二人の戦いが今始まる

 幼馴染であり仇敵であり恋人である彼女が仕事で静岡に行くということで、比呂志は手伝おうとついてきた。相変わらず彼女は素直ではないようで、悪態を吐いてくる。それを軽く流しながら、比呂志は志摩に近況を話したりしていた。
「この間は、仕事でたくさん歩かされてね、大変だったんだ」
「そんなことより帰れ」
 他愛もない、いつもの会話である。
 異変に気付いたのは、彼女といつも通りの噛み合わない会話をしている時だった。突然霧が濃くなったかと思えば、いきなり彼女が拳銃を構えて空を撃ったのだ。何かに向けて発砲する彼女を訝しく思いながら、比呂志は気にしない風を装う。ヤクを常用している彼女のことだ、もしかしたら幻覚でも見たのだろう。
 しかし、再び発砲した彼女を見て比呂志はいつもと違う何かを感じる。恐る恐る尋ねてみると、どうやら何やらおかしい物がいるらしい。
「武器は持ってるのか」
 ぶっきらぼうに告げてくる彼女に、比呂志は否定の返事をする。その比呂志の様子に呆れた顔をして、志摩は比呂志に拳銃を渡した。
 自分の身は自分で守れということらしい。相変わらず素直ではないと、比呂志は笑った。
 それを不快に思ったのか、彼女に拳銃を向けられる。照れくささの裏返しだと比呂志は理解しているため、軽く受け流す。その証拠に、彼女は拳銃を向けるだけで撃ってこない。
 彼女からもらった拳銃で試し撃ちをしてみる。何かに当たったような音が聞こえた気がした。
 無駄撃ちするなという声が聞こえてくる。銃弾は大事に使えということらしい。了承の意を示し、一息つこうとした時だった。何かが近づいてくる音が聞こえる。
 先ほど志摩が拳銃を撃っていたが、外れたのだろうか。それとも、仲間がいたのだろうか。影が見え、そこから姿が見える。それを見て、比呂志は絶句した。しかし、今は考えるよりも今をどう切り抜けるかが問題だった。
 志摩の顔を見る。彼女も、比呂志の顔を見ていた。考えていることは一緒なのだろう、頷いて、共に動き出して拳銃をぶっ放した。

 行く先にいる何かを追い払いながら、なんとか一息つける場所に着く。休みながら、比呂志は先ほど見たものを思い出す。ぬるぬるした体液で覆われたような、大きな口をした怪物、だろうか。この間見た動く太陽の塔のほうよりマシだと思ったが、数が多いせいか思ったより追い払うのが大変だ。
 拳銃に弾をこめながら、比呂志は志摩にこれからどうするか聞いてみる。確かこの静岡に来たのは、彼女の仕事のためだった気がしたのだ。
 彼女は少し悩んだ後、誰か人がいる場所へ合流しようか考えていることを告げる。確かに、誰か仲間がいれば安心だ。しかし、今は全力で走りながら敵をなぎ倒してきたばかりだ。もう少し休んでから、動くべきだろう。
 そういえば、家を出るときに飲み物を持ってきたことを思い出す。中身は、富士山の湧き水を使ったミネラルウォーターだ。静岡に行くから、富士山的なものでも持っていこうと思っていたのだ。
 喉の渇きを覚えていたため、ひとまず飲む。彼女にもいるか尋めてみるが、自分の物を持っていると言われてしまった。間接キスは恥ずかしいらしい。
 全くもって周りを見ていなかったが、ここはどこだろうか。周りを見ようとした時だった。
 ずるりと、何かが近づいてくる音が聞こえる。そして、その瞬間に、隣にいた彼女が捕えられた。
 次回、捕らわれた志摩を救うことができるのか! こうご期待!

 

 







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