小説 | ナノ
失楽園 -3-
「そういえば、この前スコールの家で夕飯食った」
「へえ。バッツとスコールだけで遊んだりすんのか?」
「いや、たまたまスーパーであって、夕食誘われたから」


俺の部屋でジタンと新作ゲーム大会。
楽しみにしていたアクションゲームで、ジタンと気協力プレイしながらやってる。
スコールも誘ってみたけど、用があると断られた。
そのことをジタンに言ったら、『彼女でもいるんじゃないの?』と軽口が帰ってきたので俺はふむとこの前のことを思い返す。

この前とはスコールの家で夕飯を食ったときのことだ。
あの時のハンバーグは実に美味しかった。盛り付けも綺麗だったし、
サラダも特性ドレッシングでデザートに手作りのチーズケーキまであって俺は本当にびっくりしたもんだ。
あまりにビックリして、スコールに『なにかの記念日?』と聞けば、
スコールは怪訝な顔で『なんでだ?』何て言ったのでスコールにとってはこれは普通の食事かとますます驚いた。
ていうか、あのクオリティの料理を普通に作れる男子高校生も驚きだ。
俺とスコールも夕食作りを手伝ったけど、ティーダの手際があまりに良すぎて逆に足手まといになった気がする。

「夕飯、ハンバーグでデザートに手作りケーキまででた。びびった。すげえ美味かったし」
「まじで!?手作りケーキって似合わねぇ!」

ジタンは『スコールって料理できたんだな』とあはは笑ったから、俺はあれっと首を傾げた。

「料理できんのはスコールじゃないぞ。ティーダだティーダ」

俺はがしがしとボタンを連打したが、上にあるアイテムには一歩届かなかった。
けど、俺をフォローするように画面の上からきたジタンのキャラがアイテムを回収する。

「ティーダって誰?」
「あれ?ジタンは知り合いじゃないのか?同じ制服着てたぞ?」
「いや……知らない。うちの学校 、すげえマンモス校だし」
「……隣に住んでるから幼馴染みっていってたぞ。めちゃくちゃ仲良さそうだった」
「えー……知らなかった」

ジタンが知らないと言ったのに、なんとなくそれは不思議な感じはしなかった。
話でしか知らないけど、ジタンたちの学校はメチャクチャにでかいらしいし。
それぞれ学科のコースに別れていて、ジタンは演劇科でスコールは特進科だと聞いたことがある。
他にも色々学科があるらしいし、出会わなくても仕方ない。
それにスコールはたぶん、ティーダと仲がいいことを隠してるんだ。
いや、隠している訳じゃないだろうけどひけらかすつもりはないんだ。
ひっそりと二人で時間を過ごしたい。そう思ってるんだ。
それを感じ取ったのがこの前のことだ。
夕飯をお呼ばれしたとスコールに言ったらめちゃめちゃ嫌な顔されたし、俺がティーダと話せばつまんなそうな顔をするし。

なんだその顔は嫉妬メラメラなのかと思わず突っ込みたくなった。
ていうか、お前らは長年連れ添った夫婦かと本当に言いたくなったときがあった。
着替えてダイニングにやって来たスコールがティーダに『おい』と言ったら、『うん』と言ってティーダはどこかへ行った。
どうしたのかと聞けば、さも当然な顔で『着替えだ』と言われ呆れた。
ああ、そうだ。突っ込みたいと思っただけじゃなくて実際に突っ込んだんだ。

お前らは夫婦かって。

そしたらスコールは驚いた顔して、酷く動揺してた。
その反応に、こりゃ面白いものをみたなと思ったものだ。
ジタンはさっき『彼女でもいるんだろ』と言ったけど、きっと大事すぎる幼馴染みとのんびり過ごしてんだろう。
聞けば、大半の生活を一緒にしてしまっているらしいし。

「なあ、ティーダってもしかして金髪のやつ?」
「ん?ああ、そうそう!金髪で青目だったな!」

俺の答えに、ジタンは『じゃあ、知ってる』と言った。
あれ?さっきは知らないっていってたし、スコールは隠してるんだと予想してたんだけどな。

「知り合い?あいつ、面白いよな」
「いや、知り合いじゃない。そのティーダって有名人なんだよ。ブリッツボールのプロ選手だし」
「ええ!?マジで!?」
「マジマジ。ザナルカンド・エイブスのエースだよ。名前くらい知ってろよー」

ジタンはそう言うと、『そっか、スコールってティーダと知り合いだったのか』とぶつぶつ言っていた。
きっと黙ってるなんて水くさいとか思ってんだろうな。
俺も、スコールとそれなりにあった回数は重ねたと思ったけど幼馴染みの話なんて出なかった。
それが少し、水くさいとか思ったりもした。

けど、なんていうか……明らかに邪魔すんなオーラがスコールから出ていて……。

「なあ、ジタン。夕飯はどうする?」
「なんでもいいぜー」
「実はいい鰹が知り合いの漁師から送られてきたんだ」
「知り合いの漁師って……男勝りな女漁師っていう人?」
「うん」

男勝りというか男そのものに見えなくもない。
豪快だし、船員にはお頭って呼ばれてるし。たぶん、きっと自分より男前で男らしい。
でも、たま〜に女の格好すると可愛いから、やぱっり男勝りくらいか。

「んじゃ、魚だな」
「おう。一流シェフに調理してもらおうぜ」

俺はそう言って、携帯を取り出した。
たっぷり入っているメモリの中から、『て』の欄を検索する。
ここで『す』に連絡したら、間違いなく嫌だと断られるからな。
この前、アドレス交換しておいてよかったぜ。

「おい、バッツ……一流シェフって……」

ジタンのはっとした顔に、俺はにかっと笑うだけにした。
なぜなら、もう文明機器は空間を越えて俺達の距離を繋げてしまったから。

「あ、ティーダ?俺だよバッツバッツ!実はいい鰹が手に入ったんだけどさー」


邪魔者扱いは上等!!
閉鎖空間にいるのと二人の世界は違うってね!
bkm
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