■Another us■
(ちょいと長め3ページ)
「何で他のプロデューサーのMEIKOと!?」
貰った楽譜には「Song by KAITO&MEIKO」って書いてあるから、やったぁ!久々にめーちゃんとデュエットだ!
…なんて浮かれてたらマスターに他のお家のMEIKOだって言われて思わず大声を出してしまった。
「頼まれちゃったことだし…」
若干申し訳なさそうにそうマスターは言うけどオレは納得出来ない。
正直他の家の、我が家にも居るVOCALOIDとの仕事はあまり好きじゃない。
ましてやMEIKOだなんて…!
「うちのMEIKOもコーラスで参加するから安心して、ね?」
…それならまだいいか、と思い、しぶしぶ仕事を引き受けた。
収録の打ち合わせの日、相手方のMEIKOとご対面。
最近こっちの世界に来たらしいし、家にはオレ…つーかKAITOも居るらしい。
そっちのオレはどんなんだろう、と考えていると、ふと視線を感じた。
相手方のMEIKOだった。
え、ちょ、なんか照れるんだけど!
「…オレの顔に何か付いてる?」
オレの問いかけにハッとしたMEIKOは慌てて何度もごめんなさい、と謝ってきた。
「ごめんなさい…!
なんかうちのKAITOとは随分性格違うんだなーって考えちゃって…。」
まじ!?そんなに違うの!?
「え…じゃあどんなオレなの?」
想像するより聞いた方が早いよな。
だが、それはオレの想像と遥かに違っていた。
「口数が少なくて、無愛想というか…普段から一人でいるの。」
「…ええええええ!?」
お、オレが口数少なくて無愛想だって…!?
「こらカイト!打ち合わせ中!」
ベシッ、と隣にいたマスターが資料を丸めて頭を叩いた。
「す、すみません…。」
マスターはビックリしないのか!?
オレが口数少なかったり一人で行動したら絶対新手のバグだと思うだろうに!
つか一人でいるっつー事は…
「めーちゃん、オレが普段から…」
「えっ…、めーちゃんって呼んでるの!?」
あ、しまった…。このMEIKOはMEIKOであって、めーちゃんじゃないんだった。
え、ややこしい?
「うん。たまに呼び捨てにするけど基本は『めーちゃん』かな。
じゃあ何て呼ばれてるの?」
「メイコ、って。…でもちゃんと呼ばれたことは少ないわ。」
MEIKOはうつむき加減でそう答えた。
「呼ばれたことが少ないって…
じゃあ普段からオレ、めーちゃんとあんまり関わってないってこと?」
信じられなかった。
オレは一日に何回「めーちゃん」って呼ぶか分からないくらいめーちゃんにべったりだし…まぁ大体ウザがられるんだが。
「こっちから話掛けても曖昧な返事しかくれないし…。」
「オレは普段からめーちゃんにべったりなのに!?」
「えっ…」
「え…あ、あの…その…」
やっば、絶対殴られる!
今まで会ってきたMEIKOもめーちゃんと同じツンデレで、ツンの度合いに差があるだけだった。
恐る恐る様子を伺うと、テーブルの向かいには顔を真っ赤にしたMEIKOがいた。
頬を両手で抑え、いかにも動揺している様子だった。
…やっぱ可愛いよねMEIKOって!
「ごめん急に変なこと言って…!」
「ううん、…そっちの私は大切にされてるんだね。」
グサリと胸を刺すような、切なげな表情で答えられたので何て言えばいいか分からずしばらく黙ったままだった。
「うん」と答えればMEIKOが傷つくのは目に見えている。
ったく、向こうのオレは何て奴だ!
「そっちのKAITOとさ、直接会う機会って…ないかな?」
実際に話し合って確かめてやる!
たとえ他の家のMEIKOでも、悲しませている原因がKAITOにあるだなんて許せなかった。
「確かこの曲のコーラスで参加するから収録の時に会えるんじゃ…」
「だったらその時オレが言ってやる!
なんかごめんね、めーちゃん…」
「別にあなたが謝ることないわ。」
とにかく!会ったらただじゃおかないからな、向こうのオレ!
「…という事なんだ。」
今回コラボすることになったKAITOとMEIKOのことを我が家のめーちゃんに話した。
「育つ環境で性格が違うのは知ってたけどなんか不思議ね。」
「ねー。メイコちゃんみたいな性格のMEIKOだったよ。」
「…ややこしいわね。」
確かにややこしい。メイコちゃんは咲音メイコ、めーちゃんの妹の事。
オレだって話していくうちにどのKAITOなのか、どのMEIKOなのか分からなくなる…。
「ま、何か私も協力できたらするわ。
同じMEIKOでも私だけ幸せなんてそんなの嫌だわ。」
「めーちゃん今幸せなんだ。
そりゃあオレがずっと傍に居るもんね♪」
「…うざいくらい、ね。」
うわぁ、すごく不機嫌そうな表情…。
はは、とオレは苦笑いした後、
「とりあえず明日ギャフンと言わせてやる!」
と意気込んだ。
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