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スコ育(進撃の誕生日)4

※ティーダ22歳、スコール14歳くらいの話です。


二年前、クラスの担当教師が発表されたとき、落胆したのをスコールは今も覚えている。その年はティーダが教員免許をとって、初めて教師としてガーデンに所属した年だった。

その年のクラス割の発表時、スコールの名前は中級Bクラスにあり、ティーダの名前は上級Aクラスにあった。当然、担当教師でだ。

その事実にスコールは指を三つ折り、わずかに眉を寄せた。ティーダの担当するクラスに入るにはあと三つもステップアップしなければならない。
今いる中級Bクラスから中級Aクラスへ。
その次は中級Aクラスから上級Bクラスへ。
さらに上級Bから上級Aクラスへ。

Seed認定試験を受けられるのは十五歳以上かつ、必要な認定単位を取得したものだ。その内、ある必須の単位は上級Aクラスじゃないと受けられない講義だ。つまり、Seed認定試験を受けられるのは上級Aクラスである必要がある。

クラスをあげるためには、定期試験で一定以上の成績を残す必要がある。定期試験と言っても通常のものではなく、一年の終わりにあるクラスアップのための試験だ。

そうして去年、スコールは中級Bから中級Aにクラスをあげた。折る指は一本だけ減ったが、まだ二本ある。

けれどそれももうすぐ一本、いや。もしかしたら指を折ることもないかもしれない。

スコールはそんなことを思いながら、部屋に掛かっているカレンダーを見つめる。自分の十五歳の誕生日よりも僅かに前。七月の後半に赤いペンで丸がつけられている日にちがあった。
スコールはスケジュールはカレンダー管理しないタイプだった。だからそれはスコール以外の者が書き記していったことになる。

スコールの部屋に訪れる者なんてさほどいない。
その丸をつけていったのはティーダだ。

七月の後半の日。その日がクラスアップ試験の日だった。

スコールははぁ、と息をつくとガンブレードを撫でた。
ガンブレードはスコールが十四の時、つまり約一年前に手に入れたものだ。中級Bクラスからは戦闘に特化したカリキュラムが始まる。中級Cクラスとは違うのだ。
だから、中級Bクラスに上がったら今後自分が使っていく獲物の選定が重要になる。色々な武器を使いこなせるのはSeedとして当然ではあるが、その中でも自分にあったものを使うのがいいだろう。
スコールも中級Cクラスの時に色々な武器を試していたが・・・・・・どれもこれも使いこなせはしたが、これぞというものはなかった。
ガンブレードも練習用に用意されていたが、どうにも使い勝手が悪かった。それはその時にすでに自分よりもクラスが上だったサイファーが獲物として使っていたからと言うのもあった。
確実に、サイファーにからかわれるというか絡まれるのは分かり切っていた。だからスコールはガンブレードをどこか敬遠していた。使った回数も少なかった。

というよりもどうにも手に馴染まないのだ。
斬りつけた瞬間に自分の意志とは無関係に振動を生み出すその武器が、スコールはどうにも苦手だった。
クラスメイトたちは扱いにくいとされるガンブレードですら、平均以上に振るってみせるスコールに向いているのではと言っていたが、スコールも一般と同様にガンブレードは使いにくい武器だと思っただけだった。

「スコールはガンブレードにするといいッスよ」

けれどティーダは自らの獲物を決めかねているスコールにそう言った。
その言葉に、スコールは顔をしかめて嫌だと訴えたがティーダはやっぱり『ガンブレードが一番いい』と言った。

その時のスコールは武器を決めかねていたが、このままならきっとティーダと同じような形状の剣を使うかもしれないと考えていた。
ティーダと揃いというのはどことなく安心感があった。けれど、誰のまねでもない、思い入れのある武器というのに憧れる気持ちもあった。

それはティーダが自分の獲物であるフラタニティをとても愛しそうにみるからだったのかもしれない。大切な仲間に貰ったという武器には、スコールの知らない時間と重みがある。

スコールはティーダのことが好きだったが、ティーダはスコールよりも八歳も上で、Seedとして活躍してきた経験と時間はスコールが知ることのできないものだった。軽々しくは聞けないし、今は聞けるような立場でもないとスコールは考えている。

