※過去捏造的な何かです。
聡明が羊のぬいぐるみに入るちょっと前くらいの時期イメージです。
冷たい風が僕の髪を撫でていった。
さすがに冬の夜は寒い。なおさら今は屋根の上にいるものだから、手袋もなにもつけていない指先はどんどん冷えてゆく。
でもそれでも、中にいるよりかはましだと思った。
僕の両親は、組織の裏切り者で。それは到底変えられない事実で。
大事な、大事な聡明さんの器に重傷を、負わせた。
そんな裏切り者の子どもを、笑って受け入れてくれる訳もなくて。
能力が目覚めるまではましだったと思う。目覚めた今となっては、彼らが嘘をつくたびにその空間に嘘臭さが充満して吐きそうになる。
でも、全部悪いのはこちらだ。僕がもし逆の立場だったならば、聡明さんに重傷を負わせた極悪人の息子と一緒にくらすなんて嫌だ。聡明さんが僕を器に選んでくれなかったら、間違いなく僕は今ここに存在しない。
みんながみんな嘘をついている訳じゃないのはわかっている、でもどうしてもこわくなって。こっそりと部屋を抜け出して屋根に上った。
その行動に特に意味はないけれど、誰もいないところの方が息がしやすかった。
(...このまま消えてしまいたい)
何度も、そう思った。僕がいなくなればいいだけの話なのだから。
でも結局、できずに終わる。僕のこの体は、僕の物ではなく聡明さんの大事な、大事な器なのだから。
器に傷をつけることは、できない。聡明さんに何の恩返しもできてないのに。
僕できることはただ一つ。聡明さんにとって一番いい器になることなのだから。
深く息を吸って、吐いた。白い息が夜の闇に溶ける。
星一つない曇った空は、どこか重たげで。明日は雨になるのだろうかとぼんやりと思考にふけっている、と
「弥太!」
突如、響いた大声。予期せぬことに思わず体がびくついた。ついていた手が滑って重心が前にずれて___
頭の中で警報が鳴り響く。
このままじゃ、落ちる。でも体が動かない。
来るべき衝撃に備えて目を閉じたが、僕の体が地面にたたきつけられることはなかった。
おそるおそる目を開けてみると、聡明さんの姿がすぐ目の前にあって、
引き寄せられたのだと理解する。何時になく、まじめな表情で
僕の体に触れた。
「弥太、大丈夫か?どっか怪我してないか?」
「大丈夫です、…すいません。」
「何がだ?」
「聡明さんの、器なのに…もうちょっとで…」
僕の言葉に聡明さんが両目を見開いた。聡明さんのこんな表情は今まで見たことが、なくて。どうしたのだろうかと思って思わず口を閉ざした。
「….馬鹿だよお前は。」
「…?」
「確かにお前は俺の器だ。でもその前にお前の体だ。…もうちょっと自分の体を大事にするんだ、いいな?」
「はい….?」
聡明さんの手が僕頭を撫でる。されるがままになっていると、今度は抱き寄せられて頭を胸に押し付けられる。
久しぶりに触れた誰かの体温は、暖かかった。
「…1人で勝手にどこかにいくな。なっちゃんが心配してたぞ。」
「あとで夏輝に謝っておきます。」
「だな、それと辛くなったらいつでも俺のとこに来たらいい。」
「はい。」
「だから1人で泣くな、弥太郎。」
「…っ」
頬を伝う何かを、聡明さんの舌が掬った。いつの間にか流れていた涙に戸惑いつつも
俺は再び聡明さんの、胸に顔を埋めた。
小さく笑いながら僕の涙をぬぐう、聡明さんの手は暖かくて、優しかった。
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とりあえず、聡明×弥太郎を書いてみました←
おそらく毛探偵は弥太郎総受けですねwww
そのうち遥とか洋とかも書こう...