「ねぇ大我?」


前々から、独り暮らしをしている火神の家に来たがっていた水無月を招いた火神は、水無月の来て早々にエロ本を捜し始める行動に面食らった。

その騒動は、水無月が、火神が恋愛について勉強するために購入した雑誌をみつけ、恥じる火神をなだめ、ここまでしてくれてありがとう、と、水無月が伝える形で一段落した。現在は2人仲良くリビングでテレビを見ていたのだが、水無月はまだ、火神が男子高校生なら誰でも持っているであろう物を持っていないことに納得していないらしかった。


「…………なんだよ。ほんとにねぇからな、エロ本なんか。」

「ありゃ、バレた。でもさ、ほんとにないの?じゃあ大我は、我慢できなくなったときどうするの?」

「どう、ってお前…っ。つーか我慢できなくなるって…っ。」


普段は『虎』と形容されるほどに荒々しい火神も、恋愛のことになると話は別だ。むしろまるで仔猫のように小さくなり、真っ赤になる火神を、水無月は面白がってさらに煽る。


「ね、大我ってばぁ。我慢できなくなる時あるんでしょ?そういう時はどう処理するのさ〜?」


にやにや笑いながら近付く水無月を、火神は妙な汗をかきながら必死に押し返す。


「ち、近いっつの…っ。つーか、頼むから女がそういうこと……なぁ、頼むから待てって…!」


水無月のことを気遣い、あまり力を入れて押し返すことができない火神を、知ってか知らずか(いや、こいつは絶対確信犯だ…!)、艶っぽい目で見上げ、さらに近付く水無月。するりと火神の後ろに回って首に抱き付きながら耳に唇を寄せる。


「ちょっ…、カンナ…っ。待っ…。待て待て待て!当たってる当たってる!背中…!マジで…やめろ、ってカンナ…!」


慌てふためく火神。爆笑したいのをこらえ、水無月は火神の耳元で囁いた。


「たいがぁ?ね?教えて?えっちな気分になったら、大我はどうするの…?」


ぴたり。火神が動きを止めた。ぷぷぷぷ、と笑いながら火神の前にまわり、「大我かわいー。ドキドキした〜?」と水無月が問うが、返事もなければ、下を向いたまま動かない。

流石に心配になり、「大我…?怒ったの…?」と水無月が顔を覗きこんだ時だった。






グイッ!

バタンッ!







「いったーい!大我なにす…え、ちょっ、大我?!」


火神が固いフローリングの上に水無月を押し倒した。背中の痛さに抗議の声をあげた水無月だったが、火神の、自分の服をめくる手に、驚きの声に変わった。


「ちょっと大我ってば!どしたの急に?!」

「…あ?急に?散々煽っておいて今さらなんだよ。独り暮らしの男の家に来て、しかも煽ってんだ。それくらいの覚悟しとけよ。」


火神の目はギラギラと、まるで獣のようだ。服を捲っていく火神を止めようと、手で抵抗はしてみるものの、そんなものは目の前の獣には無意味のようで。


「大我…っ!や、」

「やだ?ああ、そうか。フローリングじゃいてぇよな。ベッド運んでやるから。」


ひょいっと火神が水無月を抱き上げる。それは女の子なら誰もが憧れるお姫さま抱っこというやつなのだが、今の水無月には喜んでいる暇はない。「大我!下ろして下ろして!」とバタバタ暴れてみても、鍛え上げられた胸板はびくともしない。













「キャ!」


ドサリ。先ほどエロ本を探していたベッドに下ろされて、火神が馬乗りになる。ただし水無月には体重をかけないように。動きだけを奪うように。


「たい、がぁっ…。ごめ、やだ…」

「わりぃな、止まんねぇよ。」

「んっ!…ふ、………あ」


貪るようにキスされて、火神の舌が口の中を蹂躙する。歯の裏をなぞられて、ぞくりと肌が粟立った。



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