「…おい、本当に行くのか?」


隣を歩く佳人に問いかける。
彼の足取りはうきうきとしていて、どこか軽いような気がする。


「もちろん」
「…何もわざわざそんな所に行かんでもいいんじゃないか?」
「賈ク。賭けの約束、覚えているよね?」


それを言われては、黙るしかない。
悔しげに賈クは、くっと下唇を噛んだ。


事の発端は、酒の席でのお遊びからだった。
何かの流れで賈クと郭嘉が、碁で勝負をつけるになったのだ。
そこまではまだよかった。だがそこで、ただ白黒つけるのでは面白く無いと、郭嘉がひとつの提案をしてきた。

―――敗者は、勝者の言うことをなんでも、一日聞くこと。

それは、そういう内容だった。
アルコールが多いに入っていた賈クは、そりゃあ面白いと一も二もなく承知してしまった。…今思えば、それが大きな間違いだったのだ。
勝負は郭嘉の勝ちだった。僅差だったとはいえ、負けは負けだ。
あえなく、郭嘉のお戯れにつき合わされるハメになってしまった。


「ふふ、楽しみだね。一日中いやらしいことをして、二人きりで楽しもうか。存分に、ね」


向けられた満面の笑みに、背筋が凍る。
彼の要求は、『丸一日、二人っきりラブホテルで楽しみたい』というものだった。
ナニをされるかなんて、火を見るより明らかだ。
それでも、なんだかんだ言いつつ受け入れてしまうのは、(あまり認めたくないが)心までコイツに絆されてしまったからだった。


「しかしなぁ、男同士でそんなとこ、普通入れないんじゃないのか?」
「それなら心配いらないよ。最近ではフロントが無人のホテルも多いらしいからね」
「ははぁ…なんでそんなことまで知ってるんだか」
「曹操殿が教えてくれたんだ。あぁ、貴方以外の誰かと行った訳じゃないから、安心してほしいな」
「あっははぁ、さようで…」


最後の悪あがき代わりに、疑問を投げかけてみても、あっさりとかわされる。
恨み言を並べても、もう後の祭りだ。
そうこうしているうちに、あっという間にホテルに到着してしまった。


「へぇ…なかなか面白いものだね」


健全なホテルとは明らかに違う、ギラギラとした悪趣味なネオンをくぐる。
郭嘉の言う通り、フロントは無人だった。
適当な部屋を選びチェックインを済ませ、部屋へと手を引かれていく。

そこで目の当たりにした室内は、やはり異質だった。
まず寝室とバスルームが、壁ではなくガラスで区切られている。おかげでバスルームの様子が部屋から丸見えだ。
おまけに、カラオケ設備や大画面のテレビまである。
試しにリモコンのスイッチを押してみると、いきなり裸の男女が絡み合う映像が流れた。
どうやらというか、案の定というか、AVしか映らない仕組みらしい。
部屋中に響いた嬌声に多少の気まずさを感じ、さっさと画面を消した。


「話に聞いていた以上に、楽しめそうだね」


変な物でも持ち出されちゃあ敵わん。
興味津々に設備を物色する郭嘉を無視して、さっさとバスルームへ逃げこむ。
…もっとも、そんな逃避もまったくの無駄だったのだが。


「んー…、さすがというかなんというか…無駄に用意周到だな」


バスルームの光景に、賈クはがっくりと肩を落とす。
そこには普通のホテルにも置いてあるようなアメニティに始まり、コンドームやローションは勿論、ビニール製のマットまで置かれていた。
洗い場もやけにだだっ広く、いかにも『このマットを使って楽しんでください』と言わんばかりだ。
呆れながら立ち尽くしていると、一通り物色し終わったらしい郭嘉が、後ろからひょこっと顔を覗かせた。


