一方通行が続いたようです
本当に、気にすることなんて無いのに。
彼は全身に傷を作った俺よりも痛そうだ。
……俺があいつらの目に付くよう動いたのは事実。
それを知ったらどんな顔をするだろうか。
嫌悪感で染まってくれればいい。このままではずるずると依存してしまう。
渦中に居るからか人間の顛末を見てきたからか、あの手のに絡まれると特に反応を示す。
重ねた結果がこのざまだ。そろそろ逃げないと今度こそ死ぬかもしれない。
それは惜しかった。
反応は見たいが嫌がることはあまりしたくないのも本音だ。自分でどうにかなることであれば尚更。
それでも、……俺のために悲しむのであれば。
ほの暗い優越感が広がる。と、同時に安堵。
そうやって心を砕くから調子に乗るんだ。
いっそ、もう少し遠ければ。近くてもいい。
そうすれば簡単に切り捨てれたし、寄りかかれたのかもしれない。
不毛なたらればを捨て、左手でもう一度前髪を撫でた。どちらにしろしばらくは自重する。
視界に入る服は見慣れていて着慣れないもの。
手をかざしたらずるりと下がった。少し余っている。
「傷、どんなだって?」
「腕と足は折れてる、わき腹は内出血と打撲」
「またか、俺の骨案外脆いのかもしれんなぁ」
わざとらしくつぶやけば分かり易く嫌な顔をされた。我が身を省みないのはお気に召さない、ようだ。
口の端にピリリとひきつれた痛み。
そういえば顔も殴られていた。
血が、と慌てる彼の掌にも滲んでいる。
あれは本当に同じ色なんだろうか。
「悪ぃけどしばらく厄介になるわ」