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らーぜALLにみせかけた阿部メインSS。







from:水谷文貴
題:トゥース!!
本文:水谷のココは空いてますよ!



「…なんだこれ」

昼飯を腹いっぱい食ったあとの食休み、部で回し読みしている野球雑誌に目を通していた俺の携帯電話が、短くヴヴーッ、と震えたのが始まりだった。

まず送信者の名前に、はたと自分が今ひとりでいることに気がつく。
なんだかんだでいつも一緒にいる花井と水谷が傍にいない。教室のあちこちに散らばっているクラスメイトらのグループをぐるりと見渡しても、ふたりの姿は見えなかった。そういえば何分か前、ふたりして何か言って教室を出て行ったような。
誰がどこで昼休憩を過ごそうが興味などないので、視線は雑誌に落としたまま「おー」とか「あっそ」とか適当に返事をしたような気がする。

記憶を辿りながらメール画面を開いた。
正直メールタイトルを見た時点で中身を見ずに消去してやろうかとも思ったが、万が一ということもある。例えば次の授業のこと、例えば今日の部活のこと。
そうして開いた本文に、結局、万にひとつとはつまり「ほぼゼロ」なのだということを再認識したわけだが。


from:水谷文貴
題:トゥース!!
本文:水谷のココは空いてますよ!


一応スクロールを試みたが画面はぴくりとも動かなかった。
本文、以上。

携帯から視線を上げる。教室の出入り口や廊下に面した窓に俺の反応を窺うアホ面を探すが勘は外れた。
意味がわからない。あの芸人のネタだということ以外なにもわからない。
もう一度小さな液晶画面に目をやる。
画面には「新着メール受信中」の文字が表示されていた。



from:花井梓
題:できれば
本文:今の水谷のメールは消去せず置いといてくれ



眉間に皺が出来たのがわかった。
つまりこれはどういうことなのか。
だが深く考える間もなく画面は再び「新着メール(2件)受信中」の画面に切り替わる。



from:泉孝介
題:目玉焼きは
本文:@醤油派Aソース派Bケチャップ派Cマヨネーズ派Dポン酢派E塩派

from:田島悠一郎
題:おまえんち
本文:朝パン派?御飯派?オレはどっちも好き!


『新着メール(5件)受信中』


from:篠岡千代
題:びっくりドンキーの
本文:びっくりコーラっていつの間になくなったのかな

from:巣山尚治
題:ウルトラソウッ
本文:ヽ|1,1| <ハーイ

from:栄口勇人
題:よゐこの旧コンビ名は?
本文:答え、なめくぢ

from:沖一利
題:ジンメンカメムシ
本文:で画像検索すると、なんかつられて笑いそうになるけどやっぱり気持ち悪くて笑えないよね

from:西広辰太郎
題:ん
本文:で始まる言葉って意外と多くて面白いよね。ンジャメナなんかは有名だけど、他にも世界の都市名に多く見られるんだ。でも興味深いのは、沖縄の方言にも「ん」から始まる言葉が多いこと。アラレちゃんの「んちゃ!」は、沖縄では「土」って意味なんだって。あとこの話題になると「ンドゥール」って言いたくてウズウズするのが3部ジョジョラーの特徴だよ!そういえば日本にも「ん」から始まる名字の人が何人かいるらしいよ、俺は会ったことないけど阿部はどう?



俺はひとまず頭を空にして、一気に届いたそのメールの一通一通を事務的に開いては閉じた。合計7通に目を通し終えてから、もう一度こちらへ視線を送っているやつがいないか確認する。
…誰もいない。そして改めて気付いたがやはりというべきだろう、教室には篠岡の姿もなかった。

やつらが示し合わせて一斉に俺へメールを送信していることは明らかだ。
だが目的が分からない。異常事態である以外にもどこかに違和感を感じるがそれが何なのかも分からない。
昼休みの残り時間を確認する。どうする、やつらを探すか、このまま花井たちが戻ってくるのを待つか。どうする。
多分間違いなくやつらは全員一緒にいる。だが遠くて狭いあの部室ではないだろう、ならどこかのクラスに集まっているのか?
挙動不審を表に出さないように最後に受信した西広からのメールを凝視していると、またも画面は新着メールを伝えてきた。



from:三橋廉
題:たてよみ、してください
本文:(なし)



たてよみ。

…縦読み?

本文を開いたがそこは空白だった。
ついに混乱は極まって、は、とかえ、とかの意味を成さない音が口から漏れたが、不意に違和感の正体に思い当たって俺はすぐさま三橋からのメールを閉じた。
画面は受信ボックス。そこに並ぶチームメイトたちの名前と、メールタイトル。
それから、駄目押しに今日の日付。

勝手に動きかけた口元を慌てて手で覆い隠した。
誰だよ、言い出したの。ばっかみてえ。


「なにあれ」
「阿部くんじゃない?」
「ああ、野球部か」


クラスメイトの話し声に混ざったいくつかの単語を耳が無意識に拾った。
顔を上げるとクラスメイトのひとりと目が合う。その視線が促すように廊下へ向けられ、それに倣って俺も廊下へと顔を向けた、

…瞬間、思わずびくりと肩が跳ねた。

何度も姿がないことを確認したはずの教室の窓、そこに、ああちくしょう満足なんだろう、喜色満面な10個の顔が並んでいた。


「………うっぜえ…!」


頭を抱えて見なかったことにしたい衝動に耐えながらも苦し紛れにそう呟けば、そいつらはますます笑顔を濃くした。
ただひとりだけがちいさくビクついたが、だがそれがとんでもない発言を引き出す。

「大丈夫だぜ三橋、さっきちょー嬉しそうにしてたの見ただろー?」
「う ん、うれしそー、だった!」
「やめろよ田島、阿部は恥ずかしがり屋さんなんだから」
「ぶふっ」

「…おまえら…そこを動くなよ…」

声やら何やらを抑えながら、ゆっくりと立ち上がる俺。じり、と窓から一歩離れる10人。
これは追いかけっこになる前兆だ。
なら、合図は誰が出す?

「みんなー!そこにいる阿部くん、今日誕生日だからー!」
「よっし水谷まずお前から潰す!!!」
「やだ物騒!!」
「阿部が照れ隠しに暴れるぞー!にげろー!!」

蜘蛛の子を散らすように10人が7組の教室から離れた。
水谷に乗せられたクラスメイトがけらけらと笑いながら言った「阿部くんおめでとー」や「野球部仲良すぎ〜」は、きゃー、うわー、あっこら廊下走んじゃねえ、なんてやつらの騒がしい声のせいで聞こえなかったことにする。
走り出した水谷+9組3人に追いつくまであと10秒、
そして逆に10人から一斉におめでとう攻撃を受けて俺が逃げる羽目になるまで、あと、




12/11 12:50 三橋廉
てよみ、してください
12/11 12:47 西広辰太郎

12/11 12:47 沖一利
ンメンカメムシ
12/11 12:47 栄口勇人
ゐこの旧コンビ名は?
12/11 12:47 巣山尚治
ルトラソウッ
12/11 12:47 篠岡千代
っくりドンキーの
12/11 12:47 田島悠一郎
まえんち
12/11 12:47 泉孝介
玉焼きは
12/11 12:47 花井梓
きれば
12/11 12:45 水谷文貴
トゥース!!




ファイブミニッツメイキング
(2011/12/15)
仲良しらーぜに夢見すぎました。
浜ちゃんがいないのは彼の誕生日も目の前だから!


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