「なぁに?賈クはコレを使ってみたいのかな?」
「あははぁ!とんだ勘違いだね!冗談じゃない」
「でもこういうのも、面白いかもしれないね」


白い手の中でボトルを弄びながら、郭嘉がゆっくりと賈クに近づいてくる。
間近で見た蜜色の瞳には、すでに情欲の炎がちらついていた。


「……拒否権は」
「あると思う?」
「否、だろうねぇ…」


にっこりと。そこだけ見れば誰もが思わず赤面してしまうような、美しい笑みを浮かべながら、俺を追い詰めてくる。


「先にお風呂に入りたい?それとも、これで早く遊びたい?」



*



「まったく、なんで一緒に入る必要があるんだか…」
「せっかくこういう所に来たのだし、別々に入るだなんて野暮だよ」


浴槽に十分に湯を張ると、服を脱ぎ一緒につかる。
身をなるべく小さくして、なるべく離れようとする。だがそんな俺を逃さぬように、郭嘉が後ろを陣取り背を抱えてくる。


「せめてもう少し離れてくれんか。近いんだが」
「湯船が狭いのだから仕方ないでしょう?」


大の男二人が一緒に入れば当然だとはいえ、なぜ湯船だけ普通サイズなのだ。
なかば八つ当たりのような文句をぶつぶつ垂れつても、郭嘉は至極楽しそうな表情だ。


「へぇ…ジャグジーだけでなく、ライトアップまでできるなんてね…」


あれこれとボタンを押されていくうちに、不意にからだが密着する。
ぎくり。つい緊張をしてしまったからだに郭嘉は、腰に左腕をまわし肩に顔を乗せてきた。
絶対にわざとだ、コレは。


「…もしかして、期待してる?」
「ん、なわけないでしょうが」
「私は期待してるよ。こんな所で恋人と二人きり、…それも一糸まとわずに。期待しないでいられる訳がない」
「んッ……!」


耳元で甘く囁き、耳たぶを軽く食まれる。それだけで背中は、ビクビクと勝手に跳ね悶える。
ここをこうして攻められると、つい敏感に反応してしまう。弱点の一つなのだ。
そんなこと、絶対に白状なんてしてやらないが、郭嘉はお見通しなのだろう。


「ぁ…!おい、触んな…ッ」
「どうして?こうして撫でられるだけで、感じてしまうから?」
「ひぃッ…!耳元で、しゃべるな、って…!」


まわされた手がつぅ、と脇腹や胸元を思わせぶりになぞる。
その間も耳への愛撫は止めない。熱っぽい吐息をふぅっと吹き込み、耳孔に舌を差しこまれる。
カッ、と全身が熱くなる。ばしゃばしゃと水面を揺らし身を捩った。
それでも構わずに、愛撫は続けられた。


「ぁ…んっ……!」


俺の陰茎は、ゆるく膨らみはじめていた。
それを見られたくなくて、反応し始めてる下肢を必死に隠す。
そうすると郭嘉は、咎めるように背筋に歯を立てた。それにさえ感じてしまい、びくっと腰が揺れた。


「ねぇ、本当に期待していないの?」
「んぁ…!んぅ、ん……っ」


耳元でことさら甘く低く、どことなく淋しげに囁かれた。
もちろん、こんな声は演技に決まってる。それでも、この声を出されると抗えなくなるのだ。それを理解した上での行いだろうから、本当に質が悪い。
白い手が頬に触れ、振り向かせられると、深く深く口づけられた。
舌と舌とを絡ませあい、歯列をなぞり、奔放な舌が口内を思うがまま蹂躙していく。
くちゅくちゅと淫靡な音が、バスルームに反響していた。


「止めてほしいのか、それとも気持ちよくしてほしいのか、ちゃんと言ってほしいな」


―――ほだされる。陥落してしまう。
そう俺の脳髄が、警報をガンガン鳴らしている。だというのに、熱に浮かされた全身はすでに、抵抗する気力を奪われきっていた。
甘い甘い誘惑が、なけなしの理性を焼き切っていく。


「………きもちよく、してほし…」


羞恥心のあまり、最後の方はほとんど聞き取れないほどの小声だった。
それでも郭嘉は満足したらしい。再び唇が、恭しく寄せられた。



*



湯船から誘導され、洗い場に敷いたマットの上に腰を下ろす。
郭嘉が何本かあるローションボトルを適当に選んで開け、風呂桶に半分ほど入れておいたお湯と混ぜる。
何の香りをイメージして作られたのかよくわからない、とにかく甘ったるいチープな香りが鼻腔をくすぐった。


「そろそろ、いいかな。…塗るよ」
「んっ……ぁ……」
「あぁ、まだ冷たかったかな」
「いや、冷たくはないが…」


手のひらいっぱいに、薄ピンク色をしたローションを取り、ぺたぺたと俺の全身に塗りたくりながら撫でていく。
ローションで全身が滑らかになったことで、撫でるだけの愛撫でもより感じやすくなっているみたいだ。熱っぽい声が漏れてしまう。
てかてかと光る互いの肌が、とても卑猥だ。


