小説 | ナノ
10が女の子だったらA
※10が先天的に女の子の話。810気味。

「今日はどこ行くー?」
「天気がいいから次元城だろ!」
「……高いところだけどいいのか?」
「うぇ!端っこに行かなきゃ平気なんだよ!」

そう言ってぞろぞろと連れ立つ三人組。
その姿を見つけて、ティーダはにいっと笑った。

そろりと後ろから近づき、一気にスタートダッシュを決める。
そうすればほら、気がついて振り返ってももう遅い。

「どーーーーーん!!」
「なっ……!」

反動でよろけたが、スコールはしっかりとティーダを抱きとめた。
見っともなく後ろにひっくり返らなくて良かったと思いながら、急いで腹にしがみついているティーダを引っぺがす。

「離れろ!」
「あはははは!」

素直に離れたティーダに、スコールは溜息をつく。
正直、この突撃には毎度慣れない。
ティーダの足が速くて、気配に気づいたときにはもう遅いのだ。
隣でジタンが『スコールずりぃ……』とか言っているが、それは黙殺した。
スコール自身は、こんな役回りは御免被りたいと常々思っている。

けれどなぜかティーダが飛びつくのはクラウド、スコールのどちらかだ。
ティーダのほかにメンバーは9人もいるのに、飛びつかれるのはその中の二人だけ。
いったいどういう基準で選んでいるのか……。

「いいなあスコール。ティーダ!俺にも飛びついてくれよ!」

そう言って両手を広げるバッツの頭を、ジタンとスコールで問答無用にはたく。
ティーダはきょとんとした顔をしていてバッツが言った本当の意味は分からなかったようだ。

「でも、ティーダってスコールとクラウドにしか飛びつかないよな。なんでだ?」
「鎧着てないからッスよ。鎧着てるセシルとかは失敗するとぶつけて怪我するからさー」


ジタンの疑問にティーダはけろりとした顔で、あっさりと色気のない回答を口にする。
そんな理由かと、スコールはほんの少しだけ悲しくなったが、それを聞いたジタンは納得いかないと言い出す。

「じゃあ俺も入るだろ?俺よりクラウドのほうが肩当てとか痛そうなものつけてんじゃないか!」
「いや、だってジタンに抱きついたらそのまま倒れちゃいそうじゃないっスか」
「な!見くびるなよ!絶対にティーダを受け止めてみせるぜ!!」

ジタンの主張に、ティーダは『あはは』と笑っている。まさしく本気にしていないのだろう。
まあ、ティーダの全力疾走の突撃にジタンが耐えられるかといわれれば……体格的に無理じゃないかとスコールは思った。

「そういえば、どっか行くんスか?」
「ああ。次元城で修行しようするんだよ」
「高いところだけどいいんスか?」
「端っこに行かなきゃ平気……ってスコールと同じこというなよ!」

バッツがそう言うのに、ティーダはにこにこ笑ってる。
楽しそうなその様子に、平和なもんだとスコールは思った。

「なあなあ。俺も行っていいッスか?」
「いいぜ。大歓迎さ」

ジタンのウィンクにティーダはにっと笑うと先導するように前を歩き始めた。
その歩き方は、うきうきとしているように弾んでいて、ほんのりと温かい気持ちになる。

ティーダがご機嫌な様子で歩くのを、少し離れて男三人で見つめる。
ひょこひょこと動きながら、ティーダはブリッツボールを地面に弾ませていた。

いつもはしつこいくらいに話をしてくるが、今日は相当に機嫌がいいらしい。
ティーダは機嫌がいいと一人で鼻歌を歌っていることが多い。
スコールはなにがあったのだろうかと思いながら、その様子を見ていたらどしりと隣から軽い肘鉄が来ので、そちらへと視線をやった。

隣でバッツがにやにやしながら、伺っている。
全く持って嫌な予感しかしない。

「なあ、スコール。ティーダのおっぱいってどんな感じだ?」

さらりと言われた言葉に耳を疑った。
こいつ、なんて言ったんだ。

そんな風に思ったが、反対隣からがしりと腕をとられ、どうやらジタンもこの話に乗ってくるらしいことが予想できた。
案の定、ジタンもきらきらした目をしながらスコールの返答を待っているらしい。

「……別に……どうもしない」
「どうもしないってことはないだろ?だってほら、ティーダって結構おっぱいデケーじゃん」
「ああ。ぱっと見、Dは固いだろ」

最悪だこいつ等。
何を言い出すんだ。

そんな風に思いながら、スコールは黙秘を決め込むことにした。

ティーダの胸の感触についての感想などをなぜ言わなければならないのだ。
まあ、確かに飛びつくときに腹に柔らかいものが押し付けられるのは毎度のことだが……それがどうとかこうとか言及する気はない。
思いの他、大きいのも柔らかいのも知っている。
だがそれを言ってしまったら、バッツ辺りは『確かめてくる!』とか言って走って暴挙に出そうだ。
ジタンは『お前ばっかりずるい!』とか血の涙を流しだしそうだ。

だから、ティーダの胸の柔らかさとか心地よさとかは黙っているべきなのだ。

「おーい。むっつりスコール。なんか言えよー」
「そうだぞこのむっつりー」

………いくら謗られようが俺は口を開かない。俺は壁になる。

スコールが両隣に開放されるのはティーダが振り返って『何の話してるんスか?』と太陽の笑顔を見せてくれた時だった。
まあ、それは一時の開放に過ぎなくて夜テントに戻ってからしつこく、言わされるまで絡まれるわけだが。


そして翌日、広場でバッツが倒れていたのは言うまでもない。

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暴挙に出ようとしたら、とうぜん247が黙ってない。
bkm
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