小説 | ナノ
スコ育2
※8の世界に10がきちゃう話。

スコールに案内されながら辿りついたのは、外壁が石で出来た海辺の家だった。
ははあ。これがスコールの育ったって言う孤児院だなと思ったが、そんな考えはすぐに霧散した。

なにしろ、その家の前には腰に手を当てて怒りの形相をしていた『ママ先生』とやらがいたからだ。
スコールという名の子供……ていうかスコールだよなこれ。うん。いろいろ間違いなさそうだし。
スコールはさっと俺の影に隠れたが、『ママ先生に』引っ張り出されると『どこ行っていたの!心配したでしょう!』と怒られていた。

スコールいわく、熱を出して寝ているお姉ちゃんとやらのお見舞いにお花を取りに行ったとのことだったけど……。
花が崖の上に咲いていたから登ったら落ちて怪我して魔物に襲われて俺に助けられたとのことだった。

その説明をするのに、ぐっしゃぐっしゃに泣いていて、しかも子供だから要領がえなくて、
正直俺はスコールが何を言ってるのかちんぷんかんぷんだった。

俺も小さい頃ってこんな風だったのかなと思い起こすと、なんとなく悲しくなるので考えないようにした。
いやだってほら。俺が一生懸命話してるのに親父が『何言ってんだおめー』とか言っていたような気がするから……。

けどそこはさすがに『ママ先生』なのか、スコールの要領の得ない話でも事情は分かったらしく、
俺に『助けてくれてありがとう』と朗らかにお礼を言ってくれた。

いやあ、『ママ先生』美人だな。
スコール羨ましい。

そんな風に思いながらも、俺はもう夜も遅いからと家に招きいれられた。
さすが孤児院という場所だからか、子供がわんさかいるよ。

でもどの子も親なしなんだよな。
俺もそうだけどさ。
親父は俺が倒しちゃったんだし……母親は随分と前に死んでるし。
そう思うとなんとくここにいる子供達がかわいそうに思える。
こんなにちっさいのにさー……。

「ねえ」
「ん?」

掛けられた声に振り返れば、金髪の男の子が俺を見上げてた。
いや、俺をって言うか……肩に担ぎ上げてるフラタニティをだ。

「ねえ!それって本物の剣!?」
「え?あー……そうっすよ?」
「触らして!!」

男の子はそう言うとぴょんと飛び上がりながらフラタニティに手を伸ばしてくる。
ちょ、ちょっとまった!本物だっつーの!!

「いやいや!危ないから駄目だっつーの!!」
「さーわーらーしーてー!!」

わあわあと言いながら手を伸ばす子供から、少しでもフラタニティを遠ざけようと俺は手を上げるが、足にしがみついてきて体勢を崩しそうだ。
子供の無邪気って超怖い!!

「だめよサイファー!お兄さん、困ってるじゃない!」
「なんだよキスティス!じゃまするなよー!」
「だめったらだめ!ママ先生に言いつけるわよ!」

これまた金髪の女の子が助け舟を出してくれて、俺はなんとか難を逃れた。
しかしこのままフラタニティをもってるのは非常に危険だということが分かった。
子供の好奇心は半端ない。俺は慌ててその場を離れたが、このフラタニティをどうすればいいんだ……。

そう思いながら、孤児院の廊下に出れば大きな鏡があってフラタニティを片手にしている俺が映る。
今の自分の様相を始めて確認して、知っていたことだけど俺は驚きを隠せなかった。

えーっと……12、3の頃と思われる俺がいる。
12、3の俺にはどうみてもフラタニティはでかくて、片手剣が大剣の様だと乾いた笑いがこぼれる。
クラウドみたいに大剣を片手で振り回せるようになれるとは……やったッスーと喜びたいが喜べない。

俺、ここでどうしたらいいんだろう。

「……お兄ちゃん?」
「お。スコール」

扉から半分顔を出して俺を伺っているスコールの可愛らしさに、俺は思わず苦笑いしてしまう。
ああーていうか、スコールに『お兄ちゃん』とか言われるとは夢にも思わなかった。

いやほらだって、スコールって言ったらむっすり顔っスよ?
それがこんなに小さくなっちゃって……大きい目で俺を見上げながら『お兄ちゃん』とか反則っしょ?

「スコール、お姉ちゃんにお花渡して来たんスか?」
「うん。渡してきた。ねえねえ、お兄ちゃんは明日はもう帰っちゃうの?」
「え……?うーん……と」

明日帰れるかといわれたら、分からない。
そもそもこの世界のことだって知らないし、俺ってそもそもどこに帰る生き物なんだって言うのもあるし。

「俺、帰る場所ないんスよねー……」

困ったなあと頭をかけば、スコールはきょとんとした顔をしていたが……途端にぱっと笑った。
うわああああ……!!スコールの全開笑顔とか半端ない破壊力ッス!!
畜生!スコールこの可愛らしさを失わずに大きくなれよ!!

「じゃあじゃあ、僕がママ先生に頼んできてあげる!」
「え?なにをッスか?」
「お兄ちゃんもここに住めばいいよ!」

スコールはそう言うと、一目散に走っていってしまった。
いやいやいや。それはそうなったらありがたいことだけど……ちょっとスコール君、落ち着こうな?

「ちょ、スコール待つッス!!」

確かに俺も孤児だけど、そんな簡単な話じゃないだろう。
俺は慌ててスコールを追いかけようとしたが、部屋から飛び出してきた金髪の男の子、確か名前はサイファーに纏わりつかれてそれは叶わなかった。

相変わらず剣を触りたがるサイファーに、それを必死に止めようと騒ぐキスティス。

おおおおおい!
まじで、まじで子供って難しい生き物だ!!

俺もやっぱり、小さい頃ってこんなだったのか?
そうだっていうなら……親父……じゃないな、アーロン。

苦労かけて悪かったッス……!!


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8in10の話。
子供の頃のスコールがよくわからない。
お姉ちゃんとママ先生大好きっこなのは分かってるんだけどさ。
bkm
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