※8の世界に10がきちゃう話。
気がつけば、見覚えのない場所だった。
風に潮の匂いが混ざっているから海が近くにあるのは分かったが、如何せん周りが暗すぎるために分からない。
暗すぎるといっても、空を見上げれば星空が広がっている。
三日月の明るさは周りを静かに照らしてくれていて……ここがどこか知らない場所ということを教えてくれていた。
海の匂いが、ザナルカンドともスピラとも違う。
それだけは分かって、今度は俺はどこに来ちゃったんだと溜息をついた。
スピラの次は、神の戦いが続く世界だった。
そこからまた、俺は自分だけの海へと還ったはずなのに……気づけばまた知らないところだ。
慣れっこといわれればそれまでだが、こう見えて腹も空くし、眠る必要だってあるのだ。
ていうか、今は誰が俺のことを夢見てくれているんだろうか?
コスモスの戦士として戦っていたときも思ったことだが……考えても分からないことだからどうでもいいか。
消えてしまうかもしれないという曖昧さは怖いが、普通の人間だっていつ事故るかわかんないし、病気でぽっくり行っちゃうかも分からない。
ぐじぐじ考えるな。
今、生きて存在することを喜べ!!
そんな風にはあと溜息をついて、目の前に落ちているフラタニティを拾い上げた。
その途端、がつりと剣先が地面に辺り『ん?』と思った。
いつもなら普通に持っても地面に当たることなんてないのに……なんかフラタニティってば長くない?
そんな風に思いながらマジマジとフラタニティを見たが……あれ?
なんかフラタニティを持つ俺の手がそもそも小さくない?
「あ!!な、なんでだよ!?」
俺ははっと気がついた。
俺の目線、だいぶ低いぞ!!
慌てて自分の手足、体を見るが………なんてこった!
俺の体が縮んでやがる!!
「え?え?ま、まじッスか……!?」
鏡を見たわけじゃないから、幾つくらいかは分からないがどう考えても17歳じゃない。
こんなことってありえるのかと体がぶるりと震えたけど、そんな俺の疑問に答えてくれる人はどこにもいない。
俺は再度、溜息をつくと投げ出していたフラタニティを拾い上げた。
フラタニティはいつも通りの重さで、そのことが酷く違和感を覚えた。
ぶんぶんと振ってみるが、重さはいつも通りで別段苦ではない。
ただ、長くて使い難いってくらいだ。
うーん……。
「………ぁーーん」
その時、子供の甲高い泣き声が聞こえてきて、俺は顔を上げた。
なんだろうというか、人がいるという事実に俺は感動して声が聞こえたほうに走り出した。
子供でも何でもいいです!!
ここがどこだか教えてください!!
そんな気持ちで真っ暗の中を走り出して……泣き声をあげてる子供を見つけたときに口から心臓が出るかと思った。
いやだって、子供が獣の姿をした魔物に取り囲まれていたから。
おおおおおおおい!!
なんて状況ッスか!!
俺はぐっと体勢を低くすると、足に力を込めて地面を蹴った。
子供に襲い掛かった魔物の前に割り込むと、下からフラタニティで斬りあげた。
『ギャン!』と鳴いた魔物が地面に落ちれば、他の奴等も飛び掛ってきた。
俺はそれを子供の前から移動せずに迎え撃たねばならなくって……うあああああ!
ヤバイってば!!そう思いながらも、飛び掛ってくる奴等を、一体一体となぎ倒す。
囲まれた場合の対処方法って奴?
最小限で避けて、最小限の動きで敵を倒すっていうの?
前に鍛錬のときにセシルに教えてもらっておいて良かったッス!!
魔物の半分を倒したあたりで、残りは逃げていってしまった。
た、助かった……流石にこの戦い方はキツイ。
敵を撹乱しながら戦うのが俺のスタイルだからさ。
こうして後ろに誰かがいるっていうのは……大変だった。
誰かを守るのって難しいなと思いながらも、俺はこんな体でも普通に戦えることに僅かに驚いてた。
戦ってみたけどさ、身体能力って17歳のまんまじゃねえ?
記憶も17のまんまだし、そういうことッスか?