「ひッ!ぁ、アンタな!」
「ほら、貴方からも、私に塗って」
「……っ!このッ…!」
「っう…!あぁ…いいよ…もっとして」
「く、ん…、ん…はぁ……ッ」


わざと胸の頂を指先で転がし、悪戯される。
きっと睨むと、ローションで手を濡らし、唐突に郭嘉自身に触れてやる。
郭嘉は小さくうめき声をあげ、ほぅと甘い吐息を零した。
してやったり。
仕返しが成功しにんまりと笑うと、下肢にローションをさらに垂らされ、砲身を握られた。
そのまま無言で互いの茎に触れ、快楽だけを追っていく。


「ッひ?!ぁ、馬鹿、舐めるなって…!」
「賈クのここ、甘いね」
「ふぅゥ…!んっ、や、んァ…!」


じゅるじゅると下品な音を立てて、胸を吸われた。
乳輪ごと吸い上げられ、かと思えばべろりと舐められ、ぬめった感覚が襲う。刺激されるたび腰が浮き上がって、まるでもっとと強請っているみたいだ。恥ずかしさに頬が熱くなる。


「っんん…嫌、ぁ…ひっ…んっ、んぁ!」


胸と陰茎と。二箇所からの刺激に、抑えてようとしても嬌声が止まらない。
それでも、されるがままは癪に障る。
震える手を一生懸命に動かし、郭嘉の陰茎に奉仕する。郭嘉もちゃんと感じているらしい。猛った剛直の先端から、先走りが溢れていた。
互いの下半身は、先走りかローションかもうわからない程ぐちゃぐちゃになっていた。


「もういいよ」
「っあ……?」


不意に郭嘉の手が添えられ、制止をかけられる。
意図がわからず怪訝な顔をしていると、郭嘉はマットに寝転びその上に乗せられた。
これでは、郭嘉から全てが見えてしまう体勢ではないか。
肌を舐めるようないやらしい視線に耐え切れず、視線から逃げるように顔をそむけた。


「ねぇ。賈クのを、私のに擦りつけてみせて」
「な……ッ!そ、んなの、ッアあ!」


なんてことを要求してくるんだコイツは。
とんでもない言葉に、絶句する。
非難しようにも亀頭に爪を立てられ、黙らされる。


「ここをこんなにしておいて…欲しくてたまらない癖に」
「だ、れが…ッ!」
「それが嫌なら、ココにこのまま突っ込んであげようか」


熱くなった郭嘉自身を、ぐりぐりと蕾に押し当てながら脅迫される。
まだ解していない後孔に今挿れれば、きっと激痛が襲うだろう。
流石にそれは避けたい。そんなことをされたら死んでしまう。だからこれは仕方のないことだ。
先走りをだらだらと垂らす自身を、郭嘉のものにおずおずと擦りる。


「んっ、ふぅ……ァ、んんッ…!」


ぬるぬるとした感覚が気持ちいい。
彼の一物と、ローションまみれの下生えや砲身と擦れるたび、いつもとは違う快楽がぞくぞくとからだ中をかけ巡る。
擦りつけていると時折、茎だけでなく蕾にまで張り出した切っ先が届いた。たったそれだけでもそこは疼き、ひくひくと蠢くのが自分でわかった。


「こんなに濡らして、入り口に擦りつけて…まるで女の子みたいだね」
「……ッ!郭嘉、殿がやれって」
「確かにお願いしたのは私だけど、結局は賈クの意思でやっていることでしょう?」
「あ、んぁ…っ!」
「自分が今どれほどいやらしいことをしてるか、わかっているのかな。賈クが私のに淫らに擦りつけているところも、蕩けた顔をしているのも全部見える」
「嫌だ…!言うな……!」


なんてひどい言い草だ。こうさせるよう、脅してきたくせに。
自ら腰を振り、辱められ、それでも俺は昂ぶっていた。
もはや自分の意志では、擦りつける動きを止められなかった。だんだんと動きが大胆になっていく。


「んッ、んァ!はぁ、ん、くぅ…!」


その様子を、郭嘉はただ眺め続けていた。
口元がいびつに歪み弧を描いているのが、涙で歪む視界でぼんやりと見えた。
腰を動かすたび、ぐちゅぐちゅと水音が響く。浴室の壁がその音を大きく響かせて、それが余計に俺達を煽る。


