朝食の味は覚えているのか

「ねえねえ、君はなんて言うの?」
 短い黒髪をした男に、真佐紀は尋ねる。真佐紀にとって、人と話しをすることは苦ではない。むしろ、好きな部類である。
 しかし、今は情報収集が優先だ。知りたいことを聞けるかわからないが、この朝食の時間は彼にとって重要なものである。どうやって聞き出そうかと考えていると、二人は食堂へ着いた。
 朝食は見るだけで美味しそうで、毎日食べているはずの真佐紀はいつも感嘆の声をあげる。目の前に座る男は食に疎いらしく、出された食事を見ても何も感じていないらしい。
 とりあえず簡単な自己紹介をしながら、二人は他愛のない話をする。といっても、ほとんど真佐紀が男に話しかけるだけなのだが。
 とりあえずわかったことは、この男の名前が栄華敬次郎だということ、同じ理化学研究所所属でメインは物理学、あと今は関係ないと思うが姪がかなり前に荒神に入ったこと。そして、彼は真佐紀と同じく周りに公言していない過激派だ。いつもは中立派と言っているらしい。しかし、これはいい収穫……。
 思わず笑いそうになりながらも、真佐紀はその喜びをおくびにも出さずに聞く。そしてちょうど食べ終わったのか、男――敬次郎は食器を片づけようとする。
 これ以上は何も得られないと判断した真佐紀は、食器を片づけるところまで一緒に行く。そして、去り際に小さく呟いた。

「何か面白いことがあったら、すぐに僕に教えてね」

 

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