事をくれた。



「……それはマロンちゃんやルト姫やナビィちゃんと同じ“好き”?」



臆病で思い上がりな私に確証がない“好き”はダメなの。 貴方の特別じゃなければ私のこの人生、意味がないの。

リンクは少し考えてから、



「似ている部分があるっていったらあるかな。」



そう答えた。
さて飛び降りよう。
空中に足を踏み出す。
さよならリンク、貴方のことは死んだって何回生まれ変わったって、何回時空を越えたって絶対に忘れないから。 だからほんのちょっとでいいから私のことを覚えておいてくれると嬉しいな。



「でも、…っなまえ!!!」



落下していく世界で私を追ってくる緑が見えた、ような気がした。







(どぼん、)




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