熱い、痛い、苦しい、切ない。
そんな感情がぐるぐると渦巻いて心がおかしくなりそうだ。

行き場のないこの感情は、全身へと血を送る心臓から指先まで届けられる。
嗚呼、一体俺はどうすればよいのだろうか、とオーバーヒート寸前の脳をフル活動させる。



池袋の空が灰色に染まる。空が落ちてきそうなほど低い。きっともうじき雨が降る。
落ちて行く太陽の光が次第に細まる。夜の暗さとはまた別の、黒にもなりきれず白いままでも居られない空。
ぽつり、一粒。空が泣いた。

いつの間にか土砂降りになった雨。俺の服も体も濡らして、でも肝心の感情は流してくれやしない。
頬を伝う滴は雨なのか、俺の涙なのか、それさえもうわからない。


好き、と誰に言うでもなく言葉が漏れる。
人間への愛、とはまた別の俺の中の感情。でも俺はいったいどうすればいい?
この叶わない、一生叶うことないこの恋心をどうすればいい?
捨てようにも捨てようがない。諦めても、またすぐに好きになる。

馬鹿な自分に思わずため息をつく。
きつく目を閉じて、見開く。心からの笑みを浮かべて。


さぁ、始めようか。俺と、キミの戦いを。
叶うことない思いを成就させる、そんな夢物語などいらない。
甘く優しい未来など俺には必要ない。
深く、抉られたような傷が欲しい。一生消えることのない傷が欲しい。
セツナイ、なんて知らない。そんな感情はタブーだ。

君に見せてあげる、感じさせてあげる、教えてあげる俺の思いを。



「好きだよ、シズちゃん。誰よりも何よりもアイシテル」


叫んだ言葉は人ごみにかき消される。これでいい、と再び口元に笑みを浮かべる。
何も知らず、何も気づかずただ俺の掌の上で踊ってくれよ。
君の心の中に入り込めないのなら、俺の心に引きずり込むまでだ。



いつの間にか空が笑っている。憎たらしいほど明るく。
あぁ、ムカツク。ムカツクよね、本当。消えればいい。


さぁ、今日もまたナイフを片手に戦場へと乗り込もうじゃないか。
このナイフで彼の心臓をどっぷりと深く、再生不能にするまで。
黒いコートを翻して、シズちゃんの視界を奪って。標識がもぎ取られる瞬間を待ちわびる。


「....迎撃、用意」


この未だ変わらず不利な状況で、勝ち残り生きるために。
終戦の合い図はシズちゃんのキスだよ。
君の口づけで、俺は目を覚ます。そして笑って言うんだ。
大好きだよと、ナイフを片手に。


だからその永久に来ることのない日がくるまで


「戦争を、続けようじゃないか。ねぇシズちゃん。」


嬉しそうなキミをみるなんて思ってもみなかった。

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そのうちシズちゃんverも書く予定←

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