「っあア!や、ひ、ッあ!郭嘉殿、や、嫌…ッ…あ!」
「また嘘ばっかり。ここも好きなんでしょう?」


おもむろに乳首に手を伸ばされ、ぎゅっと摘まれた。
触れた瞬間、自分自身からどぷ、と先走りが漏れたのがわかる。
その敏感な反応が楽しむように、両方の胸を指で遊ばれ、普段以上にしつこく嬲られる。


「そろそろ我慢できない?」
「はぁっ…ん、あ…!」
「じゃあ解さなくてはいけないね。私のをすぐ挿れてあげられるように、ね」


答えを待たず、からだを持ち上げられ、いわゆるシックスナインの体勢にさせられる。
ぐっしょりと濡れた蕾に、指をそっと添えられる。ローションのおかげか、そこはすんなりと異物の侵入を許した。
挿れられる瞬間が、やたらと長く感じた。


「ぁあ!ひ、っん…!う…!アっ!」


ぬめる指が、壁をくすぐる。
ぐにぐにと浅瀬を押し、ある程度ほぐれたら指がより奥へと潜り込む。
異物感に息を飲み耐えていると、びくっと一瞬目の前が真っ白になった。
思わず腰を引いて逃れようとするが、咎めるよう中の指がしこりを突いて、俺の脳髄を溶かしていく。
ビクビクと大げさなぐらいに、腰が震えてしまう。


「く、ァあ!んっ、ぅ、アぁ!」
「ほら、私のも舐めて」
「んぅ、んっん……!」


ねだられるまま、言われた通り郭嘉の雄を口に含む。
適当に開けたローションは、桃をイメージしたものだったらしい。本来青臭く苦いはずのそこは、ローションのおかげでひたすらに桃の甘いフレーバーがする。
郭嘉が与える刺激のせいで、舌がもつれてうまく動かせない。それでも必死に、砲身に舌を絡ませ、裏側を舐める。
中をまさぐる指は、いつのまにか三本に増えていた。無遠慮に抜き差しされ、しこりを戯れに刺激される。


「ふふ、もう限界のようだね。…一度イかせてあげようか」
「ぅあア!や、やめ…!離せッ、ひッ、出るから…!」
「ほら、いってひひよ」
「ァ、も、クる、あっ、ぁあアア…―――!!」


開放を訴え、震える茎をぱくりと郭嘉が咥えた。尿口をじゅるじゅると吸い、とどめとばかりに前立腺をぐりっと押しつぶされた。
イく。
そう告げる間もなく、脳内が真っ白になる。
気づいたときには、郭嘉の口内にびゅくびゅくと白濁を吐き出してしまっていた。
口いっぱいに出された精を、郭嘉は音を立てて飲み干した。


「ふふ、ごちそうさま。ずいぶんと濃かったね」
「はぁっ…アン、タ…飲んだのか…!」


信じられない。あんなものを飲むだなんて、馬鹿じゃないのか。
非難めいた表情で訴えても、彼はどこ吹く風といった様子だ。
射精の余韻で、まだぐったりとしている肢体を壁に寄りかからせ、無理やり立たせられる。
その後ろから覆い被さり、秘所にいきり立った陰茎を宛がわれる。


「挿れるよ」
「ッああア!ぐ…ッ、ん、ぁ…!」
「っう…!はぁっ……!」


マーキングのように数度蕾に擦りつけ、力をいれて一息に穿たれる。
あつい。
雄が腸壁を押し広げる感覚に、息を詰めて耐える。この瞬間だけはどうしても慣れない。
だと言うのに、達したばかりの自身は、また勃ちあがりだしていた。


「ぁ…あ…ッ!くッ、ん…!」
「ああ、勝手に座ってはダメだよ。しっかり立っていて」
「ぁア!待っ…!く、ぁア!んっ、止め、んんッ、あっ!」
「ここでおあずけだなんて、無理な相談だね…ッ」


ローションを中に馴染ませるように、緩くかきまわす。
そうして数度突くと、滑るからだをがっちり押さえつけ、性急に律動が始まった。
遠慮もなく、本能のまま貪りあう。まるで獣の交合だ。


「ぁ、あ!ぅ、かくか、どのッ!ぐぅッ、はげし…ッ!」
「声っ、聞かせて…!ここには貴方と私しかいないから…っ!」
「ひぃッ、んぁア!あ、やッ、ァあ!やァ、んぅ、ァあっ!」


