小説 | ナノ
Life3
※ACC後の7の世界に10が来ちゃう話。

「大丈夫ッスよすぐそこだし」
「そういう油断は駄目だ」
「クラウドは心配しすぎッスよ!!」


そう言う少年と、その少年を拾ってきた青年の言い争いを見ながら私はため息をついた。
またやってる。

そんな心境だ。

ある日クラウドが拾ってきた少年は見たことあるようなないような……そんな子だった。
その子をクラウドは『家におきたい』と自分で言い出したため驚いた。
今までも孤児の子を成り行きで保護したりが全てリーブに頼んでしまっていた。
居着いたのはデンゼルだけ。それは大勢いても十分に面倒を見れないと分かってるからだ。
クラウドもそれは分かっているから、子供をさらに家におこうなどとは言わなかったのだけど……。
でも、連れてきたティーダは17歳とのことで身の回りのことはかなりできた。
掃除、洗濯、料理も人並み以上であっという間に家には欠かせない存在になった。
私は夜になれば店があるから、満足にマリンやデンゼルを構えない。
クラウドだって外に仕事に行ってしまうし、そもそもクラウドは家事が下手だし。
つまりマリンとデンゼルには温かい食事などがなかなか出せないのだ。
店に連れてくこともできるけど、酒場だし。あまり遅くまで居させたくない。
やはり片手間になるのだ。

だから、ティーダがいるととても助かる。
マリンとデンゼルに食事を作ってくれるし、家に男がいれば防犯になるし。
私も家に戻れば温かい夜食が用意されてるし。

幸いにもティーダは明るくて人好きする少年だった。
マリンも、デンゼルもあっという間に懐いたし、近所の人にも上々だ。

全く、クラウドはいい子を拾ってきたものだと思うけれど……。

「とにかく、夜に出歩くな」
「え〜!」


でもクラウドは私と評価は同じじゃないらしい。
私はティーダを人以上にものができる子だと思ってるけど……どうやらクラウドはティーダをマリンとデンゼルと同じような目で見てるらしい。

日課の夜の散歩を楽しんで帰ってきたティーダは、それをクラウドに見咎められたのだ。
それくらいいいじゃない。
私もそう言ったけど、クラウドは子供に夜は危ないから駄目だと言って譲らない。

ティーダは滅法クラウドに弱いのか、しょんぼりとしながら反論している。
でもそれも悉く、クラウドにはね除けられる。

「クラウド、ティーダは17よ?そんなに口うるさく言わなくても……」
「そうッスよ!こう見えて結構強いの、クラウドは知ってるだろ?」


私の助け船にのったティーダの言葉にちょっと驚いた。
ティーダが自分のことを話すのが珍しかったからだ

ティーダは謎な子だった。
クラウドのことをよく分かっているみたいだったけど、どこで知り合ったのかは私は知らない。
クラウドは私に、『訳があって俺しか知らないんだ』とそう言った。
なにを言っているのかその時は分からなかったが、ティーダは確かに無知だった。
ここ世界の固有名詞を悉く知らなかった。
一般教養と一般常識はあったが、新羅カンパニーを知らないのには驚いた。
そして、あの年齢でメテオ災害も星痕症候群も知らなかった。

デンゼルが『記憶喪失?』と聞いたことがあったが、ティーダは少しだけ寂しそうに笑っただけだった。

だから私たちは暮らして分かることしかティーダのことを知らない。
なんとも不思議な剣を持っているのは知っていたけど、剣が使えるかどうかは知らなかった。

「……お前が強いのは知っているが……ここ世界は治安がまだよくない。夜は駄目だ。……心配すぎる」
「……了解ッス……」
「そんな顔するな。俺がいるときは付き合ってやるから」
「うッス」


そう言って笑ったティーダにつられてか、クラウドも僅かに口角を上げた。
クラウドはティーダが来てから落ち着いたと思う。
そしてよく笑うようになった。

その笑顔は僅かなものだったけど、それでもクラウドの笑みは珍しすぎるものだったから。
それをあっさり引き出すティーダは凄いと純粋に思う。

あの二人の間に何があるのか、私は知らない。
知己のように振る舞っているが、クラウドもティーダも話さない。

でも、笑うクラウドを見ればそんなものはどうでもいい気になる。

あれだけたくさんの大変な目にあったんだもの。
辛いことあったんだもの。

こうしてただ笑うための存在があってもいいじゃない。

きっとティーダはクラウドを笑わせるためにここに来たんだわ。
bkm
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