「……すまない。その……お前の気持ちには……応えられない」
動揺ながらにでた言葉は、相手を否定する言葉だった。
けれどそれを言われた相手は怒るでも泣くでもなく、少しだけ下を見たかと思ったらすぐに顔をあげてぱっと笑った。
「そっか。聞いてもらえただけでも別にいいッス!ありがとな!」
そう言って笑って、俺の前から『じゃあ、またな』と言って戻っていった。
きっとフリオニールたち三人のところに戻ったのだろう。
俺もバッツとジタンのところに戻らなければ。
そう思い、ふらりと足を動かす。
頭の中でリフレインするのはティーダの言葉だ。
『俺、スコールのことが好きッス。特別に一番、めちゃくちゃに好きッス!!』
その言葉が友愛じゃないのは顔を見れば分かった。
真剣に恋愛を伝えてくる、陣営の中で同い年の相手に俺はなんで俺なんだとか考える間もなかった。
ただ、今は戦いの最中だとか、男同士だろとかそんなことばかりを考えて、ティーダに答えた。
「お、スコール。ティーダなんだって?」
「……いや、大した用じゃない」
「そっか。んじゃ、そろそろ行くかー」
俺の返事にバッツはそう言うと、前の岩場に座っているジタンの方へ歩いていく。
俺はバッツを上手く誤魔化せたことにほっと安堵の息をついた。
ティーダがなんの用だったのかとしつこく聞かれたらどうしようかと思っていた。
仲間の男に告白されましたとは言いにくい。
(……大した用じゃない……か)
言ってしまった後だが、そう表現したのは悪かったかもしれない。
向こうは真剣なようだったし。
でも、他に誤魔化しようがなかったのだ。
嘘をつくわけにもいかない。
(……泣いているのだろうか)
ぼんやりとそう思うが、そういえばティーダが泣き虫だという話はよく聞くが、実際に泣いているところを見たことないのに気づく。
泣き虫だと話すのはフリオニールやクラウドで、いつもティーダと一緒にいる奴等だからこそ見ることがあるのだろう。
俺はティーダと一緒にパーティなど組まないし、会うのは拠点に戻ってきてからだ。
そこで17の男が泣き出すようなことも起こる筈もない。
(……俺はなにを振った相手のことを考えてるんだ)
はぁ、息をつきそれから思考を止めた。
今は探索に集中しよう。
そう決めて、俺は前をいく二人に追い付くように少しだけ歩調を早めた。
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