「一体何をなさるおつもりですか」

姿を目視できないから、気配だけを頼りに見据える。

「そう警戒せずともよかろう」

ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべているのが見ずともわかる。
両隣から酒精の匂いがぷんぷんする。どれだけ飲んだのだコイツらは。

「いきなり目隠しされれば誰でも警戒するかと」
「ここまでされるまで抵抗しなかった、無防備な貴方が悪い、かな」

まさか主君と友人がこんな真似をしてくるだなんて誰が思うだろうか。

夜が更けるのも忘れて執務室に一人籠もっていたら、曹操と郭嘉の二人がいきなり突入してきたのだ。
あれよあれよという間に両腕を掴まれたかと思うと、手首を縛られついでに黒い布できっちり双眸を覆われ、捕らえられた。
その手際の良さといったら感嘆に値する。…こんなことに技を発揮して欲しくはないのだが。

「全て荀イク殿がいけないんだよ」
「はい?」
「近頃は夏侯惇殿や曹丕殿とばかり一緒にいて私達を構ってくれない。少しはこちらを見てほしいな」
「…では何故このような無体を働く必要があるのです」
「それはこの方が楽しめるからだな」

結局は私を巻き添えにして遊びたいだけなのでしょう。
そう言ってやりたかったが、酔っ払い相手では無駄だと思い直し、荀?は口を噤んだ。

「……せめて縄を解いてもらえませんか?逃げたりしませんから」
「それはダメかな。こうして無理やり屈服させる、というのもなかなかそそるからね」
「…悪趣味ですね」
「それでもいいさ。今宵は私達三人だけで楽しもうか。朝まで、たっぷりと、ね」
「んんぅっ――!」

これ以上は問答無用とばかりに郭嘉が唇を塞いだ。
無遠慮な舌が這い回り、荀イクのそれを絡め取る。舌裏を刺激しながら、不自由な視覚を補おうと鋭敏になっている耳を塞いでしまう。
脳内に直接淫らな水音が反響して、不覚にも背筋がぞくぞくとした。

「抜け駆けとはずるいぞ。儂も混ぜよ」
「ん――は、ふぅ……っ!」

今度は曹操が口づける。
ちゅ、ちゅと荀イクの唇を愛撫したかと思うと、歯列をなぞり口内を余す所なくなぞる。
好色二人の技巧を、しかも視界を奪われた状態で受けたのだ。
荀?の全身から力が呆気なく抜け、隠された慧眼には情欲の炎が灯り始めていた。

「これだけで力が抜けたか?やはりお主は敏感で愛いな」

さんざ愛された口元からは、銀糸がつうっと垂れる。
誰のものかわからぬ唾液に光る唇を曹操がべろりと舐めとると、荀イクを横抱きにして持ち上げた。
不意の浮遊感に思わず目の前の身体にしがみつく。その仕草にまたフッと笑われた気がして、恥ずかしさのあまり顔が熱くなった。
そのままどこかへ運ばれる。少し歩いたかと思うと、やわらかな布の上にそっと降ろされた。
おそらく仮眠用の寝台だ。
――本気でこのまま抱く気なのか。よくわからない理由で、それもこんな強姦まがいに。
戸惑う荀?をよそに、拘束された腕を曹操の首にかけ膝立ちの姿勢を取らされる。

「ちょっ、と、お二人とも、ッん、このようなお戯れはいい加減に…っ!」

不埒な二対の手が衣服に伸ばされる。
胸元をくつろげ肩まで肌蹴させ、侵入できる隙間を得ると前から曹操、背後から郭嘉が肌をまさぐりだした。

「貴方の髪はとてもいい香りがするね」
「ん……っ、ふ」

ほどけかかった長髪に郭嘉が顔をうずめ、うなじに口づけを落とす。

「あッ?!お、おやめください、そこは見えてしまいますから…!」
「見せつけてやれ。お主は儂らのものだとな」
「殿、なりません、こんな、ァん、や…ッ!」

中途半端な快感に身を捩る荀イクの肩を抑えつけ、首筋やら鎖骨に痕を散らす。次々とつけられた赤は際どい部分にまで及んでいた。
あぁ、これでは衣服をきっちり着ても隠しようがないではないか。

「ほら、こっちにも集中して」
「ひゃ…ッ!痛い、です、嫌、ァあ!」

主の所有印に嫉妬し、今度は郭嘉が背に吸いついた。
普段は行儀よくピンと伸ばされる背筋に歯を立て、うっすらついた歯型を労るようにそこを舐める。
その間にも曹操が脇腹をなぞり、引き締まった腰をじっとりと撫でる。
互いが互いの愛撫を妬み、より荀イクの気を己へ向かせようと、思い思いの前戯を施していく。
――いったい、この感覚は…
頭がクラクラする。いつもよりじっくりと愛でられ、脳髄がぐちゃぐちゃに溶かされきってしまった気さえした。
些細な刺激にも心の臓がドクドクと忙しなく脈打つのがわかる。

