黄瀬のいきなりの発言に、笠松は固まった。な、なんだいきなり?そもそもそのモデルって男か?女か?立場上男からそういう話が来る場合もあることにはあるが…。お、女だったらオレはどうすれば…っ。と、早くもパニック状態である。女性が苦手な笠松は、女性を目の前にするとまともに話せなくなる嫌いがある。
「そのモデルってのが、まーキレイな人なんスけど!なんでも月バスの特集で笠松センパイを見たらしくて!オレのセンパイだって伝えたら目輝かせて会わせてくれって…笠松センパイ?」
笠松は今や体育館に通ずる通路に、ひれ伏すようにしゃがみこんでいた。お、おお女…と微かに聞こえてくる。端から見れば女に飢えているようにすら見えてくる。
「…大丈夫スか?」
「あ、ああ…」
「で、来週の日曜って体育館の点検だかなんだかで、休みじゃないスか。だから、それ伝えたら、なんとか仕事休み取るから会ってくれないか、って。…どうします笠松センパイ?相手売れっ子モデルっスよ」
「…」
笠松は悩んだ。相手は女性である。となると、自分がその人を目の前にして、話せなくなるのは目に見えている。ましてや売れっ子モデルとなると人一倍の美人であることが予測できる。普段練習に明け暮れているせいでテレビや流行り関係には疎い笠松でもそれくらいは理解できる。あの黄瀬をもってしてキレイな人と言わしめる程だ。自分は耐えられるだろうか?
しかし、相手はスケジュールを調整してまで自分に会いたいと言ってくれている。月バスを読んでいるくらいならバスケ好きなんだろう。そんな好意を無下にしていいものか。
「…………………………会う」
「マジっスか?!」
うんうんと唸って考えること実に10分。笠松は答えを出した。
「会ってやろうじゃねぇか!」
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