「徐庶殿ー!今夜、一杯つきあってくれない?」


たまたま見つけた、後ろ姿。馬岱はそれを見るなり、大声で呼びかけた。徐庶がふりむきもしないうちに、かけよって肩を抱いた。
突然のことにびっくりした徐庶は、身をすくませた。しかし相手が馬岱だとわかると、警戒をといて顔をむけた。


「…えぇと、俺なんかとでいいのかな。君には馬超殿とかがいるだろう」
「確かに若もいるけど…俺は今日、徐庶殿と飲みたいんだよぉ!」


いきなりのお誘いに、徐庶は困惑した。
そんな反応を気にせず、馬岱は人好きのする笑顔を満面に浮かべる。
こうなると、こちらが承諾しなければ馬岱は引かない。徐庶はそれを知っていた。
徐庶本人も、気兼ねなく誘ってくれる馬岱を好ましいと思っていた。


「わかったよ。つきあわせて、もらおうかな」
「やったー!んじゃ、今夜俺の部屋にきてね!」


そう言うなり、馬岱は去っていった。
なんだか、いいようにふりまわされている気がした。けれど、不思議と嫌ではなかった。













「どうせ俺は、孔明や士元みたいにはなれないんだ…!この間だって…」
「あーはいはい。とりあえず涙ふいてよぉ」


いったん酒が入ると、徐庶はたがが外れたように泣く。しょせん、泣き上戸といわれる人間だ。
普段抑えつけているぶんを一気に発散するように、ぐずぐず泣いてみたり愚痴をこぼしてみたり。ほんの少しの酒でも、このありさまだった。

今回も飲み始めるなり、徐庶からは涙と愚痴があふれ出た。めそめそ泣く徐庶を、馬岱がなだめる。そんな馬岱に、ときおり徐庶は甘えたように身をよせたりする。

普通なら敬遠されそうな酒癖だが、馬岱は徐庶と飲むのが好きだった。いつもなら見せようとしない、本音と甘えた姿を見れるから。


「馬岱殿。いっつも気になってたんだけど…どうして俺を、酒盛りに誘ってくれるんだい?こんなじめじめしたヤツと飲んでも、楽しくないだろう」
「え?俺今楽しいよぉ。照れ屋な徐庶殿が、こうして俺に甘えてくれるから」
「な、何言ってるんだ…!!」


さらっ、と告げられた言葉に、徐庶は面白いほど動揺した。その拍子に、徐庶の腕が瓶にあたった。
危ない。そう思い瓶を止めようとしたが、一足遅かった。


「あっ…!」
「うわっぷ!徐庶殿、大丈夫?」
「あ、あぁ。すまない」


酒瓶が倒ればしゃあ、と景気よく中身がぶちまけられた。馬岱は慌てて瓶をおこして、濡れた徐庶の服を拭いた。中身がほとんど入っていた瓶だったため、腹から足のつけ根あたりがぐっしょり濡れていた。
丁寧にその辺を拭きながら、ふと馬岱は見てしまった。

酒のせいで、赤く色づいた滑らかな肌。泣いたせいで、いつも以上に潤んだ瞳。きわめつけに、この間自分がつけた首の痕。いつもは厚着のせいで見えないそれが、不意に目に飛びこむ。
甘い誘惑が、馬岱の視線を完全に奪っていた。
ドクン。馬岱は自分の本能が揺さぶられるのを感じた。


「あ、あの…馬岱?」
「…ねぇ、シたくなっちゃった」
「えっ」


急に黙りこくった馬岱を不審に思い、声をかけた。すると真面目な声色で、唐突にそんな言葉が帰ってきた。
今まで拭いていた、ふとももあたりをがっしり掴まれる。そしてまっすぐなまなざしで、馬岱が見つめてくる。