「っお二人とも、そろそろ止めにしませんか…?」

モジモジと内股を擦り合わせ必死に快感に抗う。
彼らは性感帯には一度たりとも触れていない。
それでも荀イクの股座は布を押し上げ、うっすらとシミを作っていた。

「まだまだ。もっともっと、貴方がとろけてしまうほど甘やかしてあげたいんだ」
「ぃや、いやです…ッ、おかしくなる…!」

私が言いたいことなどとうにわかっているのに。この男は。
達するにはどうしても決定打が足りなかった。せめて手が自由になれば自分でこの欲を慰めることもできるのに。
腹の底から逃れようのない興奮が湧き上がる。

「いや、ぁあっ、後生、ですから…!どうか、おゆるしを…ッ!」
「ふむ、ならばどうしてほしいかその口で強請ってみせよ」
「そ、れは……あァう!」
「言ってくれないとわからないな。素直になって、ちゃんと教えて」
「ほし……です、イキたい、イかせてほしいです、ァ、ぃああア――!!」

今まで放置されていた乳首を曹操にべろりと舐められ、悲鳴をあげて荀?は達した。
吐き出した精が、いまだ脱がされないままの衣服にじわりと滲んだ。

「ほぅ…こんな所でいけるとはな。お主も相当な好き者よ」
「ひぅ!だめ、です、だめ、触らないでください…ッ!」
「欲しいと言っていたのに、荀イク殿は嘘つきだね。照れなくてももっとよくしてあげるよ」
「あ、やぁ、ひ…アぁ!」

責め手が止むことはなかった。
曹操の指が胸を弄る。頂を摘みくにくにと擦れば、次第にそこは弾力をもって主を楽しませた。
快感に赤く染まった耳は郭嘉が嬲る。耳殻を軽く食み、甘やかな吐息を流しこみ、聴覚を直接犯す。
今までとは打って変わって的確に弱点をいたぶられた。焦らされきったからだにはとてつもない快楽だ。
荀イクは髪を振り乱し、ただただ身悶えた。溢れる涙が、彼の瞳を隠す黒い布を染め上げていた。

「も、う、ァァ、ッあああ〜〜!!」

じわじわと煮詰められたからだは、ちょっとした引き金ですぐに極められるようだ。
背を弓なりにしならせながら喉を震わせて二度目の遂情をむかえた。

「え……っ?だ、めです、殿、まだイって、ッ、イッてますから、ん、ァああ!」

ビクビクと全身を大仰に震わせていたのだから荀イクが達したのはわかっているはず、なのに。
それでもなお主君の手はぷっくりと赤く熟れた胸を苛め続けた。
触れられるたび狂おしいほどの痺れが下半身に流れる。
きもちいい。けれどよすぎてつらい。もう終わりを迎えたい。
際限のない絶頂感に襲われ荀?は悶絶した。

「ひぁ、あ!やめ…て、っくださ、あッ、ひゃう…!」
「ふふ、ぐちゃぐちゃだね。そんなに気持ちよかったんだ」
「ぃやです、郭嘉殿、見ないでください…ッ!」
「荀?よ、暴れるでないぞ。手ひどくされたいのなら話は別だがな」
「そんな…ひぃッ?!」
「すごい……荀イク殿の中、うねって私の指に絡みついてくるよ。食べられてしまいそうだね」

郭嘉が履き物に手をのばす。
一息に脱がされ露わになった荀?の下肢は白濁にまみれ秘所まで濡れそぼっていた。それを嗤われ荀イクはまた涙をじわりと浮かべる。
だが泣いている暇なんて与えられなかった。
荀イクの体液を纏わせた指がヒクつく秘所に侵入したのだ。そのまま胎内で異物が好き勝手暴れまわる。少し内壁を擦られただけで敏感に反応を返してしまう己のからだが恨めしい。
文句を言うこともできず、曹操にしがみつき暴力的な刺激にただひたすら耐えた。
――このままでは、おかしくなってしまう。

「同時は、ァ、だめ、壊れてしまいます、から、はぁッ、あっ、ひうう――ッ!」

中のしこりを潰された途端、荀イクはまた精を吐き出した。
三度目ともなると流石に色は薄くなり、勢いもだいぶ弱まっていた。

「ふふ、そろそろいいかな」

弱点を引っかきながら指を抜くとあァ…っ、と荀イクはまた喘いだ。
ようやく腕の縄と目隠しをほどいてやると、完全に脱力した荀イクはずるずると崩れ落ちた。
紅潮し汗ばんだ肢体を曹操が抱き止める。そして寝台に寝転がりながら胸元に荀イクの頭を沈め、全身を自らの上に横たえた。