スコールがガンブレードを使うことにあまり好意的でないと気づいたティーダは、『じゃあ、次の休みに遠出しよう。スコールに見せたいものがあるんだ』とそう言った。

ティーダが見せたいのは武器だろうということは分かっていたし、スコール自身、少し遠出してでも愛着がもてそうな獲物を探すべきかもしれないと考えていたところだったから素直に誘いに頷いた。

ティーダが教師となってからは、休みだとしてもあまり一緒に出歩くことが少なくなっていたからスコールとしても嬉しいものだ。
ティーダに恋人がいるわけではないことは分かっていたが、教師としてのたまの休みに自分に時間を割いてくれるということが、恋人がいないということを証明しているようにスコールには感じられたのだ。

そうして遠出して街へとやって来た二人は・・・・・・いや、スコールは案内された店で運命的な出会いをする。
古びた、一世代前の武器ばかりを扱った店の・・・・・・さらに奥まった場所にそれはあった。スコールは先導するティーダの肩越しにその姿を見つけ、びりっと背筋に粟だったのを感じた。

「これこれ。これがいいと思うんスよ」

そう言ってティーダから渡されたのは、ガンブレード・・・・・・それも旧式のリボルバー式だった。
リボルバーはずっしりとした重みがあり、訓練用にガーデンで用意されているハイペリオンとは随分と違った。
知識としてリボルバー式があるとは知っていたが、現物を見たのは初めてだった。なにしろガンブレード自体が旧式なのだ。その中でもさらに旧式となればなかなかお目にかかれない。

スコールはガンブレードを握るとトリガーに指をかけた。当然、引くことはないけれどすっと手に馴染む感覚に、一瞬で『これだ』と感じた。
まだ振るったこともないけれど、これがそれだと自分の中のなにかが訴えかけていた。

「どうッスか?」
「・・・・・・いい、と思う」

振るってもいないのにいいと思うなんて早計だ。そんな風にスコールの理性的な部分がそう思うが、目の前にいたティーダは嬉しそうに笑った。
その笑顔が、赤子を慈しむ母親のように感じられてスコールは僅かに不満を感じたが、ティーダが見つけてくれたことが嬉しくて、その不満はごくりと飲み込む。

「俺、これを初めて見つけたときに『あ!スコールのガンブレードだ!』って思ったんスよ。気に入ってくれて良かったッス!」

不満を感じるのは馬鹿らしい。
なにせ自分はティーダと対等な位置にはいないのだから。不満を覚えて、それを発したいならなにがなんでももっと上に上らなければ。
この、ガンブレードと一緒に。


スコールは二年前のこと、一年前のことを思いだしてそして今を思う。
一年を掛けて、スコールはガンブレードを慣らした。リボルバーはハイペリオンと違って任意でトリガーを引く必要がある。タイミングや威力のいなし方など、全て自動で行われるハイペリオンと違った。
サイファーにも旧式かと笑われたこともあったし、クラスメイトにも酔狂と言われたがスコールはリボルバーにこだわった。
ティーダが見つけてくれたからということもあるが、大半はスコール自身が『これだ』と感じていたからだ。
手入れも手間が掛かるし、扱いも難しいけれど・・・・・・それでもリボルバーは自分の獲物だとスコールは感じていた。

次の試験は、上級Bクラスと中級Aクラス合同の実地試験だ。この実地試験は成績上位者から順に上級Aクラスに配属される。つまり、中級Aクラスだとしてもこの試験の成績が良ければ一気に上級Aクラスに所属できるのだ。

スコールとしてはどうしてもここで実力を見せたかった。
当然、成績上位者にはいり、上級Aクラスに所属したい・・・・・・というのもあるが、スコールはもっと上を見ている。

そう。早く、Seedになりたいということだ。

スコールはもうすぐ十五になる。
その歳は、ティーダがSeedとなった歳だ。

あの頃とはガーデンのカリキュラムも方針も違うとは分かっているけれど、酷く自分がぐずぐずしているようにスコールは感じるのだ。
ティーダと、対等に。そんな思いが強く渦巻く。

体と技術の成長とともに、ティーダへの思慕も劣情も成長していく。
いつまでも大人しい弟分の皮をかぶり続けるにも限界がある。

「・・・・・・早く」

スコールは一年で固くなった手のひらを目の前に翳した。

この手で、早くたくさんのものを掴みたい。




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友人の誕生日プレゼントとして書き(ry

bkm
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