「ダメ?」
「…どうしても、しなきゃダメかい」
「ムリ。我慢できない」


酔いのせいでも冗談でもない。
馬岱の真摯な表情が、それをはっきりと徐庶に伝えた。


「…せめて、暗くしてくれ」


了解。と小さく返して、馬岱は部屋のあかりを消した。照れてうつむく徐庶の背中に、両腕をまわして口づける。
呼吸を奪いあうように唇を重ね、舌をからめあう。ぴちゃぴちゃ、といやらしい音をたてて、歯列をなぞるとびく、と徐庶の腰が跳ねる。
ようやく口を離すと、名残惜しそうに銀糸がつぅ、と二人の間に伝わる。両腕をまわしたまま、なだれこむように徐庶を寝台に押し倒した。

服を脱がせながら、首すじから鎖骨、胸元へと。ちゅ、ちゅと音をたて噛みついて、赤い痕を刻んでいく。ともすれば、他人に気づかれそうな、きわどい所にもつけた。
微妙な場所の痕に、たまらず徐庶は抗議の声をあげた。


「ちょっと、そこはやめてくれないか」
「なんでぇ?」
「なんでって…その、人に見られるだろう」
「徐庶殿は、俺とこういうコトするの嫌い?」
「それは…えぇと、そ、そんな、こと…」
「じゃあいいじゃない。見せちゃえば」
「っあ!」


口ごもる徐庶をよそに、さらに痕を首筋につける。直後、いたわるように舐めあげると、もどかしい快感にからだが震えた。
あっという間に徐庶のからだは、赤い痕と噛み傷だらけになった。
小さな痛みと次々とつけられる跡に、耐えきれず徐庶は身をひねった。


「君って、っん!本当に、跡つけるの好きだよね」
「徐庶殿だって、よく俺に跡つけてるじゃない」


嬉しいけど、ちょっと痛いんだよねぇ。
馬岱の言葉に、跡―――情事中馬岱の背中につけてしまう、ひっかき傷―――の正体に気づきかあっ、と赤面した。同時に己の痴態も思い出してしまい、徐庶は羞恥で涙目になってしまう。


「あっ、あれは…!」
「それに徐庶殿だってさ、本当は跡つけられるの好きでしょ?」


いつもの明るい声色とは違う、情欲をにじませた声で低く耳元に囁かれる。息をふぅ…っ、と吹きかけられ、耳の中に舌を入れられてくちゃくちゃ、と水音をたてられた。
思わずその声と刺激にぞくぞく、と快感が徐庶の背中をかけぬける。

―――あぁ。好きなように跡をつけられて、恋人の普段と違う声に、ここまで感じてしまうなんて。こんなみだらな自分が浅ましい。
あまりの恥ずかしさで、徐庶は今にも泣いてしまいそうだった。


「違う、好きなんかじゃない…!」
「ふーん。じゃあどうしてココ、もうこんなにしてるの」
「ひ!やぁ、っん!」


照れ隠しの反論を止めるように、馬岱の指が胸の突起をつまんだ。押しつぶしたり、優しくかすめたり、舌で転がしてみたり。たんねんに両胸をかわいがってやる。
そうしてやると徐庶の目は閉じられ、涙がほおを伝った。快楽につい開いた口は、すぐさま喘ぎ声をおさえようと、唇を強く噛みしめだした。


「ん、ぅ!ん、ぁ、く…!」
「徐庶殿、声聞かせて。そんなに噛んだら傷になっちゃうよぉ」
「ぅ、ん!くっ、んん…!」
「まったく、強情なんだから」
「っあ!そこは、ひぁ、だめ、や、だっ!」


首を横にふって嫌がり、声を出そうとしない徐庶。こうなると意地でも、声を出させたくなる。
すっかり熱くなった徐庶自身を服の上からなでると、耐えきれず声がもれた。その隙を狙って、やわやわと揉みしだくと、泣いているような嬌声が聞こえた。
たまらず寝台の上へと逃れようとする徐庶を許さず、片腕で腰を押さえつける。そのまま一気に下着ごと脱がすと、ぐちょぐちょになってたかぶりきった徐庶自身が勢いよく顔をだした。