みっともなくあがる声を抑えようと、唇を噛む。それを見咎めた郭嘉がいっそう激しく突く。
悲鳴じみた嬌声を上げ逃げようとする腰を捕らえられ、しこりをごりごりと潰し、最奥まで剛直を埋めこまれた。


「あぁ…っ、いいよ…!賈ク、かわいい…ッ!」


いつもより大きい気がする雄に、秘所をかき回されるとくらくらするほど気持ちいい。
夢中になって、律動に合わせ腰を振ってしまう。
なんてはしたないと、他人ごとのように思った。


「ぅ、アぁ…!ひッ…!」
「あぁ、つらかったかな?」
「も、無理だ…って!や、ぁあア!」
「でも、まだまだだよ。ほら、頑張って…!」


過ぎた快楽に耐えきれず、床にへたりこんでしまう。ふとももはガクガクと震え、そこに結合部から粘液が垂れてくる感触に身震いする。
腰だけ高くあげた体勢にさせられると、その上に郭嘉が覆いかぶさり容赦なく再び突いた。
体勢のせいで、より深くまで切っ先があたる。深く犯され、瞼の裏に火花が飛び散る。


「ぁアっ、も…ん、や!ぁアあ、ぅ…イッ、ちゃ…!」
「イっていいよ…!」
「ア、んぁ、も、イッ―――……!」


限界を訴えわななくからだを勢いよく突き、前立腺を擦りながら最奥まで貫かれる。
こわれる。
悲鳴のような嬌声を放つと、俺はまた遂情した。
射精の拍子でいっそうキツく締めつけてしまい、中の雄をまざまざと感じてしまう。
絡みつく腸壁を振り切り、自らの絶頂を求め郭嘉が細かくピストンをする。
絶頂を極めたばかりのからだには、酷な刺激だ。
もう無理だ。たのむから止めてくれ。
そう訴えるが奴はまったく聞き入れない。
必死に藻掻くからだを食い漁ると、郭嘉も中で吐精した。



*



「やりすぎだ、馬鹿…!」


目を覚ますと、バスタブの中にいた。
あれから郭嘉は一度で放してくれず、体勢を対面座位に変えられ何度も貪られた。
おぼろげな思考の中、腹の中で射精を感じて、そこから意識はふつりと途切れていた。
俺が気絶している間に郭嘉は、粘液まみれのからだをちゃんと清めてくれたらしい。ついでに、ぐちゃぐちゃだった洗い場の床もマットも後始末されている。
散々に啼かされたからだは疲れ果てて、もう逃げる気力もなかった。でも背後から抱きかかえられているのは、どうも気恥ずかしかった。
こつん、と白い胸を軽くこずいて、全身を郭嘉に預けた。


「そうかな」
「あんたに酷使されたおかげで、俺のからだは違和感だらけなんだが」


主に下半身が。
文句を垂れつつも、程よい湯加減の心地よさに、うつらうつらとしてしまう。
もう何もかもどうでもよくなっていた。のに。


「じゃあ、次は何をして遊ぼうか」


不穏な言葉に、微睡みかけていた意識がハッと覚醒する。
振り返って見た佳人の表情は、至極楽しそうな笑みを浮かべていた。


「そういえば部屋に玩具があったね。少し休んだら、それを使って遊ぼうか。それとも鏡に映しながらシてみようか」
「アンタ…まだヤる気なのか…?」
「チェックアウトまで時間はまだまだあるのだし、ここで終わらせるなんてつまらないでしょう?」


呆然とする俺をよそに、郭嘉は次々とプランを思い浮かべていく。
こいつはけだものだ。いや、年中発情期なぶん獣よりひどい。


「俺はもう年なんで、そろそろ手加減てものを覚えてもらいたいね」
「そう言って、激しく愛しされるのも好きでしょう?」
「この色情魔。変態」
「『色情魔』で『変態』な、私のそういうところも好きな癖に」
「……悪趣味」
「知ってるよ」


ああもう降参だ。
恋人と視線を絡めて、キスをする。
そんなとこも含めて、彼に心底惚れてしまったのだから、恋とは本当に恐ろしいものだ。

―――このままコイツと二人で、永久に快楽を享受していられたら。それも悪くないかもしれない。
そう思いながら、そっと白いからだを抱きしめた。




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