小説 | ナノ
Life2
※ACC後の7の世界に10が来ちゃう話。


酷い目にあった。
俺がそう言えば、クラウドは『お前に何もなくて良かった』と言って頭を撫でてくれた。
そのクラウドの顔が本当に心配したといったものだったので、俺はそれ以上文句は言えなかった。

気がついたらキラキラと不思議な色の海にいた。
その水は温かくて、すごく安心できる気がして、俺はただただ漂っていた。
親父はどこ行ったんだろうとか、アーロンどうしてるかなとか、あと、ユウナはもう大丈夫だとか、ぼんやり思いながら漂っていた。

それをどれくらい続けたか知らないけど、俺はいつの間にか水面に浮かんでいたんだ。
どこだここ。
そう思ったのは一瞬だけで、目の前に広がる青空にここが記憶の海のなかじゃないことに気づく。
いつの間にか、俺はまた夢から這い出したのだろうか?
そんな風に驚いて、浮力に任せていた体を起こした瞬間に―――。

「ああああああああ!!」

確かに持っていたフラタニティを落としたんだ。
それからは何回か潜って、上がっての繰り返し。
いつの間にか人が集まり始めてたけど関係なし。
いまはとにかくフラタニティを見つけるのが先と思っていたら、名前を呼ばれてびっくりした。

呼ばれるままに振り向けば、ついこの前まで一緒にいたはずの仲間が少しだけ老けた様子でそこにいた。
あれ?どういうこと?
俺ってばまた世界の枠組みを越えちゃったのか?

二度あることは三度ある。
夢のザナルカンドからスピラヘ。
そして異界へ。そして今度はクラウドの世界ッスか。

クラウドはどうやらあの時から三年経っているくらいの感覚らしい。
俺は相変わらず夢の海にちゃぷちゃぷ浸かってただけだから。

クラウドの話にはふーんという感想くらいしか言えなかった。
でも、クラウドとこの世界の医者がいうには俺が浸かっていた場所はライフストリームって言って人体に悪影響を及ぼすものだったらしい。
だから、散々そこでじゃぶじゃぶとしてた俺はクラウドとの再開を喜ぶ暇もなく入院と検査を徹底的にさせられた。
だから、クラウドとゆっくり喋れるのは再開して丸一日経ってからだった。
その前にあった検査はすごい大変だった。
血液検査に意味わからない装置に入れられて、加えて眼底検査や歯科健診までやった。
目はともかく、歯はいらないだろ?

でもずっとクラウドに見張られてたし、検査いらないですとか言い出せない雰囲気だった。
俺は大丈夫だって分かってたけどね。どこかおかしいとこもないし、しいていえばちょっと頭がぐるぐるするだけ。
でもそれはなんでこの世界にいるんだとか、俺のこと誰が夢見てんだろとか、そんなこと。
体調にはおよそ関係ない。

結局、ものすごい検査をしまくったのに、俺はどこも悪くなかった。
医者は信じられないものを見るような目で、『……驚くべきことだが、君は魔光に対して完璧な適合性を持っているようだ。今は推測の域に過ぎないが、もっと詳しく検査すれば……』何て言った。

そう言われても俺には分からないし、あの魔光っていうやつがそもそも人体に悪影響を与えるようなものには感じられなかった。

だってあの中はすごく温かくて、心地がいいんだ。
ていうか、今まで俺が漂い続けてた夢の海じゃないのか?
もしくは繋がってるとか……てことはあれは異界とも似てるのか。
じゃあ、俺は慣れっこじゃないか?

医者の驚きに反して、俺はそんなのどうでも良かった。
早くクラウドと話したいなってこと考えていて、長い説明から逃げ出したかった。
だから俺は話し半分に『はい、はい』とテキトーに返事をしていた。

「……よければもっと君を調べさせてほしい!もしかしたら多くの人が助かる可能性が……」
「……すまないが、今日はもう休ませたい。昨日から検査が続いて、ティーダも疲れてる」

クラウドはそう言って医者の言葉を遮ると、俺を連れて治療室をでた。
どこに行くのだろう病室かなと思っていると、クラウドは病院の外に出てでっかいバイクを持ってきた。

「乗れ」
「あれ?病院でちゃっていいんスか?」
「……異常はないんだろう?だったら構わない」
「うッス」

そう言われて、素直にバイクの後ろにまたがった。
でっかいバイク……メットはしなくていいのかなと思ってたけど、クラウドに『しっかり掴まってろ』と言われて慌ててぐっとクラウドにしがみつく。
メットなしなんスか……捕まらないのかな?


そんな俺の考えはお構いなしに、クラウドは真っ暗闇の中をバイクで走り出した。
さっきまで俺がいた街が、どんどんと小さくなっていく。
あの街の名前すら、俺はわからなくて……というか、どんな街かも全然知らない。
気づけばライフストリームとかいう場所にいて、あっという間に病院に連れてかれて、翌日の夜になるまで検査だったんだ。
街を見る余裕なんてあるわけもなかった。

クラウドは黙ったまま、俺を乗せてバイクで走ってる。
風がびゅんびゅんと当たるし、検査疲れて眠たいけど……これは車じゃないから流石に眠れない。
寝たら落ちるっつーの。

だから俺は必死に瞼を開けて、ぐっとクラウドにしがみついてた。



たどり着いた場所は……まあ、やっぱり知らない場所で。
でもなんとなくどこかと問えば、クラウドは『俺の別荘』と簡単に返してくる。

さすがクラウド!別荘とかもってるんスね!!
クラウドはなんでもできるし、やっぱ凄い男っていうのは別荘とか持ってて当然なもんなんスね!
そーいやセシルなんて、『僕、思い出したけど王様だったよ』とか言ってたし!!

まあ、とりあえずクラウドの別荘ってのに入って、やっと一息着けた。
誰がかっていうと、クラウドがかな。

こう見えても異世界にいっちゃう経験は豊富だし、慌てふためくのは意味ないって知ってる。
どうせ最初はなるようになるしかない。死なないようにしてればいずれ道は見えてくるもんだ。
それが俺がいままでの異世界旅行の経験則。

つーか本当ににできることないからなるようにしかならないんだよな。

だから、特に焦ることもなくただ単純にクラウドに会えたのが嬉しかった。
でも、クラウドは違うだろうな。
クラウドはワッカと違って俺が異世界から来ちゃったっていうのは分かってるし。
クラウドは真面目だから気楽には構えないかも。
でも……。

「クラウド!」
「……なんだ?」
「久しぶりッス!」

やっぱ今は、再開を喜べばいーんじゃないか?

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ライフストリームは幻光虫と同じ存在らしいので、
じゃあティーダはライフストリームに完全に適合しちゃってるだろ。
だってティーダは召喚獣の一部なわけですし。(多分)
bkm
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