重い瞼を開けた。目に映るのは、一面真っ白な世界。
何がどうなっているのか全く分からない。どうして、今俺はこんなところに居るのだろうか。

わかるのは、自分の名前と、仕事を失敗したという事実だけ。拳銃か何かで殴られた首の後ろがまだ痛かった。
とりあえず、窓から外を眺めて見ようと足を一歩前に進めようとした途端、部屋に響く重い金属音。じゃり....という音がうっとおしく感じた。


「ひどい扱いだね、全く....」


白い部屋で唯一違う色の足枷。少し躍起になって足枷をつけられた右足を前へと運ぼうとしたけれども、びくともしなかった。
ただ、己の足が少し赤くなっただけだった。



無意識のうちに右手が何かを....ナイフを探していた。
が、いつものコート姿でなく真っ白なシャツ姿の俺がナイフを持っているはずもなく、みっともなく壁に寄り掛かってずるずると床に座り込んだ。




つけが回ってきた、といって笑うしかないだろう。
俺は情報屋だからね。恨みならかなり買ってる。
それなりに気をつけて生きてきたつもりだったんだけど、ね。
どうやら俺の運は尽きたらしい。


だったら、抗うことはしない。
どうしようもない現実を、受け入れてやろうじゃないか。
みっともなくもがいたって、ただ醜いだけだ。


俺がため息をつくのと、ドアノブが回されるのはほぼ同時だったと思う。



「気がついたか」

「.....どうも、こんなことしてくれちゃってありがとう。なんなの、そういう趣味なの?こわ〜」

「....そんな悪態もいつまでもつかな、折原臨也。」


一人の男が部屋に入ってくるなり、俺の顎を持ち上げ無理矢理上を向かせた。
あぁ、知っている顔だと思った。
お世辞にも綺麗とはいえないその顔が目の前にあって自然と眉間にしわがよった。


「一体何が目的なの?何?お金?」

「.....お前をズタズタにしさえすれば満足なんだよ。」

「......はぁ?」

「どんな方法を使ってでも、な。」



ドカ、という嫌な音が部屋にこだまする。
と、同時に息が詰まって。そこで初めて腹を殴られたことに気がついた。


「...っげほ......っ!げほ、かは.....っ」

「はははは、はははははは.....!!」

「......っ」


狂ってる。きっと狂っているのだろう、この男は。
笑いながら何度も、何度も俺を蹴る。それはそれは、心底楽しそうに。


ぐにゃり、と視界が歪んだ。
あぁ、もうこのまま死んだ方が楽なような気がする。
いっそ、舌でも噛んでやろうか。


そんなことを考える頭とは反対に。
俺は天井に手を伸ばし、小さく言葉を紡いだ。



「......たすけて、シズちゃ........。」


狂っているのは俺もなのかもしれない。なんでシズちゃんなんだと、笑う気力すらもう俺にはなかった。


「シズちゃ.......」



俺の声は。誰に向けられるでもなく真っ白な部屋にそっと溶けていった。


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.....静臨だと言い張ります← 
とりあえず静←臨のはず!!
..........つづく、のか.....??


*
  


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