小説 | ナノ
10が女の子だったら@
※10が先天的に女の子の話。810気味。

「いやだ!やるッス!絶対にやるッス!!」

いやだいやだと暴れる子供にクラウド、セシル、フリオニールは困り果てていた。
頬を膨らませて怒っているのは、フリオニールより1つ年下のティーダだ。

ティーダはセシルたちの提案を撥ね付け、ガンとして譲らないと言い張っている。
三人はいかにティーダを宥めようかと思うが、いかんせん今まで誤魔化し騙し続けてきたため、簡単にはティーダは納得しないことは分かっていた。

なにが問題になっているかというと……。

「今日は俺から見張りやるからさ、だから三人は休むッス!!」

そう。見張りだ。
今日の探索を終え、そろそろ休むか。
誰から見張りをする?

そんな会話をしていたら、ティーダが見張りに名乗りを上げた。
ティーダが見張りに名乗りを上げるのはこれが初めてではない。
けれどその度になんとか誤魔化し、うやむやにしてティーダに見張りをさせてこなかった。

させなかった理由は簡単だ。
それはティーダが女の子であるからだ。

コスモスの戦士には女の子が二人。
一人はティナ。
もう一人はティーダだ。

この二人には大きな違いがあり、ティナは魔法を得意とするがティーダは接近戦を得意とする。
性格も真逆に近く、大人しいティナに対してティーダは口調も仕草も男のようであった。
本人いわくそれは体育系だからとのことだが、セシルはそれでも一人称に『俺』はないだろうと思う。

指摘すると怒るので言わないが、どうやらティーダは男女の性別で仕切られるのが嫌らしい。
それゆえに、こうして男と同じように見張りをやりたいと主張するのだ。
ちなみに男女の性別で仕切られるの嫌いだが、適用されるのは自分だけでティナは女の子として扱うべしと思っているのだから面倒くさい。

どうしたものかとセシルは思ったが、これはもうどうにもティーダは引きそうにない。
これはもう、見張りをやらせるほかはないだろう。

「……分かった。じゃあ、誰かと一緒に見張りをしよう」
「なんで?いつもは一人ずつじゃないっスか」
「……男三人でテントは狭いからね」
「大丈夫ッスよ!いつも三人で寝てるんだから!」

あっけらかんとそういう少女に、ほとほと男達は困った。
男三人と、男二人に女一人じゃ体面積に違いがあるだろう。
……精神的にも。

「ほら……ティーダは細いからさ。男三人はちょっと狭いよ」
「バッツたちも男三人ッスよ」

あそこはジタンが小さいだろう。
いや、そもそも見張りがいるだろうから二人しかテント使わないだろう。

「あ、ちょ、ちょっと待てセシル!」
「なんだいフリオニール?」
「見張りを二人交代にしたら……まずくないか?」
「……なんでだ?」

フリオニールの言葉に、クラウドが冷ややかな声で問い返した。
そんなクラウドの声の冷たさに気づいていないのか、フリオニールは頬を赤らめて『あー……いや、その……』とか言っている。

セシルもクラウドも、フリオニールが言いたいことは分かっていた。
見張りを二人ずつに分けるということは、テントを使うのは交代で二人ずつ。

……この中の誰かが、ティーダと二人きりでテントを使うということになる。
年頃の女の子と、若い男が狭いテントで二人きり。
過ちがあったりしたらとフリオニールは懸念しているんだろうが……セシルとクラウドは『お前、なにかする気があるのか』といいたい。

「……テントのすぐ外で見張るんだから、なにも心配いらないよフリオニール」
「お前が考えるようなことがあったら、すぐにでも真っ二つだ」
「……そ、そうだよな!」

渇いた笑いをもらすフリオニールだったが、セシルとクラウドの目は本気だった。
本気で、なにか起こったら胴体を真っ二つにする気だ。

「なんの話しッスか?」
「なんでもないよ。見張りの割り振り決めようか」

男の下半身事情など全く知らない、無邪気な生娘にはほとほと困ったものだ。
けれど、そんなところも可愛いのだとここにいる兄気取りの男連中は思っている。

いや、フリオニールは兄気取りではないのだろうが、ティーダに邪な目は許さないとばかりの保護者がいるから変な色目は使えない。
そもそもフリオニールにそんな勇気も気概もないのだけれど。

