小説 | ナノ
失楽園 -2-
俺とスコールの出会いは遡ること5年前だ。
俺たちが小学六年生のときになる。

俺の家の隣にスコールが引っ越してきたんだ。
俺達のすんでいるマンションは所謂、高級マンションであまり同じ歳の子供はいなかった。
だから、隣にきたスコールは物珍しくて俺は引っ越しの作業をしている隣の家をまじまじ見たものだ。
いや、隣の家というか共用のテラスにいるスコールをかな。
スコールはテラスの椅子に座って、眺めのいい景色なんてものには目もくれずに俯いていた。
俺はその時、スコールがなに思っていたかなんて感じ取れるわけないし、折角隣に同じ歳くらいの子が来たんだから仲良くなりたいなと思った。
だからそのままスコールに普通に話しかけて……邪険にされた。

俺とスコールの始まりはそんなもんだ。
スコールは酷い人見知りで、俺はスコールと仲良くなるのに凄い年月と努力を積み重ねた。


……なのに。

「で、でっけ〜〜!!これがスコールの家か!?」
「大声で騒ぐな。周りに迷惑だ」
「このフロアは俺とスコールの家しかないッスよ?」
「えええ!!お前らとんだ坊っちゃんだったんだな!!」

バッツはスコールの家を興味津々といった様子で見渡していた。
スコールは呆れた顔をしながら、着替えてくると自室へと行ってしまった。
俺は冷蔵庫をあけて、今日買った食材を詰めていく。
わりと沢山買ったが、俺とスコールは食べ盛りだ。この食料も今日明日分くらいだろう。
そんなことを思いながら、俺は夕飯の準備しようと制服のシャツをまくった。

「なあ、ティーダ?いつもティーダが料理してんのか?」
「うッス。スコール、料理下手だからな」

そう。スコールはさほど料理は上手くない。
レパートリーも少ないし、たぶんセンスがないんだ。
レシピから逸脱したことはしないから、凄い不味いとかはないけど……。
スコール自信が、料理するの好きじゃないみたいだというのが、俺が食事を作る理由。
俺は料理好きだし、得意だと思ってるし。

料理の代わりに、洗濯とアイロンかけはスコールがやってくれてる。
俺はアイロンかけるの面倒だなとか、別にかかってなくてもよくないかとか思っちゃうから。

そんなことをべらべらとバッツに話せば、『ふーん』と少し驚いた声でどうかしたのかと俺はバッツを振り向いた。

「お前らって同棲してるみたいだな」
「……そうッスね。それに近いかも」

いつの間にかそうなっていた。
切っ掛けはなんだっただろうか。

とにかく、長い時間をかけて俺はスコールの家に入り浸るようなった。
朝飯も夕食も、風呂もこの家で済ます。寝るのは、時たま……自宅に戻ってする。
あれ?思えばここ数年は自宅にいるよりもスコールの家にいることに方が圧倒的に多い。
俺もスコールもほぼ一人暮らしといった感じで住んでるから、お互いがばらばらになるのはどちらかの保護者が家に来るときだけだ。

「おい」
「あ、うん」

ダイニングから聞こえたスコールの声に俺は立ち上がるとバッツの横をすり抜けた。
なんとなく、バッツに好奇の目で見られてるような気がしていたたまれなかった。
俺、なんで夕飯食っていくかなんて提案してしまったんだろうか。

俺とスコールがこうして生きていることをしっているのはごく一部の人間だけだ。
一部って言っても保護者代わのアーロンと、従兄弟のクラウドと……スコールの保護者のキロスさんくらい。
皆、俺とスコールにとったら家族みたいな人であって、だからバッツみたいに友達といったような家の外の人に知られたのは初めてだった。

俺達って変なのかな?
そんな風にちらりと思って、ダイニングを出る前に視線を背後に戻ればバッツとスコールが楽しそうだった。
だって、珍しくスコールが仏頂面じゃなかったから。

それがなんとなく、面白くなくて。
俺は駆け足で客間に逃げ込んだ。

とりあえず、制服を着替えなきゃ。
bkm
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