「荀イクよ、挿れるぞ」
「お待ちくださ、かくかどの、離して」
「お主の痴態を前にしてこれ以上は待てぬな」
「むり…です、から、どうか、ッひぅ――!」

グズグズになった蕾に曹操のそそり立った熱が充てがわれ、しかも郭嘉が尻たぶを割り開いて挿入を助けてくる。
今は本当にダメだ。こんな状態で挿れられてしまったら、壊れてしまう。
荀?がいくら慌てても好色な男達はどこ吹く風。
腰を鷲づかまれ、半ば強引に腰を進められた。

「ぁぁ……は、あ…ッ」
「これだけほぐれているならば、同時に挿れても問題あるまい」
「え……?」

こちらは息も絶え絶えだというのに、曹操がさらりと恐ろしいことを言ってのける。

「待ってくださ、無理ですから、後生です、それだけは…!」
「大丈夫、痛めつける訳じゃないから、ねッ」
「ぅ、あ゛あ゛――!!」

肌に触れたもう一つの熱に荀イクの顔が青ざめた。
狼狽しきって震えた声で懇願する。だがギラギラと獣のような目をした雄達には届かない。
すでにギチギチの後孔を郭嘉の亀頭が無理やり押し開く。

「く、ぅ…っ!」
「ぐ…ッ、流石に、キツイな……!」

三者三様の叫びと呻き声が部屋いっぱいに響く。
こわい、いたい、くるしい、あつい。
同じ言葉が馬鹿になった頭をひたすら駆け巡る。
まるで全神経を焼きつくし、肉体を引き裂かれた如く責め苦だ。

「痛、あ゛、ぐ、ぅ……っ」
「荀イク、少し落ち着け。ゆっくり息を吐き、力を抜け」
「はぁ…あ、ふ……ッ」
「そう。もう少しだから、頑張って」

苦痛に呻く荀イクをあやすように、胸をくすぐりそこかしこに口づけを落とす。
幾分か緊張がほぐれたその隙に根本までゆっくりと押し入れていく。

「ほら、全て入ったよ」

頑張ったね。
慈しむように腹を撫でられ、埋められた胎内の熱をまざまざと感じてしまう。

「もうよいな?しかと掴まっておれよ」
「私達に全て委ねて。満足させてあげるから…!」
「ひ、ッ?!あ、あっ、ん、ッ、あァ!」

狙いを定めて、二つの律動が同時に始まった。
腹を滅茶苦茶にされる。
一方が奥まで穿った。かと思うともう一方が前立腺を押しつぶす。まともに呼吸を挟む暇すらない。
間断なくもたらされる快感に翻弄されて身も蓋もなく、ただ喘ぐしかできない。

「あぁ、気持ちいいよ…ッ!」
「お主の中は、ッ…ぬくいな。心地いいぞ…!」

性感に戦慄く荀イクを挟んで男たちがうわ言を漏らす。
触れたところ全てが熱い。
火照った皮膚が重なりあって、このまま全て溶けて混じってしまうような気さえした。

「ひァ、との、ッ、かくかどの、ァあっ!も、もう…ッ!」

とっくに限界を超えていた肉体が、こんな苛烈な快楽責めをされて耐えられる訳もなかったのだ。
虚ろな瞳が懸命に縋りつき、情けを乞うた。

「ねぇ、荀イク殿っ、私や曹操殿のことは、好きかな?」

唐突に郭嘉が問いかける。

「ちゃんと、聞かせてほしいな。貴方の、口から、確かな言葉が欲しいんだ…!」

だから、好き、と言って。
だらしなく開きっぱなしの口に白い指を差し入れ、ついでに悪戯に口内をくすぐって、促す。
いつもなら伝えられることのない言葉も、熱に浮かされた今なら容易くたぐり寄せられてしまう。
されるがまま、荀イクがたどたどしく唇を開く。

「すき、ッ、好きです、ゃんっ、あァ、ああっ!」
「っはは、いい子だね。…私も、荀イク殿のことを、愛しているよ」
「そうだ、儂らの手に、堕ちてくるがよい…!」

一層律動が激しくなって荀?を容赦なく揺さぶった。
荒々しくも、弱点を的確に狙ってくるものだから堪らない。蹂躙されるたび二人分の先走りがずちゅずちゅと卑猥な音を立てる。それにすら強く煽られる。
そこに甘美な誘惑が脳みそへと溶け込んでいく。身勝手な愛の言葉に脳髄を犯され、さらなる高みへ荀イクを追い上げた。
壊れたように汗がドッと吹き出し、全身がビクつく。視界に星が飛ぶ。

「いや、ぁ、ん、イッ、っあああア――!!」

強烈な締めつけに抗うことなく、曹操と郭嘉も胎内に精を吐き出した。


「……さて、気を遣ってはおらんな?まだ寝かせるつもりはないぞ、荀イク」

結局荀イクが解放されたのは空が明るみだした頃だった。
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