空が低い。
今なら掴めるんじゃないか、とくだらないことを思いながら手を伸ばした。
無論、俺は何も掴めない。空気さえも指の間をすり抜ける。
俺のこの手は何のためにあるのだろうか、となんの意味もないことを思いながら1人立ち尽くす俺の肩を誰かが、叩いた。





「臨也、何やってるんだい?」

「.....ううん、何でもない。行こうか。」

「君がぼんやりしてるなんて珍しいね。今日は雨が降るのかな。」


うるさいなぁ、と口では悪態をつくも俺は別にこの目の前の男__名を岸谷新羅という少し異常な人間、は嫌いじゃない。
歪んでいる俺を理解できる数少ない友人だ。


「ねぇ、新羅。空が落ちてきそう。」

「......君ってたまに変わったことを言うよね。」

「そう?」


そうだよ、と薄く笑って新羅は俺の前を歩きだした。俺より少し、背の高い新羅。
この微妙な差がむかつかないことはないけど、まぁそれは置いておこうか。


「で、臨也は何?空を掴みたいのかい?」

「いや、そうじゃなくて。単に掴めるかなぁって。」

「へぇ...」

「それに空を掴めたら素敵だと思わない?全て、というか何かが手に入る。」

「......残念だけど僕には理解できないねぇ。」



でも、と不意に新羅が立ち止まり振り返る。突然のことに俺も対応することができずそのままぼすん、と軽い音を立てて新羅にぶつかる。
俺がごめん、と口にするより新羅の腕が俺に回る方が少し早く俺は何も口することはできない。
しん、ら.....と震えた音が微かにそこに響き渡る。


「ねぇ、臨也。」

「.....何?」

「空、とかそんな抽象的なものよりもっと具体的なものを掴んでみない?」


眼鏡の奥の目が少し細められ、地面に照らしだされた影が、静かに重なった。


*****
新臨!
まだよくわかんない←
こんなんなのかなぁ......
  


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