頁を捲る楽しみと

 潜水艇の中で、エスターは暇を持て余す。人と話すことは楽しいと思うのだが、それが続くと疲れるときもある。話題が豊富というわけでもないため、話す内容がすぐに尽きてまうのだ。
 そういうこともあり、エスターは一人図書室へ来ていた。様々な本があるこの図書室は、エスターが今まで読んだことがない本も多かった。今日は何を読もうかと楽しみにしていると、エスターは見慣れた人物を見つける。彼女がまだインヴァレリーの生徒だった時、図書室でよく話しをした先輩だ。
 エコー先輩、と声をかけると、思いの外声が響いた。いきなり呼ばれたことと声がかなり響いたことでびっくりしたのだろう、エコーはびっくりした表情をしてエスターを見る。少し怯えたような表情をしている女性は、エスターの顔を見て少し安心したような顔をした。
 いきなり呼んだことに少し申し訳なさを感じるが、せっかく呼んでただ挨拶するだけなのももったいない。彼女の卒業以来、話すことは少なくなってしまった。特に、本の内容について語ることは、なくなってしまった気がする。今は時間があるのだし、少しくらい話しをしてもいいだろうか。そう思い、エスターは今暇か聞いた。
 一瞬驚いた顔をした後、優しい顔をして大丈夫であることを教えてくれる。それが少し嬉しくて、エスターは知らずに笑顔になった。
「先輩、この間出た本読みました?」
 エスターは、この間発売された本の名前を言う。ありきたりな会話をしながら、エスターはエコーの様子を確認する。少し照れた顔をしたエコーは、特段変わった様子が見られない。そこに安心しつつ、エスターはエコーの返事を待った。
 その本は、シリーズものとしてエコーがまだ在学中から書かれている本だ。中々続編が発売されず、やきもきしているところにこの間新刊が発売されたものである。そして、エスターとエコーが仲良くなるきっかけになった本でもあるのだ。
 エコーは、少し考えた後に読んだことをエスターに言う。そして興奮したように、本の内容に触れてきた。久しぶりに、人と本の内容について話す気がする。エスターもつられるように気分が昂ぶり、つい声が力強くなってしまった。
「ここは図書室なんだけど、静かにしてくれる?」
 しばらく話しに夢中になっていると、誰かが声をかけてくる。エスターとエコーは、いきなり声をかけられたことに対し驚く。少しうんざりしたような物言いに苛つきそうになるが、ここは図書室だったことを思い出し彼の言い分がもっともだということに思い至った。
 とりあえず注意してきたのは誰かと声のする方に向ける。そこには、気だるげな雰囲気をしながら本を読んでいる様子のインヴァレリーの先輩、リル・ヘルキャットがいた。
 彼の言い方に何か文句でも一言言おうかと迷ったが、注意されたことは仕方がないことだ。彼に謝罪をし、エスターはエコーに場所を変えようと提案する。エコーは少しおどおどした様子で頷いたのが見えたので、二人で図書室を出ようとした時だった。
「その新しく出た本の題名教えてよ」

 

 







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