始まりは明日

 やけに広く感じる部屋を見ながら、美優希はいなくなった弟について考えていた。
 卒業研究が思いのほか評判がよく、さらに学会で発表したら賞をとれたと連絡を貰ったのは去年。その噂を聞きつけてか、荒神は弟を招き入れようとし、そして彼はそれを承諾した。
 弟が荒神へ行くと知ったのは引っ越しの最中、今年の弥生。実家よりも近いからと言って美優希が一人暮らししていたところへ転がり込み、両親に文句を言うも丸め込まれて。気付いたら四年ほど一緒に暮らしていた。
 まさかあいつがね、と美優希は寂しく思いながら目を閉じる。二人暮らしは何かと大変で、もっと女らしくしろやら家事が雑だとか色々文句は言われたりもしたが、楽しかったと思う。
 弟なのに、まるで妹のようだったと感じながら、美優希は久しぶりに一人で寝る。
 明日から、また新しい日が始まると信じて。

 

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