いや……体は縮んでんだから、筋力とかは子供適用っていうか……こっちのが便利だけどさ。
「あ。だいじょーぶか?」
「う……ぐすっ……ひっ…く……」
もやもや考えてたけど、俺は子供を助けにはいったんだった。
慌てて振り返れば、子供……男の子はボロッボロに涙流しながらへたり込んでいた。
年齢は幾つくらいだろうか?まだ随分小さい子供だけど……親御さんはどこッスか。
魔物が出るようなところに子供一人置いていくなよ……。
「怪我とかしてないッスかー?」
「うう……あ、足……」
「足?」
「……足いたい……」
『足が痛い』と訴えられたので俺が『どっち?』と聞けば子供は『こっち』と右足を示した。
なんでだか知らないけど、腫上がってしまっている右足。
どうするかと考えて、俺はケアルを使うことを選んだ。
ここがどこだか分からないし、この子の家がどこにあるかも分からない。
魔物が出る場所で背負って行くのはちょっと無謀な気がした。
子供には悪いけど、自分で歩いてくれ。
そういう考えのもと、ケアルを使ってやれば子供はびっくりしたような顔をして俺を見た。
魔法を使ったときに出る、特有の淡い光で子供の顔がはっきりと見えた。
その顔は……なんかどっかでみたことがあるような気がして、俺は『はて?』と首を傾げる。
誰かに似てる気がするけど……こんな小さい子供の知り合いはいないしなあ。
「もう痛くない?立てる?」
「………立てる」
子供は立ち上がると、ぴょんぴょんとその場でジャンプした。
そんでもって嬉しそうな顔で、俺を見上げてる。
その目がやたらにキラキラしてて……あれ?この目ってどっかで見たことあるな。
ああ、あれだあれ。
サインを求めてくる子供の目だ。
あの、憧れが溢れてる眼差しと同じなんだ。
まあ、俺ってばザナルカンドエイブスのエースだったからな!
今は別にブリッツの試合をしたわけじゃないけど……まあ、ピンチに颯爽と駆けつけた俺は中々格好いいもんだったんじゃないか?
うん。きっとそうだ。
「えーっと……お母さんはどこにいるッスか?」
視線が合うようにと、屈んで話しかけたら途端に子供の顔はへにゃりと歪んだ。
ふるふると振られる首に迷子かと肩を落とした。
迷子じゃ、どっちに行ったらいいのかわかんないじゃないか。
けどこのままこの子を放って置くわけにもいかない。
「んー……じゃあ、とにかく君のお家を探すッス!ここにいたら危ないからな!」
俺がそう言えば、子供はきょとんとした顔をしてすいっと指を右の方向へと示した。
なにかと思えば、『お家はあっち』と言う。
なんだ迷子じゃないのか。
こんなところに一人で遊びに来て、魔物に襲われたっていうやつか。
まあ、なんにせよ大人がいると思われる場所が分かってよかった。
「んじゃ、あっちに行くッスよ」
俺が手を差し出せば、子供は『うん』と言って手を握ってきた。
うーん。子供はやっぱり可愛いものッスね。
「お兄ちゃんの名前はティーダって言うッス。君のお名前はなんですかー?」
「……スコール……」
小さい声で聞こえてきた言葉に、俺はびしりと固まった。
え?なんて言った?
「……スコール?」
「うん。スコール・レオンハート」
そう言いながら、俺を見上げる子供にますます俺は固まった。
ぴたりと足を止めた俺を、不思議そうな顔でスコールと名乗った子供が見上げてる。
お、お、おおおおおおおおーーーーい!!
どういうことッスか!?
言われて見ればこの子スコールに超そっくりッスよ!!
まさか、まさか、まさかの幼児スコールとのご対面!?
俺ってもしかして、スコールの過去に来ちゃったんすか!?
助けて(時間のことなら)アルティミシアさま……!!
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7in10も書いたので、じゃあ8in10も書いちゃえと書いてみた。
スコール育成計画的に、ティーダがアーロンの立場になればいい。
ティーダが育てたらきっとスコールは……『壁にでも話してろ』的な子にはならない。
それはスコールなのか……??
まあいいや。
17歳×年上ティーダとか書きたい。