「俺が一人でやるッス!!」
「……ティーダ」
「やるッス!一人で出来るッス!!」

地団太踏んで、そういうティーダに三人は何回目か分からない溜息をついた。
ティーダは突拍子もないことも、無茶なことを言いだす子ではあるが、それは本心ゆえに仕方のないことだ。
それはいけないと嗜めれば、しっかりと反省するし納得もする聞き分けのいい子でもある。

それゆえに……今日のティーダがこれほど粘る理由が分からない。
男女で分けられるのが嫌いだとしても、人が困るくらいにごねることはしないのに。

「ティーダ。今日に限ってなんでそんなにこだわるんだい?」
「……だって、俺ばっかり休んでるっス。俺、皆にももっと休んでほしいんスよ!俺がいままで楽させてもらった分だけ、三人にも楽してもらいたい!」

そう言って力説する子は、ああ、もう。
なんて可愛らしいんだろうか。

そんな風にほのぼのと年下の女の子を愛でるが、現実は差し迫っている。
ティーダの目は本気だ。
これはもう、梃子でも動かない気なのだろう。

「つーわけで!三人はテントに入った入った!」
「え。ちょ……ティーダ!」
「はいはい。ご一行様、お部屋にごあんな〜い!」

そんな風に言いながら、ぐいぐいと背中を押されてテントに押し込められた。
なかばもう、諦めなければならないだろうなとは分かっていたから、もはや三人とも抵抗する気は無かった。


「んじゃ!ゆっくり休んでくれっス!」

全開の笑顔でそう言われて、逆らえるわけがない。

「わかった。じゃあ、後で交代するよ」
「その時はティーダが一人でのびのびとテントを使えばいい」

クラウドの言葉に、ティーダは『ええ!?』と言ったが、『それが見張りをやる条件だ』と言われては黙るしかない。

「……分かったッス。じゃあ、ながーく休んでくれな?」

ティーダはそう言うと、手を振って火のほうへと近づいていった。
その姿を見送ってから、セシルはテントの布を下ろした。
ティーダの優しさに甘えて、今日はゆっくりと休ませて貰おう。




………まあ、そんなことができないのは分かりきっていたことであったが。

(……二人とも寝たかい?)
(……いや、まだ起きている)
(……というか、眠れない……)

三人とも装備を解いて、横にはなっているのだが……眠れない。
外が気になって気になって眠れない。ティーダがちゃんと無事かどうかが気になって気になって仕方がないのだ。

(……ティーダには悪いけど……これはかえって休めないね)
(誰か一人、中で見張りを立てればよかったな)
(でも、もうそろそろ交代の時間じゃないか?)

全く寝ていない状態に、三人は溜息をついた。
気づけばあっという間に時間は経っていて、もうすぐ朝方近くになるだろう。
そろそろティーダと交代し、ティーダにも休んでもらわなければ。

そう思って、セシルはごろりと寝返りを打ったとき、ぼそぼそと聞こえた話し声に『ん?』と思った。
耳を澄ませれば、どうやらティーダが誰かと話をしているらしい。

(……ねえ、ティーダが誰かと喋っているみたいなんだけど……)
(……誰と?)
(……ん?どうかしたのか?)

入り口からセシル、クラウド、フリオニールと並んでいるため、どうやらクラウドとフリオニールには聞こえていないらしい。
セシルはごそりと起き上がると、そっとテントの入り口の布を捲った。
朝焼けにはまだ遠い、夜空の下で……とても可愛がっている少女が………。

「スコール……」

そう。同じ歳の青年と仲良く隣り合って座りながら談笑している。

「す、スコール?なんでこんな所に?」

フリオニールの疑問は尤もだ。
スコールはバッツとジタンと行動しているはず。
なんでここにいて、そしてティーダと二人きりでいるのか。

「あの壁男……ティーダと二人きりで何をしていたんだ……」

ギリリという歯の音がして、セシルが振り返ればもはやバスターソードを装備した状態のクラウドがいた。
斬りかかる気なのか。テントが壊れるなと思いながら、セシルは再びテントの外にいる二人へと視線を戻した。

二人の距離は僅かに10センチというほどで、横に置いている手なんてもう触れ合ってもおかしくないほど近い。
けど、ぱっと見て何もなさそうだけど……まるで隠れて逢引されたかのようなそのシーンに、セシルは不快感があった。

さてどうするかと思いながら見つめていたら、ふいにスコールが振り返った。
ばちりと目が合ったが、スコールはなんの動揺も見せないでいつも通りの様子だったので、本当になにもやましいことがないのだとセシルは理解した。
クラウドは認めないかもしれないけど。

