散歩をしよう!

「さすがに、まだ人が少ないかなあ」
 独り言がこぼれる。
 真佐紀は、あちらさんと積極的に戦いたいとは思わない。更には、なるべく過激派だということを知られないようにしないといけない。例えそれが、同じNECTERの過激派だとしても。
 しかし、だからといって何も仕掛けないということはしない。準備は整っている、手持ちも十分。あとは、うまくいくかどうか……。
 白衣のポケットに入れておいた例のものを確認しながら、真佐紀は歩き続ける。
 すると、見慣れない人物がこちらに向かって歩いてくるのが見える。
 黒い髪を、短く切りそろえている。男だ。白衣を着ており、研究者風である。
「おはようございますう!」
 間延びするような口調で、挨拶。男はいきなり挨拶をされたことに驚いたのか、いちどびくりと体を震わせた動きをしたような気がする。
 ただの臆病な男かもしれないが、しかし、今はこの『もしも』が命とり。気をつけないといけない。
「どうしたの、これから朝食?」
 気軽な感じで尋ねると、男は小さな声でそうです、と答える。一緒に行っていいかなあと再び尋ねると、男は驚いた声をあげた。
「いいでしょ、ここで知り合った仲なんだしさ!」
 明るく言う声は、どこか有無を言わせないもので。返事も聞かずに、真佐紀は研究者風の男と一緒に朝食を食べることにした。

 真佐紀にとって、この男が敵かそうでないか関係ない。今は、情報収集をするのみだ。
 彼の本戦は、始まった。

 

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