「臨也、手かせ」

「.....なんで命令形なんだよ。」


口では反抗しつつも何故か差し出してしまう。
その手をとってシズちゃんはにやり、とわざとらしく笑みを浮かべて手の甲にキスをひとつ、落とした。



とある、夢物語


「.......ついに頭までおかしくなったの?」

「あ?うるせぇな、黙ってろ。」

「..........」

「......うぜぇ」

「.....シズちゃんが黙れって言ったんでしょ」


シズちゃんの馬鹿、単細胞、絶倫、と立て続けに口から洩れることばにシズちゃんはあからさまに顔を歪めた。
そのままふい、と顔を背けるものの、強い力でもとの位置に戻される。


なんなの、と目だけで問うと先ほどまでの態度は何処へやら.......。
捨てられた子犬のような目をして、一言。


「わりぃ、」

「......うん。」

「臨也、」

「も、.......」


そのまま唇を奪われて、先ほど差し出された手の指を絡めて、俺は思う。
どうか、覚めないで、と。


だが、願い虚しく、折原臨也がみるその夢はそこで途切れた。




未だ現世と夢との狭間を行き来する意識を携えた俺を、不意に暖かいものが抱きしめた。
目を開けずともその正体がわかり、思わず笑みが漏れる。


「おかえり」

「.......遅くなって悪かった。」

「......仕事なんだから仕方ないでしょ、それに俺そんな年頃じゃないし。」

「....クリスマス、終わっちまったな。」

「..........」


ごめん、ともう一度謝ったシズちゃんは優しく優しく俺の髪を撫ぜたあと、額に唇を落とした。
額、頬、鼻、そして最後に唇。
シズちゃんの唇が俺の唇から離れて行くときにはすでに、頬に涙が伝っていた。



「.....約束、してたのに、な」

「.....まだ、その話?もういいって」

「埋め合わせ、絶対すっから。泣くな。」

「泣いてなんかないよ。」


寂しかった、なんて言わない。言ったらシズちゃん悲しそうな顔するしね。
その代わりと言わんばかりに、俺よりも大きな体にしがみつく。はなさないで、と言った。聞こえたかどうかは分からないけど。



「明日」

「......?」

「休み貰ったから、どこか行きたいとことかあるか?」

「んん......」

「.......寝むそうな顔してんな。」


気がつけば、ベットの上に下ろされていて、そのままゆっくりと布団をかぶせられる。
バーテン服も脱がないまま、シズちゃんもその中に入ってくる。俺の頭の下に手をまわして、再び暖かい体温が俺を包む。


「...し、ず...ちゃ......」

「.......ん、」

「あした、どこにもいかなくて...い、から.......ふたりで、.......」


ずっと一緒にいよう、と伝えた。それこそちゃんと発音できたかどうかすら怪しいが。
でもシズちゃんは静かに頷いて、そのまま俺に再び口づけを与えた。




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ち な み に
臨也さんはソファーで膝を抱えて眠ってました。

さみしんぼな臨也さんが好きです....
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