付き合ってるけど甘さ控えめ。水谷視点。 優しい可愛い栄口はお休みです。 この感情はどこから来るんだろう。 可愛い。 綺麗。 欲しい。 食べちゃいたい。 閉じ込めたい。 誰にも見せたくない。 みんなに自慢したい。 さみしい。 あったかい。 泣きたい。 好き。 ひとりの人を思うだけで、こんなにたくさんの気持ちが一度に自分の中から生まれてくるなんて、ちょっと信じられない。 雨みたいにどこからか降ってきてるんじゃないかと思う。 じゃあ自分のものじゃないのかな。 コントロールもきかないんだし、やっぱり自分じゃない何かから生まれて操られてるんじゃないかって考えてみる。 「そりゃまた難しいこと言うね、」 栄口に相談してみた。 「水谷はあんま頭良くないんだから、もっと簡単にいこうよ」 栄口は時々失礼だ。 「俺も同じだよ。水谷のことを想うと、いっぱいいろんな気持ちが溢れてくるよ。だから俺の気持ちは水谷から降ってきて、水谷の気持ちは俺から降ってくるんじゃない」 なるほど、それなら矛盾がない。 気がする。 あ、でも待って、 「じゃあ最初は?最初に俺が栄口好きだーって思った気持ちはどこから来たの?」 「うーん、この理論でいくと」 「はい」 「水谷に片想いしてる誰かかな」 え、と栄口の目を見る。 栄口は笑って言った。 「誰かが水谷に向けた気持ちを、水谷が受信して、俺に発信しちゃったんだね」 かわいそうにね。 そう言って笑った栄口の顔は、友達に向けるのとあまりにも同じ笑顔だから、すごいこと言ってる気がするのに俺の頭を麻痺させる。 「…なるほど?」 「納得した?」 「うん、」 栄口が俺じゃない誰かに発信しなくて本当に良かった。俺、ちゃんと栄口に責任もつよ、安心してね。 そう言うと栄口はまた笑った。 責任の所在 (2015/04/09) |