01
オレの勝手な一目惚れだった。
相手は社長秘書――高嶺の花であることは分かっている、オレはどうせただの平社員。彼女は美人で知的で、おまけにスタイル抜群だし男性社員からの人気といったらこの上ない。
でもそんなオレにも運が回ってきた。
日頃積み重ねた努力が評価され、新企画のチーフを任されることになった。しかも社長直々に話があるそうで…これは彼女と会話できるかもしれない。
緊張しながらも社長の部屋に着く。震える手でノックすると中から女性の声が聞こえた。
要件を伝えるとまさにあの社長秘書の彼女がオレを案内する。
それからというものの、視線は彼女にほとんど釘付けで正直な話、社長の話は大して聞いていなかった。
「それじゃああとの説明は頼んだよ、咲音くん。」
「はい。じゃあ会議室に移動するわよ。」
彼女は沢山の企画資料を抱えてオレを誘導した。そして会議室で打ち合わせが始まった。
「申し遅れたけど、私は社長の秘書を勤める咲音メイコ。よろしくね。」
「あ、オレ…僕は始音カイトです。」
「そんな堅っくるしくしないでいいわ。」
彼女はニコッと笑ってくれた。
そのあまりの可愛さにこっちはどうにかなってしまいそうだ。
この企画のコンセプトは何か、今後どういった方向へ進めて欲しいかなどを説明された。
「…以上よ。何か質問はある?」
「あ、あの…」
「何?」
「連絡先教えてもらってもいいですか?」
「…構わないわよ。」
ちょっと間があってから彼女は承諾する。その間が何を意味するかは分からなかったが互いに連絡先を交換し合った。
「企画について聞きたいことがあったら連絡しますね。」
「分かったわ。」
それからオレはメイコさんとよく仕事に関係のあるメールのやり取りをするようになった。まぁ時々私事も入ったりもするが。
■あとがき■
まぁ前置き的なもんです。