無理とか言ってられないでしょ
荒い息を整えながら、真佐紀は後ろを振り返る。見た先には誰もいない。
安堵のためのため息を長く吐きながら、真佐紀は先程のことを思い返した。
卯月と久しぶりの再会は、喜ばしいものではなかった。むしろ、その逆である。
彼女に対し先制攻撃を仕掛けようと思った。しかし、体力はこちらが上でも戦い方はあちらが慣れているのだろう、つかまれた肩など意にも介さずにやられた。
このままでは危ないと思いなんとかして持っていた例のやつを使用して逃げてこれたが、これでは本末転倒だ。心の中で悪態を吐きながら、真佐紀は全力疾走で卯月をまいた。
ほんと、予想外のことにうまく対処できないよーちくしょーと小さく言う。周りには誰もいない。誰もいないことが吉と出るか凶と出るか、彼にはわからない。
とりあえずまた適当に歩くか、とぼやき、真佐紀はゆっくりとした足取りで歩き始めたのだった。