小説 | ナノ
二文字の境界線1
※444Hitのリクエストで、異説の混沌ティーダ


力量さがありすぎだろう。
そう思ったのは確かだ。

ていうか、力量さというか卑怯さ?
コスモスの戦士っていうのは手段が実に少ないと思う。
罠を仕掛けたりしないし、一対一で戦おうとするし、もうちょっとずるくなればいいのに。
そんな風に思う。

カオスの連中はそれこそ手段の多い連中だ。
戦いの美意識がきっと一般とずれてるんだ。
大量虐殺もなんのその。誰が倒れようと気にしない。
手段?自分がいいと思えばそれでいいだろ?

そんな連中だ。
だから皇帝は罠大好きだし、ケフカやアルティミシアもかな。

なんでもしますよそりゃあね。

カオスは個人主義です。
それこそ千差万別。自分が納得するように、動くの大好き。
秩序なんてそれこそないよ、混沌だもん。

そんな風に思いながら、俺は見事に皇帝とケフカのトラップにダブルでかかった哀れなコスモスの戦士を見下ろした。
罠に掛かった戦士は二人連れだった。
一人は俺から見たらかなり大人な、銃をもった奴。
もう一人は俺より少し年上そうな、剣と銃が一緒になった武器をもつ奴。

俺はその二人を見下ろしながら、放っておいたら死ぬなあ、なんて思った。
この二人、最初の皇帝のトラップは避けれたけれど、二つ目のケフカの罠を銃を持ってる年長の男が避けれなかったのだ。
それを助けに入った年下の男は皇帝の罠の二発目に引っ掛かった。
あーあ。痛そうだ。

俺はそれをたまたま上から見つけてしまった。
ばたりと倒れた二人はだらだらと血を流して瀕死状態。

ていうか、皇帝の罠に掛かった男はの方が重体だ。
これはポーションひとつでどうなるものでもなさそう。

そして、俺が今持ってるポーションは二本だけ。
そしてここには怪我人が二人。
ポーションが足りない。

俺は倒れてる男らの側に寄ると、きゅぽんとポーションの蓋を抜いた。
そしてそれを幾分軽傷である、年長の男にぼたぼたとかけた。

「おーい。大丈夫ッスか?」
「……なんとか」

年長の男が頭を押さえながら、立ち上がるのを確認してから俺はもう一人の血みどろ男を肩に担いだ。

「こいつは生きてたらちゃんと返すな」
「え?て、ちょ……すすスコール!?」
「この辺、罠多いから、避けたいなら、岩場を越えろよ」


俺はそう言うと、まだ余っているポーションを男に放った。
男は唖然とした顔でそれを受けとる。

「それ、やるよ」


俺は『じゃあな』と言うと、混沌の戦士だけが使える空間転移の魔法を使った。
ぐにゃりと目の前で男が歪み、そして世界はまっくらになった。





目を覚ませば知らない天井が目に入った。
ここはどこだろうか。
そんな風に思いながら、体を起こそうとしたが目眩と吐き気がしてベッドに沈む。
なんだこれは。どうなったんだ。
そんな風に思うが、体は動かない。
よろよろと首だけでなんとか体の状態を確認すれば、包帯があちこちに巻かれていた。
それを見て思い出す。
そういえば罠に掛かったんだった。
ラグナがだ。

1つめは二人とも避けたが、2つめにラグナが掛かった。
それを助けに入ったら、……まさか3つめもあるとは。

不覚にも俺までに罠にかかって……衝撃の後からの記憶がない。
こうして呼吸をしているし、手当てをされていることを考えれば助けられたんだろう。
けれどここにラグナの姿はないし、ラグナどころか俺以外の気配はない。

ちらりと部屋を見れば……随分と豪勢な部屋だった。
まるで城のような内装に、ここはいったいどこだと眉をしかめる。
目だけで部屋を伺えば、なんとこの部屋には窓も扉もないことに気づく。

どんな場所だ。
どこから入ったんだ。

俺は慌てて出口を探そうと思ったけど、体はまだ傷があるのと、血が流れすぎたらしいことで上手く動かない。
ずきずきと痛む体と、ふらつく頭に毒づくがそんなことしても動けるようになんてなりはしない。

ああ、くそっ。
誰でもいいから、現状を説明してくれ。

そう心の中で現状を罵ったとき、がちゃりと扉が開く音がして俺は驚いた。
なにせ、部屋には扉なんてなかったのだ。
なのに、扉が開く音がして……俺は痛む体も、ふらつく頭も無視してベッドから体を起して音がしたほうを振り返った。

