出会いは突然に

 朝食を食べた後、真佐紀は再び散歩という名の探索をする。相変わらず何も見つけられず、ポケットにしまった例のものを未ださせないことに焦りを感じた。
 しかし、真佐紀は体力は普通でも体術はない。姉なら空手やらなにやらをやっていた気がするのだが、真佐紀はどちらかというと頭を使うほうが得意だ。いかに体力を使わせずに相手を攻撃するか、今の彼の頭の中を占めるのはそれだけだった。
 そのとき、見たことがある薄紅の髪が視界をかすめる。はじめは家族であるマオユミかと思ったが、どこか雰囲気が違う。誰なのだろうかと後をつけていくと、その人物は見知った人物で。真佐紀はそっと声をかけた。
「卯月ちゃんじゃん、こんなところでどうしたの?」
 十六夜卯月。真佐紀の一つ下のいとこだ。彼女が研究者としてここに配属されたことは聞いたことがない。しかし、彼女に関するある噂は耳に入っている。
 驚いた彼女など気にもとめず、真佐紀は近づいてくる。恐らく、戦ったらこちらが不利だ。だが、彼女はまだ真佐紀が正体を知っていることに気づいていない。
 とりあえず近づき、頃合いを見て『あれ』を出そう。真佐紀は緊張しながら彼女の正面まで行き、話しをしだした。
「久しぶりだね、もう五年くらいだっけ、会ってないの」
 他愛のない話しをしながらも、警戒は解かない。それはお互い様だろう。
 瞬間、真佐紀は卯月の肩を掴む。そして、そっと囁いた。

「卯月ちゃんが椿組だと噂で聞いたけど、本当かな」

 彼女の顔色が少しだけ悪くなったのを、彼は見逃さなかった。

 

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