遠距離友情


佐助→かすがの描写があります。
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あのね、私はあの子のことが大好きなんだよ。誰にも渡したくない…ってほど盲目的でもないけれど。とりあえずあの子といると心が和む。姿を見るだけで癒される。会話をしているだけで私の人生は薔薇色だって思える。だけど普段、あの子は側にいない。遠くにいるんだよね。本当は寂しいけれど、私の世界はあの子だけじゃないし、あの子の世界も私だけじゃない。それは分かってる。私はあの子がいないだけで何もできなくなるような人じゃないよ。だからお互い頑張ろうねって胸を張って言えるの。



「そんなにかすがこと好き?さすがに俺様、その恋は認めらんないよー?」

「佐助、私の話ちゃんと聞いてた?恋じゃないよ、何言ってんの」

「え、友情にしては行き過ぎじゃない?」


一緒にいるだけで癒されたり幸せだって思える友人がいるのはおかしいことじゃないと思うのだけど。佐助って何でも極端な結論に持っていくよねと言うと、ムッとされた。今のはちょっと言い過ぎたかな。

佐助はかすがのことが恋愛感情で好きだから、極端な考えに至ってもおかしくないかもしれないけれど、佐助が心配するようなことは何もない。私はただ純粋にかすがのことが大好きってだけだ。普段は会えなくても、たまに会ったときは昔と変わらず他愛もない話で盛り上がれる間柄って素敵だと思う。



「女の友情って、好きの度合いがそんなに濃いもん?」

「濃いとか言わないで。かすがが素敵過ぎるだけよ」

「かすがが素敵なのは認めるけどー」

「優しいしかっこいいし」

「まぁ、美人だし可愛いしね〜」

「頭いいし、意志が強いし」

「そのうえエロい」

「…ちょっとさっきから佐助、外見のことばっかりじゃん」


でも事実でしょうと開き直る佐助に、私は苦笑いしながら頷いた。私もあんな美人になりたいなぁと思っていると、背後にコツコツと足音が近付き、誰かの声がかかる。


「夏月の方が可愛いだろう」

「へ…あ、かすが!」


久し振りに会うかすがは、相変わらずスタイルが良くて、センスの良いカジュアルな格好をしていた。会う度に靴のヒールが高くなっていってる気がする。よくそんな高いの履けるなぁ。私なんて、疲れるのが嫌だからせいぜい2、3センチの高さまでだよ。


「久し振りだね!」

「かすが久し振り〜」

「どうしてこいつがいる」

「あれ、佐助も一緒に行くって昨日メールしなかったっけ?」

「してた…が、そいつは置いてこいと返信しただろう」

「あ、そうだ。いつものツンデレ返信だと思ってスルーしたんだった!」


そう返事すると、かすがは小さく溜め息をついて、まぁ別にいいがと呟いている。ほらね、やっぱりかすがは優しい。佐助のことが本当に嫌いなら、もっと真面目に私に話してくるはずだもの。


挨拶もそこそこに、私たちはデパートの方へ歩を進めた。今日は3人で買い物したり、お食事したりと1日中遊びまくるんだ!隣で背筋をピンと伸ばして歩いているかすがを見上げて、私は何となく嬉しくなって彼女の手を掴む。かすがは何も言わずに、まずどこに行くかと聞いてきた。


「ちょうどお昼時だから、ご飯を食べよう!」

「ああ、お腹空いたしな」


ルンルン気分で鞄を揺らしながら歩いていたが、ふと佐助の存在を思い出して後ろを振り向くと…何か、あからさまに拗ねた表情をしていた。


「佐助…?」

「なんか俺様、切ない」

「何で?あ、佐助も手繋ぐ?」

「どんな三角関係ですか…」


何でそこで三角関係という言葉が出てくるんだ。不思議そうな顔をしているかすがに、私はかすがが来る前の出来事を説明する。


「馬鹿だろう、お前は」

「そうだよ。私はかすがが大好きだけど、佐助のことも大好きだよ」

「でも1番はかすがでしょ‥」


佐助はしゅんとなって下を向いている。何だか彼らしくない。そもそも佐助はかすがのことが好きなのに、何でそこで落ち込む必要があるんだ?とりあえず立ち止まって佐助の肩に手を添えていると、かすがはハァと大きく溜め息を吐いた後、佐助の頭を小突いて言う。


「友情は順位じゃないだろ。部類の問題だ」


それだけ言い放った後、かすがはどこのお店に入るかを吟味しにいった。
佐助を見ると、彼は頭を傾げていた。かすがのさっきの言葉、私は一発で意味分かったけどなぁ。

つまりは、とある話題を楽しむにはこの人が1番だけど、一緒にいて1番落ち着くのは別の人だとか、友人の中でも色々種類があるわけで、単純に友人という大きな括りで順位を付けられるようなものじゃないということだろう。かすがのその考え方は、私も賛成である。ただ私の中の色々な部類の1番は、偶然かすがで占めてしまったというだけだ。

そのことを説明すると、結局順位はあるんじゃん‥と佐助は言う。まぁ、否定はしない。



「まぁまぁ佐助、遠距離恋愛中の貴重な再会なんだから、もっと楽しみなよ」

「ちょっ‥!黙ってて夏月!」

「あははー。私は遠距離友情中の貴重な再会を楽しみますよー。ね、かすが!」


2メートルほど前にいるかすがに声をかければ、何の話だというふうに首を傾げられた。そして何も言わずにまた料理のメニューの方へ視線を戻す。その様子が真剣だったから、何だか可愛く思えて笑えた。



遠距離友情

好きの種類は違うけれど、とにかく私たちはあなたが大好きなんです!


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お題配布元:rim
2011.10.12



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