もう一度君に会うために

 二度と会えなくなるとは思わなくて。ただ、また会えると思っていたから一人で行かせた。どうして、こんな結末になっていたのだろう。どうして、傍にいてやれなかったのだろう。一緒にいたなら、せめて足止めくらいはできたはずなのに。
 押し寄せる後悔が、真佐紀を責める。目の前の綺麗になった彼女は、ただ穏やかに眠っていて。このまま、もう一度目覚めてほしいと、もう一度名を呼んでほしいと願う。しかし、それは叶わない。
 誰かが声をかけてきた気がするが、何も聞こえない。何も、聞きたくなかった。聞いてしまっては、これが現実だと思い知るから。
 目を閉じると、紅い光景が浮かぶ。白と、紅。白い彼女に、紅はよく似合っていて。ただ、美しいとすら思えた。
「ねえ、君を殺したのは誰? 誰が君をこんなに苦しめたの?」
 何度も聞いた問いは、返ってくることはない。しかし、もしかしたらと、あるはずもない希望に無理矢理に縋り付こうとしていた。
「大丈夫だよ、君の仇は僕がとるから。そしたら、また二人で一緒に遊ぼう? 大丈夫、僕は栞和ちゃんがまた目が覚めるのを待ってるから」
 支離滅裂な言葉が口から出る。しかし、真佐紀は気づかない。
「そしたらまた笑ってくれるかな、もう一度、言ってくれるかな」
 気づくと、とうに枯れていたと思っていた涙が出てきた。
「じゃあ、ちょっと出かけてくるよ。寂しいと思うけど、ちゃんといい子にしててね? 大丈夫、すぐ戻ってくるよ」
 ――それと、これ借りるね。
 真佐紀は、栞和がいつも身に着けていた紅い花の髪飾りをとる。そして、その髪飾りを自身の髪へとつけていく。
 これなら、いつでも一緒だね。心の中で呟いた言葉は、狂気をはらんでいる。
 そして、真佐紀は一人夜の西京都を彷徨った。

 

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