こいつはとにかく、人をからかうのが趣味なのか、ってほど、超うるさくていい加減だ。男のくせにカチューシャつけてみたり、その飄々とした態度が生理的に受け付けない。
「カンナちゃん、高尾くんすごくいい人だよ?どうしてそんなに嫌うの?」
昼休み。緑間(正しくは緑間をからかいに来る高尾)から逃げるために屋上でご飯を食べる。この子には悪いけど付き合ってもらう。からかわれている対称であるはずのこの子は、天然なせいでからかわれていることにすら気付かない。そして自分が緑間を好きだってことにもなかなか気付かない。
鈍感な親友を持つのは大変だ。
「あんたねぇ、少しは人を裏から見るようにしなさいよ。」
「そんなぁ。裏から見たってきっと高尾くんはいい人だし、カンナちゃんだって裏表がなくてすごくいい人だよ?」
「…っ」
素直に褒められて少し照れると、満足そうににこーっと笑う。ああ!緑間には勿体無い!
「でも、高尾みたいなのとくっつくよりはよっぽどいいわ…。しょうがないなぁ…」
「?」
これからどうやってあいつらを近付けさせよう。この子はこの通りだし、緑間に期待はできないし…。うーん、と唸っている私を不思議そうに見て、「今日の占いでも悪かったの?」なんて聞いてくるこの子はなんなんだろう。
うんうんと頭を捻っていると、屋上のドアがばん!と開いて、聞き覚えのある声がした。あいつら、私の大事な時間を台無しにする気か!
「ちょっと高尾、緑間!なんであんたらがここに来んのよ!」
「ここは学校だぞ?すなわち生徒にとっては公共のものだ。立ち入り禁止と書いてあるならともかく、オレ達だけが入ってはいけないと誰が決めた?」
〜っ!高尾も腹立つけどこいつも腹立つーっ!
フーッフーッ!と、猫のように2人を威嚇する私を止めるこの子を、今だけは説教したい。
「まー、まー、いいじゃんいいじゃん。飯はみんなで食ったほうが旨いしさぁ。」
「誰があんたなんかと!」
カラカラと笑いながら言う高尾。ほんと腹立つ。
「それはそうと水無月。話あんだけど、ちょっと」
「な、何よ」
再びドアの方に向かいながら、高尾が私を手招きする。いぶかしみながらついて行くと、屋上に2人を残したまま、ドアをぱたんと閉じた。
「ちょっと、手伝ってくんね?」
「は?何を?」
「あの2人、くっつけんの」
ぽかんとする私。なんでこいつ私と同じこと考えてんのよ。
「お前気付いてんだろ?あの2人が両想いだって。あの調子じゃいつそれに気付くかわかんねぇし、ちょっと協力してくれよ」
「……わかったわよ」
舌打ちをしながら了承すると、高尾が笑った。くそ、こうやって普通に笑ってればいいのに。
…ハッ!今何を考えた私!
ブンブンと頭を振って煩悩を消すと、高尾が私を見て、作戦を伝えてきた。耳打ちされるのがくすぐったくて、少し身体を離した。
「……で、………だろ?……………と、こうなるわけよー!」
「…そんな使い古しのネタで大丈夫なの?」
「大丈夫!真ちゃんよく、『シンプルだからこそ心理なのだよ』って言ってるから。」
「…なにそれ」
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