「ゃだ…!みないで、んぁ、みないでくれ、ぁあ!やだ、やぁあ!」
「すっごい気持ちよさそう…かわいい」


馬岱は片手で徐庶自身を愛撫しながら、器用に自らの衣をゆるめた。自身を見せつけるように脱ぐと、徐庶は恥ずかしさに目線を伏せた。


「あ…!」
「ねぇ徐庶殿。俺の舐めてくれない?」
「え…?!」


何を。なんて問いかえす無粋をしなくても、言いたいことはわかった。徐庶の痴態にあてられた馬岱自身は、すっかり熱をはらんでいた。辛い状況なのは、同じ男としてとてもよく理解できる。
しかし恥ずかしさに、徐庶は口ごもる。焦れた馬岱は徐庶のあごをつかみ、己の方へむかせた。
間近に見た馬岱のまなざしは、まるで獲物を捕食しようとする獣のようだった。


「い、嫌だ…!」
「えー?どうしてもダメ?」


口調とは裏腹に、馬岱の目には情欲の炎がはっきりと映っていた。その真剣で雄らしいまなざしは、夜に、徐庶へだけむけられるものだった。

―――ほだされる。
そう頭ではわかっていても、どうしてもこの顔に弱いのだ。


徐庶は目を伏せ、少しの間ためらった。そして意を決したようにわかった、と小さく返答した。
馬岱は返答を聞くなり、体勢を変えた。互いの顔と股座が、向かいあう格好をとる。目の前にたかぶりきった馬岱自身がつきつけられ、徐庶はつい見つめてしまう。


―――こんな大きなものが、いつも自分の中に入れられている。
改めて見るとそれが信じられなくて、思考へ逃げてしまう。
先を促すように小さく呼ばれた名に、その声で徐庶は我に返った。なるべく目の前の淫らな現実を見ないように、目を硬くつぶる。顔を近づけてちろちろ、と馬岱自身を舐めだした。


「ん…んぅ…っく」
「っく…!そう、イイよ」


決して上手ではない。けれど懸命な徐庶のしぐさと、時々もれる声に。馬岱はどうしようもなく興奮した。思わずびく、と馬岱の腰がわななく。
馬岱の反応に気をよくした徐庶は、少し動きを大胆にした。
砲身をべろり、と舐め唇で亀頭を食む。口内に含み舌で遊び、くびれをなぞったり尿道を軽くつつく。
自分がいつもされるように奉仕すると、口内の熱源がさらに熱くなった。
熱を感じるたび、徐庶の背中をぞくぞく、とした感覚が走りぬける。徐庶もまた、馬岱の反応とむせかえる雄のにおいに興奮していた。


「っひ?!な、なにして…?!」
「徐庶殿も辛そうだからさ。俺もシてあげるよ」
「や、っん!しゃべらないでくれっ…!」


いきなり感じた鋭い快楽に、思わず徐庶は目を見開いた。見ると馬岱が同じように、自身を口に含んでいた。
舌が自身にふれるたび、なす術なくからだが震える。くわえたまましゃべられるとかかる、熱い吐息にもどうしようもなく感じた。舌と息が、徐庶の弱いところを的確に攻めたてた。
直接与えられる強い刺激にたまらず、徐庶は口淫を止めてしまう。もはや与えられる快楽に溺れ、眼前の熱をほおにこすりつけるしかできなかった。


「っや、あ!いやだ、やめて、くれ!、やだぁ!」
「ほら、ちゃんと俺のもシてよ」
「んぅ…く、んん!」


馬岱は自分の唾液と、徐庶の先走りを指にからめた。そしてぬりこむように、後孔のまわりをそっとなぞりだした。
覚えのある快楽に後孔がひくひく、と収縮しだすと、濡れた指を一本中にいれた。
ほぐすように浅瀬をぐにぐに、と押してやる。それにあわせて、徐庶のからだがはねる。ときおり中のしこりをぐっ、と潰したりなでてやった。すると大げさなほどからだを震わせて、中がきつく収縮した。
次第にほぐれていくと、指の数を増やした。
三本目の指が入った頃には、もはや徐庶は声をおさえるのも、口淫するのも忘れていた。ただただ強すぎる快楽に、泣きながら喘ぐしかできなかった。