「やあ、スコール」
「あ、セシルおはようッス…」
「おはようティーダ」

ティーダの眠気眼での挨拶に、セシルはくすりと笑った。
やはり眠いらしい。昨日だって戦闘がなかったわけじゃない。
それなりに疲れていたはずだ。

セシルが出たことで、クラウドもフリオニールもテントからはいでた。
クラウドはばっちりとバスターソードを手にしていたが、それを自分に向けられるとは思っていないスコールは特に変わった様子はない。
なにもやましいことはしてないのだろうから、当然といえば当然か。

「スコール、どうしてここにいるんだ?」

突き放すような冷めた声のクラウドに、スコールは僅かに眉を寄せた。

「戦闘中に、バッツたちとはぐれた」
「そんで休める場所を探してたら、上のほうから焚き火が見えたからこっちに来たらしいっス」
「……はぐれたとはお前らしくないな」

底冷えするようなクラウドの声に、なぜかスコールではなくフリオニールが固まっていた。
恐らく、自分が言われたら堪らないとでも思っているのだろう。

スコールはクラウドの刺々しい言葉に、しきりに疑問符を浮かべているようだ。
たいがい彼も、鈍感だ。

「それは大変だったね。いつくらいからここにいたの?」
「だいぶ前だ。数時間は経っているだろう」
「へえ。声を掛けてくれればよかったのに」
「眠っているところを邪魔するのは………」

スコールはセシルにそこまで言って言葉を止めた。
先を言わず、黙り込んだスコールはちらりとクラウドを見た。
どうやら、クラウドがなんでこんなに刺々しい態度なのかを理解したらしい。

「そうだ!皆ちゃんと休めたっスか?」

ティーダのキラキラとした目に気おされたわけではない。
どう考えても答えは一つしかない。

「うん。ティーダのお陰でゆっくり休めたよ」
「ああ。助かった」
「ありがとうな」

セシルたちの礼に、ティーダは嬉しそうに笑っている。
その笑顔のためなら、徹夜くらい気合で誤魔化してみせる。

その馬鹿な男達の心と体調を感じ取ったのか、スコールはぐにゃりと顔を顰めてからひっそりと溜息をついていた。
ひっそりといってもティーダにばれてないだけで、セシル達にはバレバレなわけだったのだが。

「じゃあ、交代ッスか?」
「うん。ティーダも休んできなよ」
「分かったッス!じゃあスコール行こうぜ!」

そう言って、ぐいっとスコールの手を引っ張りティーダは立ち上がった。
その行動と発言に驚いたのはティーダを覗く全ての人間だ。

対象である、スコールさえもが驚きを隠せていなかった。

「ちょ、ちょっと待てティーダ!何を言ってるんだ!!」
「フリオ、どーかしたっスか?」
「どうかって……す、スコールと一緒に寝るつもりか!?」
「だって、スコールだって疲れてるから休まないと駄目じゃないッスか」

怖いもの知らずのお嬢さん。
どんな育ち方をしたらこんな風になるのだろうか。
女性の恥じらいとか、危機感とかいうものがまるでない様子に、セシルは頭を抱えたくなる。
かといって、この無垢さを性教育というもので汚してしまうのも……どうにも気が引けるのだ。

「おい。俺は別にいい」
「何言ってるんスかスコール!はぐれてからずっと一人で戦闘してきたんだろ!?休まなきゃ駄目ッス!」
「お、おい!待て!」

ぐいぐいと引っ張るティーダにスコールは戸惑うが、ぎろりと感じた殺気に振り返った。
当然だが、振り返った先にはクラウドが立っている。
その目の鋭さに、スコールは僅かながらに圧倒された。

「……ティーダの好意を無駄にする気か」

言葉ではそう言っているくせに、間逆の殺気を放ち続けるクラウドに、スコールは苛りとする。
『どっちが本心なんだよ』と言いたいが、ややこしいことになるのは目に見えている。

もう面倒くさい。
疲れているのも事実なのだから、腹をくくって休ませて貰おう。
何か起す気だって自分にはないのだから。

「早く寝るッスよー」

そう言いながら、寝床の支度をするティーダを見て、スコールはこの少女は罪深い生き物だと思った。
それだけは、セシルたちもスコールと同意見であった。


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810で10は女体。
10は無敵な女の子だと思います。黙ってても周りが守ってくれるよ!
本人の知らないところでね!

bkm
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