小説 | ナノ
ホップ・ステップ・ジャンプ@
『あの……ごめん。今の関係が一番いいんだ。そんな目で見れない。
だから……ずっと友達でいてよ』

馬鹿いうな。
そんなん無理だろ。


俺はスコールの青い目を見ながら、ふいに中学生のときに言われた言葉を思い出した。
クラスでメチャクチャ仲の良かった子を好きになって、もはや親友に近いレベルで。
そんな子を俺は好きになったけど、その子にとっては俺は完全にお友達で。

要するに告白して振られたんだ。しかもずっと『お友達』の今の関係を持続することを望まれた。
そんなのは無理だ。
好きな子で、永遠に報われない不毛を味わうなんてさ。
ていうか、その子には別に好きなやつがいたらしくて。
俺はようするに、いつかその子が振り向いてくれるのを傍で待ち続けるか、見切りをつけて離れるかの二択だったわけだ。

俺は当然、後者を選んだよ。
俺に振り向いてくれる可能性なんてわからなかったし、それを選んで隣に居続けるのは凄い我慢が必要だし、その子のことを嫌いになってしまいそうだったから。
告白したんだから意識してくれるかなと思わなくもないけど、その子は俺にそんなことを求めてるわけじゃないだろうし、そんな気配を見せたら怖がられていなくなられる。

要するに、俺はもう離れるしかなかったんだ。
彼女がいくら今の関係を望んでいようが、そんなのはもう無理なんだ。

好きな子のそばで、しかも思いを伝えた後も何も望まず変わらずに一緒にいるなんて拷問だよ。


そんな風に思った中学時代の苦い思い出を思い出した俺は、ようやくスコールが俺に言った言葉を理解した。

「……驚いたか?」
「……うん」
「だが……本当なんだ。俺は……ずっとお前が好きだった」
「……うん」

ことの発端は、俺の一言だった。
俺がスコールに『なんでスコールは彼女作らないんだ?』と聞いたことだった。

隣にいるスコールは凄いイケメンで優等生で、スポーツ万能で、だけど若干コミュニケーション下手という奴だ。
けど優しいには違いないから、すっげーモテる。
俺も女の子達から仲を取り持って欲しいとか、遊びに行くのに誘ってとかそういう話をよく持ちかけられるし。

俺は中学生の苦い経験から、今はなんとなく女の子よりも男の友情って言う気分で。
それなりに女の子と付き合いもしたけど、どれも長くは続かなかった。
ていうか、男の友情ってスコールとの友情なんだけどさ。

一年のときに同じクラスになって、なんとなくクラスから一人浮いてたスコールが気になって、話しかけてみればいい奴で。
コミュニケーションが下手な可愛い奴だと俺はスコールにしつこく構った。
スコールも最初は戸惑ってたし、撥ね付けられたけど、次第に慣れてきたのか一緒にいるのが当たり前になった。

お互いの家に行き来したり、放課後遊んだり、休日だってしょっちゅう遊びに行った。
俺の携帯の履歴はスコールでいっぱいで、携帯のメールボックスだってスコールっていうフォルダがあるくらいだ。

高校で見つけた、きっと生涯の大親友。
俺がつけたスコールとの関係性はそれだ。

照れくさいから、お前は俺の一番の親友だ!……なんていったことないけど、いつか伝えたいなと思ってた。

とにかくそんないい奴だから、俺は彼女がいてもおかしくないと思ったんだ。
彼女になりたいって望んでる女の子も多いんだしさ。
正直選り取りみどり。

なのに俺はずっとスコールと一緒にいるけど、そんな女の影を感じない。
スコールも俺と同じで、今は男の友情ってやつかなと俺達やっぱり気が合うのかなとそんな楽な気構えで、好奇心で聞いたのだ。

そしたら……『好きな奴がいる』っていうから、『誰?』って聞いて、『…………お前だ』と答えられた。

スコールの顔は赤かったし。
スコールだって冗談は言うけど、こんな冗談をいう奴じゃないのはスコールの大親友と自負する俺にはわかったし。
ていうか、大親友と自負する俺だからこそ、スコールが俺のことをマジで好きなのだということが分かったのかもしれない。

その事実に、俺は俺達の友情というものがひび割れて崩れていくのを感じ取った。
スコールは溜息に近い息を吐きながら、『ティーダが好きなんだ』と言う。

心に溜め込んで溜め込んで、でもちょっとしたきっかけで溢れちゃいましたというスコールの様子に、俺は昔の自分を思い出したんだ。
俺も、好きな子に『誰か好きな人いる?』って聞かれて『お前だよ』って言っちゃったんだっけ。

そんな風に思いながら、俺はスコールになんて言えばいいのか考える。
俺……スコールのことそんな目で見たことなかった。
男同士だし、好きになるとか考えたこともなくて純粋に男同士の友情ってのだった。

けど、今日これで俺達の友情は終わったのだ。
もうこうなったら元に戻れないっていうのは俺が良く知っていることだろ?

スコールは俺が好きで、でも俺がスコールの気持ちを受け取らなきゃ、スコールは俺の前からいなくなるんだ。
だって、ほら、辛いから。
でもさ。離れるのだって……辛いんだ。

俺の失恋の痛手は、正直高校で仲良くなったスコールに癒してもらったようなもんだし。
だから俺は今、スコールとの友情が第一だったんだし。

でもそれもなくなってしまうのか。
俺がスコールを受け入れない限り。

うけ……受け入れられんのか?俺?
男なんて考えたこともないぞ?

