※R18






「あのだな、郭嘉殿。そうやって甘ったるく囁くのはやめてくれんかね」


真夜中に二人っきり、衣服も緩め寝台の上でもつれこんで。恋情を囁いて。
今まさに押し倒そうとした時、賈クは郭嘉の肩を押し戻した。そして嫌そうな顔をして冒頭の台詞である。


「それは、どういうことかな?」
「だから『愛してる』だの『好きだ』だの『かわいい』だの、そういう歯の浮くような戯言はやめろと言ってるんだ」


意味を測りかねてきょとん、とした顔で尋ねかえした。すると賈クは頭をがしがしと掻きながら、そうのたまった。
このあふれんばかりの気持ちを伝えることのなにが悪いのか。そもそも真剣に言っているつもりの愛情を『戯言』と捉えられ、郭嘉は首をかしげた。


「おや。私は戯言じゃなく、本気で言ってるつもりなんだけどね」
「はいはいそうかい。とにかく止めてくれるとありがたいんだが」
「悪いけど、それはできない相談だね」


郭嘉の言葉をあくまでも本気と捉えようとしない賈クを、再び押し倒した。
今度こそ賈クを白い敷布に沈め、覆いかぶさって熱っぽく賈クを見つめる。


「私は本気であなたを愛してるんだ。だから、私の気持ちを受け取ってほしいな」
「ん、ぅん…!?」


まだ何か言いたげな口を唇で塞いだ。
そのまま緩みかけた賈クの服を脱がしてしまうと、胸の飾りに触れる。乳輪をくるりとなぞり、頂にそっと触れると、すでにそこは少し尖り始めていた。
片手で胸元を弄りながら、耳元に口づけをおとし、少し低く掠れた声と息で吹きこむ。


「ふふ。賈クのココ、期待してもう固くなってる。…かわいい」
「んっ…!だから、やめろって言ってんでしょうが…!」
「だめ、やめない」
「ひぃッ…!や、やめ…っ!」


いまだに抵抗しようとする賈クの耳殻をべろりと舐め、耳に舌を入れる。じゅぷじゅぷと水音を響かせてやると、たまらず身をよじらせた。そのはずみで賈クのまっすぐな黒髪が散らばり、とても美しいと思った。
敏感な反応をみせる耳に舌を抜き差ししながら、胸をまさぐる。
胸元全体を撫でまわし、頂を軽くつねる。かと思えばいたわるように撫でられる。
そうして愛撫を繰り返してやれば、胸の飾りはぷっくりと真っ赤に充血し、いやらしくこちらを誘惑する。
愛撫するたびに賈クの腰はわななき、目をつぶっていじらしく快楽に耐えようとしていた。その様子がまた、どうしようもなく魅力的に見えた。


「ん、ぅ…!」
「あぁ、傷が残るから噛んだらいけないよ。賈クのやらしい声、全部私に聞かせてほしいな」
「んんッ…く、ぁッ…!」
「あいかわらず意地っ張りだね。まぁ、そこもあなたの可愛らしいところだけど」


声を我慢しようと噛みしめる賈クの唇をなぞり、止めるよう促す。しかし固く閉じられたそこは、頑なにそれを拒んだ。
それを見た郭嘉は、胸の飾りをぐりっ、と強く刺激した。
すると賈クの唇はわずかに開き、その隙に指を突っ込んだ。指で賈クの口内をまさぐりながら、口づけを次々におとしていく。
首筋から鎖骨へ。舌でなぞるように舐め、強く吸いついて痕を残す。うっすら色づいた首筋は、ともすれば他者からも見えてしまいな場所も、赤い痕が散らされ艶やかに映えた。


「賈ク、好きだよ。あなたがどうしようもなく慕わしい」
「っあ、や…やめろ、やらっ…!」
「拒否しないで。私はただあなたを愛したいだけなんだ」


郭嘉が慕情を口にするたび、いやいやと首をふって賈クは嫌がる。あやすように口づけを顔へおとしながら、細くしなやかに引き締まった腹を撫でる。
思う存分賈クの肌を堪能した手は、そのまま下へと伸び、太ももへたどり着いた。撫でるたびにびくびくと震える、痩せた両足を一気に割り開くと、郭嘉は抵抗される前に賈クの股座へからだを割りこませた。