そこには、上半身に何も纏っていない……俺と同じ年頃に見える金髪の男がいた。
男は青い目をきょとりと丸くしてから、にかりと笑う。

「目ぇ、覚めたんだな?体はどうッスか?」

男はそう言うと、俺が横たわっていたベッドへと腰を下ろした。
ベッドサイドに置いてあった血の様に赤い林檎と、ナイフを手に取り、するすると林檎の皮を剥いていく。

その様子を唖然として見つめ、林檎の皮がすべて剥ききられてから、はっと俺は意思を取り戻した。
あまりにも自然な様子に困惑したが、ここがどこだとか、お前誰だとか聞かねばならないことは多い。

なにしろ、この男を俺は知らない。
もしかしたら新たに召喚されたコスモスの戦士かもしれない。

そう思い、俺は穏やかな顔で林檎をむく男に声を掛けようとしたが……。

「はい。林檎くらいなら食べれるだろ?ていうか、無理にでも食べろよ?血が足りてないんスから」

男はそう言うと、ぐいっと俺に林檎を一欠けら突き出した。
唇にあてられた林檎は、酷く甘い匂いがした。

僅かにひんやりとしたそれを、どうすべきかと思うけれど、男は早く食えとばかりに林檎を唇に押し付けてくる。
それに根負けしたというか、食べねば血が出来ないということも分かっていたので仕方なしに口を開く。

そうすれば、待っていましたとばかりに押し込んでくるので何とか半分だけ齧り取り、林檎を噛み砕いて咀嚼した。
口に広がった蜜の甘さと水気に、俺は水分と喉が渇いていたのだと知る。

「ほら」

そう言って、半分残っていた林檎を男はまた押し付けてくる。
それをさっさと口に入れ、飲み込めば……男は新しい欠片を作るために、皮の剥かれた林檎の一部を切り取ろうとしていた。

「おい」
「ん?なんスか?」

また林檎の欠片が生まれたら、口に押し付けられる。
そしたら聞きたいことが聞けない。

俺は今度は迷うことなく、男に声を掛けた。
男は林檎を切り取る手を止めて、俺を見た。


「ここは……どこだ?あんたは誰だ?新しいコスモスの戦士か?」

俺の言葉を聞いた男は、『ああ…』と呟くと、林檎を一欠けらまた切り取った。
そしてそれを俺の口へと押し付ける。
押し付けられるまま、仕方なくそれを口に入れれば、男は『うーん』なんて唸って、頭を掻いた。

「ここは次元城にある俺の部屋。俺の名前はティーダ。んで、混沌の戦士だ」
「なっ……!!」

言われた言葉に驚いて、口から林檎が落ちそうになった。
それを慌てて手で覆うことで防いだら、急に手を動かしたからか、ぐらりと視界が反転する。
そういえば血が足りないのだった。

そのままばたりとベッドに倒れれば、上からティーダと名乗った混沌の戦士が覗き込んできた。

「大丈夫ッスか?急に動くのは止めたほうがいいッスよ」
「……うるさい……俺をここからだせ……」
「その体で無茶言うなよ。この部屋を出たら、あっという間に他の混沌の戦士に見つかるッスよ?」

そしたら、どうなるか分かるッスよね?

男はそう言って、今度は上から林檎を押し付けてきた。
それを不快に思って、眉を顰めれば……男はおかしげに笑う。

「食わなきゃ、動けるようにならないッスよ?早くここから出たいんだろ?だったらさっさと治すッス」

実に正論だが……この男は混沌の戦士だ。
なんで俺を助けたのかも分からなければ、この林檎だって食べていいものかわからない。

「甘くて美味いッスよ。エクスデスに貰ったんだ」

男はそう言うと、持っている林檎を自分の口にも放り込んだ。
なんなんだこの男は。

たしか、ティーダとか言っていたか。

「ほら、早く食えよ。俺だっていつまでもここにあんたを隠し続けたくないんだから」

その言い草に、まるで俺がわがままを言っているみたいじゃないかと文句を言いたかったが……確かにこのまま動けないのは困る。
俺はもう全てを諦めたような、それとも罠でも生存の可能性に賭けるという気持ちなのか。

差し出される林檎に齧りついた。

「……さっさと次を寄こせ」
「了解ッス」

そう言った男の笑顔は、どうしてか酷く眩しかった。


********************************************************:
444hitのトモ様のリクエストです。
異説でカオス設定ティーダ。CPはテキトーに。
ということで、810でカオス設定ティーダ。

書いてはみたものの、何も起きてないのでもうちょい続けます。
ていうか、きっとダラダラ続けます。
お持ち帰りはトモ様はご自由に。
続いていっちゃうと思うので、続きもお好きなようにお持ち帰りください。
bkm
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