「っひ、も…んぅ!あぁ…んっ、ダメだ、ぁあ!!」
「徐庶殿。どうして欲しい?」
「っや、あぁ!そんなの、っあ!わかってるだろう…!あぁ!」
「言ってよ。俺はちゃんと、徐庶殿の口から聞きたいんだよぉ」


イきたい。でも、恥ずかしい。
頭の中で、本能と理性とがせめぎあう。
そんな徐庶を堕とすように、しこりをつぶして耳元で低く囁く。


「ね、言って」


―――ああ、もうイきたくてしょうがない。馬岱の熱を感じて、ぐちゃぐちゃにしてほしい…!


「入れて、くれ…!」
「うん、好きなだけ、あげるよ…!」
「んんっ!ん、んぅ!!」


言葉の端は小さすぎて聞こえなかった。しかし徐庶の精一杯のおねだりに、馬岱は満足げに笑った。
徐庶におおいかぶさるような体勢に変えると、完全に勃ちあがった熱を入り口にあてる。

その蕩けた顔が。うるんだ目と赤らんだ顔と、馬岱の先走りやら自分の涎やらで濡れた口元が。馬岱の劣情をさらにあおった。

口づけながら、本能のまま貫いた。徐庶の中は溶けそうなほど熱く、馬岱にからみついて離さなかった。

―――この男を優しく扱って、べたべたに甘やかしてやりたい。そのくせ、征服しいじめて、思う存分泣かせたいと思う自分がいる。

矛盾した欲望に自嘲しながら、馬岱は腰を動かす。その衝撃を受け止めようと、徐庶が自分から腕をまわした。


「ぁあ!や、ぁあ、く、ああぁ!」
「きっつ…!徐庶殿、深呼吸して」
「はぁっ…はぁ…ぁあ!」


徐庶の呼吸にあわせて、しめつけがかすかにゆるむ。その隙に一気にいれると、ようやく馬岱自身がすべて収まった。
抜けおちそうなぐらい引いて、またいれる。その動きをくり返しながら、しこりを悪戯につぶしてやる。
そうするといっそう中がうごめき、馬岱をしめつけた。背中に感じる、爪を立てられる痛みすら、興奮剤となった。


「徐庶どの、かわいい。大好き、だよ…っ!」
「ばたい、あぁ!おれも、好き、はぁあ!んぁ!好きだ…!」


互いの名を呼びながら、軽く唇を触れあわせる。
いつもなら恥ずかしくて絶対に言えない好意も、快楽に溺れた今なら言える。
勢いに本音を隠しながら徐庶は、『好き』の二文字をうわ言のようにくり返した。


「あぁ、っも、イく、イくっ!!」
「うん…!好きなだけイっていいよ」
「ん、んぅ、んっ、んんーっ!!」


追いあげるように、馬岱は腰の動きを早める。片手で胸の飾りをいじり、もう片手で徐庶自身をこする。前立腺をごりごり、と音がしそうなほど押せば、もう耐えられなかった。
深く口づけあいながら、徐庶は遂情した。そのはずみで一際しめつけがきつくなると、馬岱は急いで中から自身をひき抜いた。直後、白濁があふれ出した。勢いよく出た白濁は、徐庶の腹や胸を汚した。


「っはぁ…!はぁ」
「徐庶殿、かわいかったよ。たくさん『好き』って言ってくれて、俺嬉しかったよぉ」
「あれは、その…!」
「大好きだよ、徐庶殿」


抱きしめられながら、優しく耳元で囁かれては抵抗できない。照れた顔を隠すように、馬岱の胸に顔をうずめながら小さく呟く。


「えぇと、俺も、好きだよ…」


―――まだまだ、寝かせてもらえそうにない。
口づけの嵐を落とされながら、徐庶は頭の中で小さくごちた。















岱徐練習。岱徐って難しい!



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