「......。」


冷たい風が池袋の街を駆け抜けていく。
携帯を片手に歩いていく女子高校生、同じ色を身にまとい戯れる輩。
池袋の街も、飽きることなく変化を繰り返す。



「....また暴れてるの、シズちゃん....」


とあるビルの屋上で、冷たい風に吹かれながら眼下を見下ろしていると突然、目に入る空を舞う物体__基、平和島静雄というかなりの危険人物によって投げられた可哀想な自動販売機。



毎日毎日、本当に君は飽きず同じことを繰り返してるんだね。
それとも馬鹿だから、昨日と同じ行動してもなんとも思わないの?



なんて、悪態をついたところで相手に聞こえるわけではない。
俺はやっぱりシズちゃんが苦手だ。
どう考えても彼だけは愛せない。暴力的だから、とかそういう単純な理由ではなくて。

行動や思考回路が読めなさすぎて、俺にとってシズちゃんは未知の生物だから。
どう考えたって、人じゃないものを愛せやしない。




「......君を見てると、本当にムカつくよ。」



自動販売機を投げたり、標識をへし折って振り回したり......。そんなことをしているから、街の人から喧嘩人形として恐れられる。
いいじゃないか、それで。
君は他の人とは違う、異色のバケモノなのだから。

..........孤独で、いいじゃないか。
人に恐れられるまま、孤独に生きたらいいじゃないか。




ねぇ、どうしてだろうね。
どうして、ねぇ、なんで........。



「....どうして君の周りにはそんなにも人が集まってくるんだい」



君の力はあまりにも脅威すぎる。それは事実だ。
なのに、何故か君の周りに人は集まる。


そうなると君がまるで......



「君がまるで、人間であるかのように錯覚するよ。でも、そんなのシズちゃんじゃない。俺の知ってるシズちゃんは、そんな人間じみていない。」




人とかかわって親交を深める、なんて君はしなくていい。
これからもずっと、一人でいればいい。
周りから恐怖の目を向けられながら、だって君はバケモノなのだから。



「......俺と、同じなんだよ...。シズちゃんは俺と同じなんだよ。」



だから、人間になんかならないで。





コートに忍ばせたナイフを、きつく握りこんだ。
冷たい空気を肺に送り込んで、ゆっくりと二酸化炭素を吐き出した。




「俺がシズちゃんを、シズちゃんらしくさせてあげる。」



どれだけ、君が人間に近づこうとも。俺が元の位置に戻すよ。




「本当に、大っ嫌いだよ。だから、殺してあげる。」



突き立てた刃はきっと、数ミリしか刺さらないが。
それでも俺は、君に刃を向け続けるよ。



*****
シズちゃんに友達ができるのが嬉しくない臨也さん。
  


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