「もうドロドロだ。嫌がってみせても、ちゃんと私を感じてくれてるんだね」
「ぁあ!や、はぁッ…かくか、どの…!」
「とても気持ちよさそうな顔してる。もっと私に、その顔を見せて」


黒い茂みに手を這わせ、砲身を握る。すでに熱を帯びたそこは、郭嘉の手の温度に反応してドクドクと脈打つのがわかった。
上下に手を動かし、鈴口を指で割るよう弄び、裏筋を重点的に擦る。それに合わせて頭上から切羽つまった声が聞こえ、茎からは愛液が溢れ出た。
快感から逃げようとする腰を捕らえ、先走りを指にとる。十分に濡らした指を後孔へ押し当て、湿り気を塗りこめるように触れた。


「指、挿れるよ」
「っあァ!ぐっ…はぁ、あァ!」
「ふふ、腰揺れてる。気持ちいいんだね」
「ん、んぅ…ッ!」


深く口づけながら指を侵入させる。
薄い唇を舐め、舌と舌とを絡ませあう。その一方で挿れた指は壁をなぞり、しこりに触れる。触れた瞬間びくっ、と浮いた腰を抱きよせてそこを集中的に責めると、耐えきれず漏れる嬌声が劣情を煽った。


「っあァ、ん!や、やめッ、あァっ…!」
「本当にやらしいね」
「も、やめろッ…ァあ!」
「賈ク、愛してるよ」


吐息まじりの声で聴覚をなぶりながら、追いうちをかけるように、手の動きを早める。
割り開いた両足ががくがくと震え、握った自身は解放を求めて脈打つ。
もう少しでイく。
しかし遂情を許さず、唐突に指の動きをぴたりと止めた。突然のことに、限界まで昂ぶった熱を持て余した賈クは不審そうな顔でこちらを見つめた。


「ッあ…?」
「そういえば、賈ク。どうして愛を囁くな、なんて言ったのかな?」
「っん、それを今、訊くかね…!」
「ほら、どうして?言わないとイかせてあげないよ?」
「な、あァアッ!ひ、あアッ!アン、タ、ずるい…!」


宣言通り根元を戒めると同時に、答えを促すように後孔をぐちゃぐちゃとかきまぜる。
容赦なく擦りあげると、出口を求めてからだ中を駆け巡る熱に、賈クは悲鳴混じりの嬌声を上げた。


「ぅあッ!も、やら…!あっ、ひッ!あァッ!」
「めちゃくちゃに乱れるあなたはとても素敵だけど、辛いだろう?私はあなたを苦しめたいんじゃなくて、愛でたいだけなんだ」
「そんな、ァ、言葉はいらんから…!はやく挿れろッ…!っは、あァッ…!」
「そうやってねだる賈クも可愛いけど、今日は絆されてあげない」


至極穏やかなほほえみをむけて、蕩かすように優しく言えばことさら賈クは嫌がった。
抵抗を無視して愛撫を続ける。激しいそれとは裏腹に、からだ中に口づけをおとし、湧き出る激情をこれでもかというほど表現した。
ねだってみても無駄だと悟った賈クは、ようやくまわらない口を開きだした。


「ぁア、ただの、処理に…っひ!そんな戯言、いらんだろうが…!」
「処理、か」
「郭嘉ど…んあァッ――!」


突然黙った郭嘉を、賈クは怪訝そうに見た。
無言のまま後孔から指を引き抜き、根元を戒めていた指を離して賈クの腰を掴んだ。そして緩めた衣服から自身の欲望を取り出すと、後孔に突き入れた。


「私は真摯に言ってるつもりだったんだけど。賈クにそう思われてたとは、残念だな」
「か、くか、どの…ッ!あ、ぐぅッ…!」


緩く揺さぶりながら、唇を重ねる。舌同士を触れさせてから引っ込めると、名残惜しそうに舌をこちらの口内に伸ばしてくることを、郭嘉は知っていた。


「ぅ、あッ、はぁッ…!」
「ねぇ、賈ク。私はね、存外しつこいんだ」
「ん、そんなの、ァあ、知ってる…!」
「だからね、あなたに愛が伝わるまで私は諦めないよ。あなたが受け入れてくれるまで、私はこの気持ちを伝えよう」
「はっ、馬鹿かアンタ…あぁア!や、待ッ!ひッ」


