「.....あ、」

「どうした?静雄?」

「....すいません、トムさん。後から絶対追いかけるんで先行っててください。」

「え、は....ちょ.....」



いきなり逆方向に走り出した俺の背中にトムさんの戸惑いがちな声がかけられる。
が、振り向いて詳しく説明するものめんどくせぇ。と、いうわけでトムさんには後でちゃんと説明しようと思う。



人であふれかえる池袋の街。視界に映った黒のコートを俺は見逃さなかった。
この季節にあんな恰好をする奴は、俺の知る限り一人だけだ。


今日は、新宿に居ると朝言っていた奴が何故ここにいるんだと、俺は人を掻き分け......いや、通行人が道を勝手に開けてくれたんだが、黒のコート....基臨也を追いかけた。




「おい、臨也!」

「へ、あぁ、シズちゃん。」


ふらふら歩くそいつを捕まえるのはたやすかった。
肘を掴んで振り向かせれば、少し驚いた表情をしてから微笑んだ。
少し前ならありえない光景だが、世界は予知不可能なものである。
殺し合いをしていた俺らは、何かがめぐり巡って恋人という関係になった。



「.....今日は新宿に居るんじゃなかったのか」

「ん、まぁね。依頼が入っちゃって。」


どうやら臨也の心を興奮させるのにふさわしい依頼らしい。どことなく嬉しそうな雰囲気をまとってる。
艶やかな黒髪を抱くように引き寄せて、10aほど小さなその体を抱きしめた。


「なに、どうしたの?なんか変だよ、シズちゃ....」

「池袋に来るときは連絡入れろ」

「....いいけど、なんで。」

「さぁな。」


少しでも一緒にいたい、なんて痛いことは言えない。
それに俺が言うのもなんだが、池袋は危険な場所だ。
いくら俺と喧嘩を繰り返していたとは言っても、臨也は華奢だ。
何かが起こらない、とも言い切れない。


以前の俺がこんなことを考えてる俺を知ったら発狂するな、と心の奥底で笑った。



「っていうかさ、シズちゃん仕事は?」

「.....あ、」

「はぁ、ほら早くいきなよ」

「おう、.......臨也」

「ん?なに.....っ」



左手は臨也の腰にまわしたまま、右手で細い顎を掴んでそのまま柔らかな唇に食らいつく。鼻から抜けるような甘い声。控えめに俺のシャツを握る手。潤んだ瞳。

その全てが俺を興奮させる。



が、とりあえず仕事だ。ということで仕方なく臨也を解放した。




「.....ホント意味わかんない....。」

「じゃ、俺行くわ。」

「シズちゃんって本当にばかだよね、どうしようもないよね。」

「......続きは今晩、な」

「..っな!!」


頬を真っ赤に染める臨也を尻目に、俺は再び走り出した。







その日池袋の喧嘩人形が投げた自動販売機がいつもより高くまっていたらしい。
(再び、臨也が頬を紅潮させるまで、後4時間33分)




*****
シズちゃんは街中でもどこでも臨也を見つけてちょっと襲ってエネルギー補給してればいいと思う←
そしてそれに振り回されておどおどする臨也www
狩沢sに発見されて遊ばれるといいよ!(^^)!
  


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