どうしようもなく、不公平だと思ったのだ。
それは俺にとってただただ不愉快なものでしかなく、どうにかして天秤を釣り合わせよう(あわよくば彼のほうが重くなるように)と考えるのは普通のことだった。

「ねえシズちゃん、嫌いなものってなに?」
「あ?」

不公平だと思うんだよね。
俺はシズちゃんのことだけが嫌いなのに、シズちゃんには嫌いなものがいっぱいあるなんてさ。

「なんだよいきなり」
「まあまあ、たまにはこういう話もいいじゃないか。教えてよ」

訝しげに眉をひそめる彼に、いつも通りの涼しい笑みを浮かべ先を急かす。
今日は機嫌が随分といいらしく、珍しくも俺の問いに考えるような姿勢を見せた。
そんなに考えなくたって、嫌いなものくらいたくさん出てくるだろうに。
なんせ彼は、コドモなのだから。
暴力で全て解決、はいさようなら、なんてガキ以外のなにものでもない。
だから大人の俺が優しく対応してあげているのにシズちゃんときたら、なんて自分を棚にあげる。

「まあ、それなりにあるけど。……そん中でも群を抜いててめえがいちばん大嫌いだな」
そう言って不敵に笑った彼の瞳の真っ直ぐさに一瞬射抜かれたが、すぐに我に返る。
なんせ俺は、あの折原臨也なのだから。
シズちゃんなんかに、あんな子どもなんかに惹かれるわけがないのだ。
あってはいけない、そんなこと。

「……まあ、今はそれで勘弁してあげるよ。なんてったって、俺は大人だからね」
「あぁ!?」
「ずっと、俺のこと嫌いでいてね」

そう言って嬉しそうに笑った俺は、彼の目には一体どのように映っただろうか。
少なくとも、切ない気持ちを溢れさせた情けない顔ではありませんようにと、そっと祈った。


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これ嫌いを好きに変えたらすごいむかつく


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