憎まれ口を遮るように、後孔を遠慮なく犯しだす。
賈クのもっとも感じるところを責めると、後孔がきゅうきゅうと欲望を締めつけ、眩暈がするほど気持ちいい。
そのまま続けてそこを責め立てると、背中に腕をまわして、両足を腰に絡めてしがみついてくる。その無意識の動作に、どうしようもなく胸が高鳴った。


「気持ちいい?私に、全部、教えてほしいな」
「ッ、あァ!このッ…!くッ、悪趣味が…!ひ、ぁあァ!」
「それ、褒め言葉として受け取っておくよ」


まだ悪態をつこうとする賈クの、赤く熟れた胸の飾りに手を伸ばす。汗でしっとりとしたそこを爪で押し、郭嘉の指を押し戻そうとする感触を楽しむ。もう悪態を言うのもキツイらしい賈クの口からは、ただ荒い息と喘ぎ声だけが漏れた。


「ぅあ!ぁア、やら、あァッ!」
「好きだよ、賈ク。あなたが慕わしくてたまらない」
「ッく、そん、な、ッア、安いことば、あァ!聞きたくない…!」
「だめ、ちゃんと聞いて。私を拒絶しないで」


腰を抱えなおすと、送入の速度を一気に速めた。絶頂へと追い上げながら、快楽から零した賈クの涙を舌で舐めとり、ただ壊れたように恋心を口にした。
こうすることでしか、愛執を伝える術を知らないのだから。


「っく…賈ク、も、イくッ…!」
「あ、あッ…!まッ、あァア!イ、イッちゃッ――!!」


律動を早め、前立腺を擦りながら、むさぼるように最奥まで侵入する。
一際強く押し潰すと同時に、互いの腹に挟まれた賈クの欲望がぶるぶると震えて爆ぜ、あふれた白濁が腹を汚した。
達した衝撃で後孔が郭嘉自身をきつく締めつけてきた。やや遅れて欲望を中にぶちまけ、頭の中が真っ白になるほどの快感がからだ中を支配した。








あれから中に出してしまった白濁を処理し、賈クのからだを拭いて清めた。
一通り後始末を終えると、いつの間にか賈クは寝息をたてていた。


「賈ク?…寝ちゃったのかな?」


返事のない賈クの隣に寝転び、慈しむように髪を指に絡める。隣で眠る思い人は、普段では決して見れないであろう、安らかな顔で深い眠りについていた。

今まで美しい女性がいれば、思うがまま『愛している』などと囁いてきた。そうすれば大抵の女性は喜び、郭嘉を受け入れた。
しかし、今目の前で眠るこの人は違った。
郭嘉が慕情を言えば言うほど彼は嫌がる。冷たくあしらってみせる女性なら他にもいた。けれど彼はあしらうどころか完全に拒絶し、一切受けつけようとしなかった。


「…本当にあなたはひどいひとだね」


愛情を完全に拒絶する。そのくせ、こちらが甘えてみせると、なんだかんだで拒否はしない。まぐわうこともするし、行為中こちらを求め甘えるようなしぐさを覗かせる。おそらく無意識にやってることだろうから、性質が悪い。

それが余計に郭嘉を夢中にさせる。
郭嘉の好意をを信じられず必死に突き放して、恐れ、逃げようとするから、追いかけたくなる。
完全に拒絶してくれたほうがまだ楽だったろうに、賈クの中途半端な情愛は、ことさら郭嘉を焦がれさせた。
すれ違っているくせに、互いに執着し合っている。不毛だとわかっていても抜け出せないこの恋は、まるで麻薬だ。


「あとどれぐらい思いを伝えれば、あなたと通じ合えるのかな」


ぽつりと呟いた言葉は、誰にも聞かれることはなかった。








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