けど俺はスコールと一緒にいるときの楽しさがなくなるのがすげー嫌だと思ってる。
俺が告白したあの子も、きっとこんな気持ちだったんだろうな。

けど、無理だ無理。
ずっと友達でいてくれよなんて残酷なこと、大事な親友のスコールにはいえない。
そんな酷いことしたくない。

だから俺は関係を進めるか、終わらせるかのどちらかしか選べない。


「……困らせて悪い……けど……本気だ」
「……うん」
「返事は……急がせないけど、欲しい」
「……うん」
「今日は、俺はもう帰るから……」
「ええ!?帰るんスか!?」

今日は親父が遠征でいないし、週末だしということでスコールと夜通しのゲーム大会のつもりだった。
そのためにスコールだって着替えこみの荷物持ってきてたんだし。
俺だって……楽しみにしてたけど……。

俺がそう言ったら、スコールはちょっと困った顔して、首を振った。

「……帰る。今の俺は……今までどおりにお前に接せられる自信がない」

その言葉がすごいリアリティを感じさせた。
こうして人は離れていくんだろうな。
きっと俺が告白したあの子も今の俺と同じような寂しさを感じたはずだ。

ああ、ちょっと、ちょっと待ってくれよスコール。
俺を置いてかないでくれ。
俺はお前といるのがすっげー好きなのにさ。

くそ。
友情と愛情の違いってなんだよ。

友愛と恋愛の違いってなんだよ。
わけわかんないよ。頭がぐるぐるする。

「じゃあ……また来週、学校でな」

来週って、学校であってもスコールは俺に普通に話しかけてくれんの?
今までみたいに一緒に昼飯食えんの?
放課後遊べんの?
メールとか電話してくれんの?
一緒にいてくれんの?

そんな保証、もう……どこにもないんだろ!?


「い、行くな!!」

俺はそう言うとスコールの腕をがしりと掴んだ。
スコールは驚いた顔をしたけど、困った子供を見るような目をして俺を見てる。

いや分かってるよスコール。
スコールが困ってんのは男の生理現象についてだろ?
思いを伝えちゃった好きな子と一緒にいたら、そりゃ……下半身事情が辛いのは察しがつくよ。
だから俺をそんな風に何にも知らない生娘みたいな扱いはやめてくれよ。

「……行くなよ。泊まっていけって」
「その言葉の意味分かって言ってるのか?」
「えーと……分かってるよ。でも俺……スコールと一緒にいられなくなるのはいやだ。これきりとか、嫌だ」
「……ティーダ」
「分かってるって!でも……俺にチャンスをくれよ!!」

そうだ。
俺はチャンスが欲しい。
スコールと一緒にい続けられる、チャンスが欲しい。

「チャンス……?」
「俺、スコールの子とそんな目で見たことなかったけど……頑張るからさ。
だから、スコールは俺にガンガンアタックして、俺をスコールに惚れさせてくれよ。
俺もスコールのこと、そういう風に好きになれば問題ないだろ!?」

スコールと一緒にいられないなんて絶対に嫌だ。
だったら、俺もそう言う意味でスコール好きになればいいじゃん。

「……それって俺にとってのチャンスじゃないか?」
「ど、どっちでもいいッスよ。頼むから、俺のこと惚れさせてくれッス」
「凄い答えだな」

そう言ったスコールの顔が俺の目の前にあって、俺は思わず『うわっ』と心中で叫んでぐっと目を瞑った。
こんなときに目を瞑ったらどうなるかぐらい想像つく。
案の定、ぐいっと肩を寄せられて、顎をとられて……唇に柔らかいものが押し付けられた。

ひぇーーーー!なんちゅー自然な流れ!!
さらっとやっちまうなんてスコール!流石すぎるッス!

「……ん……」

入り込んでくる舌は、最初はゆっくりだったけど次第に荒くなって、スコールがメチャクチャ興奮してるのが分かる。
いや、俺も久しぶりのこの感触の相手がスコールとかいう状況になんか凄い興奮してる。

うおおお……!
ていうか、下半身がやばいかも。
キスだけで下半身やばいってどういうことだ。

「……あ……」

ようやく話された唇に、俺は喘ぐように酸素を求めた。
苦しくて息をしたくて、思わず目も開けてしまったら、凄い顔の近くにスコールがいて……。

「……好きだティーダ……」

苦しげに、もう押さえきれないって言うような風に俺にそう訴えるスコールに、俺はもう陥落した。
ああ、うん。
スコール……俺もスコール、好きだよ。

だって良く考えたらさ、世界で一人誰を選ぶって言われたら……俺はスコールを選ぶからさ。


それってもう、友愛とか恋愛とか関係なく無償の愛だろ?

だから、もう……色々きっとオッケーです。

「なあスコール……突然で悪いんスけど……」
「なんだ?」
「……いま、スコールとめっちゃヤりたいッス……」


そうして俺達の関係性は、その日のうちにホップ・ステップ・ジャンプした。


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続き書きたい。スコール視点でいちゃらぶしたやつ。
bkm
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